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【猟奇的サスペンススリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第二章 見え始めた悪意

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15/22

予想外の反応①

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

「よし。軽く休憩にしよう」

 演出家の一声で、稽古は一時中断された。

 読み合わせの稽古に参加していたのは、演出家を含めて六人。台詞の多いメインキャストが中心だ。本番まで三か月、稽古は順調に進んでいる。

 拓海は床に座り込み、台本に目を落とした。好きなことだから、稽古で疲れは感じない。正直、休憩はなくてもよかった。芝居のことになると、普段では考えられないほどの集中力を発揮することができるのだ。

 仲間たちがスマホを見たり談笑したりしている中、拓海は気になった台詞を小声で何度も読み返す。時間の許す限り台詞を読み込み、身体に染み込ませていく。舞台上で発する言葉が、演じるキャラクターの内奥から吐き出されたものだと観客が錯覚するくらいに。

 拓海が台詞を読み込んでいる横では、リョウがスマホで自撮りをしていた。おそらく、SNSに投稿するために撮ったのだろう。

 今の時代、SNSは重要な宣伝ツールだ。拓海も公演が決まるたびにSNSで告知をしていたが、普段からひんぱんに投稿する気にはなれなかった。なぜなら、SNS上に乱れ飛んでいる虚構が、滑稽に思えてしかたなかったからだ。

 たとえば、拓海にはフォロワーが千人ほどいるが、その中には、拓海が役者業に専念していると思い込んでいる者も少なくないだろう。ところが、実際にはアルバイトに費やしている時間のほうが圧倒的に多いのだ。投稿の内容だけでは、そんな現実は伝わらない。そんなことを考えると、SNSはどこか自分を偽る行為のように感じられ、ときに自分を卑下(ひげ)して情けなくなることもあった。


 隣からリョウが話しかけてきた。

「麗子さんと付き合って、どのくらいになります?」

 拓海は手にしていた台本を置いて答えた。

「三か月ほどかな」

「早いですねぇ、もう三か月も経つんですね。今でもラブラブなんですかぁ?」

「まあ、今のところ順調かな」

「いいなぁ、あたしも恋がしたいなぁ。毎日トキめいてたいなぁ」

 表情にこそ出さなかったが、拓海は今の発言に幻滅した。恋愛しか頭にない女は、浅はかで世俗的で、魅力に欠けると感じたからだ。

 するとここで、リョウが勝ち誇ったような顔をした。

「でもやっぱり、拓海さんって、麗子さんと付き合っちゃいましたよね。最初から狙ってたんでしょ?」

「もういいじゃん、その話は」

 拓海は苦笑してから、話をそらすために逆に質問を投げかけた。

「それより、リョウちゃんのほうはどうなの? その、男関係のほうは」

 とたんに露骨に顔をしかめ、リョウは今にも泣き出しそうな表情になった。

「あたしは全然ダメ。ちっともいい出会いがないんですもん……」

「そっか……」

「でも不思議なんですよね。十代のころは、息をするくらい簡単に恋人ができてたのに、大学を出てからは全然うまくいかなくって……。出会いも極端に減ったし。このままだとあたし、恋愛の仕方、忘れちゃいそうです」

「お客さんとかで、かっこいい人とか来るんじゃないの?」

 リョウは飯田橋のカフェで長らく働いていた。

「そりゃあ、かっこいい人も来ますよ。けど、自分から声掛けられるわけないじゃないですかぁ。なので拓海さん、誰かいい人いたら紹介してください。あ、でも、売れないバンドマンはNGで」

「売れないバンドマンがNGじゃ、リョウちゃんに紹介できそうな人はいないかも……」

 拓海が派遣で働いているコールセンターには、売れないミュージシャンが多数存在していた。以前そんな話をしたとき、いくらイケメンでも売れないミュージシャンだけは絶対に無理だとリョウに念を押されたのだ。

「バーのお客さんに、いい人いませんかぁ?」

「それこそ無理だよ。そんな話をふったら、女の子の斡旋(あっせん)でもしてるんじゃないかって疑われちゃうよ」

「いえいえ、それ、聞き方ですから。ちょっとイケてる人がお店に来たら、劇団の子で今彼氏募集中の子がいるんだけどって、軽い感じでふってくれればいいんですよ。あとあたし、年上でも全然平気なんで」

「わかったよ。でもあんまり期待しないでね」

 と、そこで、別の役者仲間から声がかかった。

「拓海さんのリュック、さっきからブーブー鳴ってますよ」

「え、ほんと?」

 拓海は立ち上がると、壁際の荷物置き場へ向かう。

 革製のリュックからスマホを取り出して確認する。

「あ、麗子からだ……」

 着信履歴を見ると、何度も彼女から連絡があったようだ。

 急いで折り返すと、コール音が五回ほど鳴ったところでつながった。

「麗子? ごめん、稽古中で出られなかった。どうした、何かあった?」

 問いかけるが、電話の向こうからは何の反応もない。ただ、かすかな息づかいが聞こえるだけだ。

「麗子? 聞こえてる? おかしいな……」

 かけ直そうとした瞬間、嗚咽(おえつ)のようなかすれた声が漏れ聞こえてきた。その瞬間、背筋をぞくりと悪寒が走る。

「麗子、どうした? 何があったんだ? 麗子、泣いてちゃわかんないよ! 今どこにいる? すぐ行くから、居場所を教えて!」

 拓海はじっと相手の反応を待った。

 しばらくして、麗子のか細い声がようやく聞こえてきた。

 彼女の説明を聞き、拓海は思わず高い声を上げてしまう。

「え、何だって!?」

 稽古場の仲間たちが、驚いたように視線を向けてくるのがわかった。

「わかった、すぐに向かう」

 通話を切るなり、拓海は革のリュックを乱暴に拾い上げて、演出家の近藤のもとへ向かった。

「悪いけど、稽古を抜けさせてもらう。どうやら、麗子が怪我をしたみたいなんだ」

「え、麗子さんが!?」

「ああ。命に別状はないらしいけど、これから彼女の家に行ってくる」

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