始まりの日
【悪魔も聖書を引用できる——】
衝撃のラスト!
あなたはきっと騙される!!
「問題なさそうね」
二人で記入した婚姻届のチェックを終え、隣に座る麗子が満足げに口を開いた。
ホテルのカフェラウンジはクラシック音楽が静かに流れ、大きなガラス窓の向こうでは、人工の滝が石壁を流れ落ちている。
拓海の正面には、ブラックスーツに身を包んだ男が座っていた。執事の沢尻だ。長らく新庄家に仕えていて、年齢は三十八だという。肌艶が良いせいか実年齢よりも若く見える。常に落ち着き払っていて紳士的な態度を崩さないが、感情の読めない表情のせいで、どこか近寄りがたい冷たさがあった。
麗子が婚姻届を沢尻に渡す。
「じゃあ、あとはお願いね」
「かしこまりました」
沢尻が恭しい態度で婚姻届を持って小さく頭を下げる。
「ぼくからも、よろしくお願いします」
沢尻は軽くうなずくと、一礼して席を離れていった。
二人きりになると、麗子は満面の笑みを浮かべた。
「ああ、今日からわたしたち、夫婦なのね」
「そうだね」
「今日から桜井麗子か……。これで本当の意味で、一つになれた気がする」
拓海は手を取り、彼女の目をまっすぐ見つめて言った。
「もう一度誓うよ。どんなことがあっても、ぼくは君を愛し続けるよ」
「嬉しい!」
麗子は声を上げると、人目もはばからずに抱きついてきた。
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