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【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
プロローグ

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3/98

儀式

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

麗子(れいこ)——!」


 寝室の扉が勢いよく開き、大柄な男が飛び込んできた。恋人の佐藤良彦だ。

 肩で息をしながら彼が声を震わせる。


「……麗子、だいじょうぶなのか?」

「ええ……。幸い、命に別状はないわ。でも、火傷のせいで……」


 麗子はそう言って、自分の顔に巻かれた包帯をゆっくりとほどいていった。

 やがてベッドの上から素顔をさらすと、彼の表情がとたんに凍りついた。


「どう? ひどい顔でしょ?」麗子は自嘲気味に笑う。「……先生が言うには、皮膚を移植しても元の顔には戻せないって。それに、失った髪も生えないだろうって」

「そ、そうなのか……」


 いつもは尊大な態度を崩さない男が、今は怯えた仔犬のようにオドオドしている。


「でも佐藤さん、約束してくれたわよね? どんなことがあっても、わたしを愛してくれるって」


 その言葉に、相手はこれまで以上にうろたえ始めた。


「あ、ああ……。もちろんだ……」


 上ずった声で答えたあと、彼は腕時計をちらりと見て芝居がかった口調で続けた。


「悪いが麗子、今日は大事な用事があって長居はできないんだ。また連絡するから、それまで元気でいてくれ」


 そう言い残すなり、彼は逃げるように部屋を飛び出していった。

 寝室に一人きりになると、麗子は深いため息を漏らした。


「はあ、またか……」


 落胆しながら自分の顔に手を伸ばすと、麗子は(ただ)れた皮膚をぐっとつかんで引っ張った。ケロイド状の皮膚が、ビリビリと音を立てて剥がれていく。

 麗子は人工皮膚を投げ捨てると、ヘッドボードに立て掛けてあったスマホを手に取った。


「また、パパの勝ちのようね」


 スマホ画面には、病院のベッドに横たわる父の姿が映っていた。

 年の離れた初老の父は、勝ち誇ったように口元を歪めた。


「どうだ麗子、これでお前もさすがに懲りただろ? パパがいつも言っているように、お前が醜くなれば、どんな男だってお前から離れていくんだ。中身だけを見て愛してくれる男なんてこの世にはいない。夢見がちなお前には酷な話かもしれんが、これが現実なんだよ。だからいつまでも絵空事ばかり言ってないで、パパが選んだ男とさっさと結婚するんだ」

「でもね、パパ。わたしはやっぱり、どんなことがあっても愛してくれる人じゃなきゃ絶対にダメなの」


 麗子がそう反論すると、父は呆れたように肩をすくめた。


「本当に懲りない娘だ。だが、今回もお前は賭けに負けたんだ。約束通り、次の日曜日にはパパが紹介した男と会ってもらうぞ」

「わかったわよ。でも、会うだけだからね。いくらパパの頼みでも、好きでもない人とは結婚できない」


 すると突然、父が激しく咳き込んだ。


「パパ、だいじょうぶ!?」

「……あ、ああ、だいじょうぶだ」


 スマホ画面に、執事の沢尻の姿が映り込む。彼が水の入ったコップを父に手渡す。

 沢尻は父がもっとも信頼する男だ。いつも背筋がぴっと伸びていて、身だしなみには寸分の隙もない。欠点を挙げるなら、やや表情に乏しいところだろうか。

 水を含んで少し落ち着きを取り戻したらしい父が、スマホの画面越しに切なげな視線を向けてきた。


「麗子、パパはもう長くない。早く結婚して、孫の顔を見せておくれ」

「パパ、そんな冗談やめて」

「冗談じゃないのは、お前もわかってるはずだ。パパに残された時間は、お前が思ってるよりもずっと短い」


 父の真剣な表情を見て、麗子は何も言えなくなってしまう。

 黙っていると、父が急におどけた口調で言った。


「お、そろそろ美人の看護婦が来るころだな」

「パパ、()()()じゃなくて、今は()()()さんでしょ」


 これは、二人の間で何度も繰り返されたやり取りだ。


「麗子、そんなことより、次の日曜日は絶対に他の予定を入れるんじゃないぞ」

「もう、わかったわよ」


 ビデオ通話を終えて室内が静かになると、とたんに寂しさが込み上げてきた。

 麗子は肩を落として大きなため息を漏らす。


「はあ……。わたしの運命の人は、いつになったら現れるのかしら」

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― 新着の感想 ―
人工皮膚を使って恋人の本心を試す麗子の冷徹なまでの執念に驚きましたが、愛を誓っていたはずの良彦が顔の傷を見た瞬間に逃げ出す様子はあまりに露骨で現実の厳しさを突きつけられた気分です笑 娘を諭す父親とのビ…
2026/01/25 05:03 退会済み
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