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5-1

アンリエッタは人の気配で目を覚ました。

もう薄暗くなっていて、すぐに誰かはわからなかった。

「……クリス様?」

アンリエッタは小さく呟いた。

「アンリエッタ、大丈夫か? 少し熱があるようだが……」

泣いたせいなのか、少し熱っぽく感じた。

クリストフェルの手が額に触れる。ひんやりして気持ちよかった。

(初めて触れられた、ような気がする)

嬉しいようなそうでもないような、複雑な気持ちだった。


ゆっくり体を起こすと、

「無理しなくていい。水を飲むか?」

と聞かれ、アンリエッタは頷いた。

クリストフェルが注いでくれた水を飲む。

微温かった。


「あの、わがままを言ってもいいですか?」

アンリエッタは、クリストフェルが自分の頼みを聞いてくれるか試したくなった。

「何でも言ってみるといい」

「冷たいお水が飲みたいです」

クリストフェルは軽く頷き、あっという間に水を冷たくしてくれた。

本当に一瞬だったので、驚いてしまった。

「ありがとうございます」

熱っぽい体には冷たい水が有難かった。


「もう夕方なんですね」

ティータイムの少し後から、2〜3時間眠っていたらしい。

「ああ、夕食は食べられそうか? 運ばせようか」

クリストフェルの提案に、アンリエッタは侍女たちの手を煩わせるのは申し訳ないかなと少し悩んだ。

返事をする前に、絶妙なタイミングでライナが夕食と灯りを持ってきてくれた。

泣いて腫れぼったい顔を見られたくなくて、アンリエッタは顔を背けた。


「エマに頼んで、食べやすそうな物を作ってもらった」

クリストフェルの言う通り、お盆にはパン粥と野菜スープと果物が乗っていた。

空腹はあまり感じなかったが、せっかく用意してくれたのだから食べなければとアンリエッタは思った。

食事の方に顔を向けたときに、クリストフェルと目が合った。

「……泣いていたのか?」

クリストフェルが驚いていた。


見られてしまっては今更隠しても意味が無い。

「……はい」

アンリエッタは素直に頷いた。

「理由を尋ねても良いか? 話したくないなら無理にとは言わないが……」

心配そうにクリストフェルが尋ねる。


この際だからはっきりさせたほうがいい。

アンリエッタは1度深呼吸してから、

「クリス様、サンドラと言う名前に覚えはありますか?」

アンリエッタの心臓が今まで感じたこともないほど、とんでもなく速く鳴っていた。


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