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1-3

どうにも嫌な予感の中、夕食が始まった。

(家族全員が揃って食事をするのはいつ以来だろう)

アンリエッタは考えていた。

ちらりとサンドラに目を向けたが、アンリエッタと目を合わせようともしない。無視だ。

モーリッツとジュリーナは上機嫌で、明るく食事は進んだ。

サンドラはあまり喋らなかった。

サンドラも両親の態度を不審に思っている様子だった。

アンリエッタもあまり口を挟めずにいた。


食後のお茶とデザートが配膳された頃、モーリッツが本題を切出してきた。

「突然だが、縁談の話が来た」

なるほど、それで上機嫌だったのかとアンリエッタは思った。

これだけ上機嫌なら、サンドラの良い入婿の話があったに違いない。

公爵家か侯爵家の次男とか三男とかで魔力の強い人だろう。


(結婚式で余計なことを言わないようにとか、きちんと参列して挨拶するようにとか、懐柔するために私に優しくしてるのね)

アンリエッタは黙ってお茶を啜った。


「クリストフェル・スタンウィン伯爵からだ」

アンリエッタは目を見開いた。

サンドラはあからさまに動揺し、お皿の音を立てて立ち上がった。カップのお茶が跳ねて溢れる。

「ちょっと待ってお父様、あんな辺境の地に嫁げって言うの!? 私は入婿を取って家を継ぐんでしょ!?」

サンドラが金切り声を上げた。


スタンウィン伯爵家は北の国境沿いに広大な領地を持っている。

高く険しい山脈に阻まれ、隣国が侵入してきたことは無いが、それでも人を置かないわけにはいかない。

領地こそ広いが王都からは遠く、出世は難しい。


「サンドラ、落ち着きなさい」

ジュリーナが穏やかに言う。

「スタンウィン伯爵は、アンリエッタを望んでいる」

「は?」

モーリッツの言葉に、アンリエッタとサンドラの声が重なった。

こんなに息が合ったのは生まれて初めてかもしれない。

「何かの間違いじゃないの? 魔力無しを嫁に欲しがるなんて……」

サンドラが呆れたように言う。


「それが間違いじゃないのよ。何度か手紙のやりとりをして、確かにアンリエッタを望んでいるの。届いた贈り物も、アンリエッタのサイズに合わせてあったわ。どうやって調べたのかわからないけど」

ジュリーナが答えた。

なるほど、それで部屋の荷物が増えていたのかとアンリエッタは合点がいった。

しかし、なぜ自分が望まれたのかわからない。


「お父様、私は王立騎士団に入ろうと……」

「駄目だ、せっかくの縁談を断る理由は無い。お前にこれ以上の相手は望めない」

アンリエッタの言葉をモーリッツが遮った。

これを逃せば長女はもう貰い手が無いと、モーリッツなりに心配しているのだろうか。

「できるだけ早くと言われている。数日休んで疲れが取れたら、嫁入りの準備をするように」

有無を言わさぬ口調で、モーリッツは話を終了した。

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