4-3
アンリエッタは自分で理由を考えてみる。
1、女性が恋愛対象ではない
これはあり得そうだ。
手を出してこないのも納得できる。
体面を保つために結婚はしたいので、断らなさそうな「下位貴族の魔力無し」を選んだ、としたら。
(我ながらなかなか説得力がある)
アンリエッタは内心自画自賛した。
2、知らない魔法の研究対象にされている
魔法は日進月歩で、様々な魔法が研究されている。
知らない間に何かの魔法にかけられているとしたら、やはり魔力無しのほうが都合がいいだろう。感知されにくい。
アンリエッタのように健康で体力が有り余っているタイプは実験台に持って来いのような気がする。
(もしかしてクリス様が元気になったのは、他人の体力や健康を吸い取る魔法が完成していたり……とか?)
吸われてる感じは無いが、アンリエッタがそれすら気づかないほど無尽蔵な体力持ち、と言う可能性も無くはない。
3、何らかの召喚魔法の生贄にしようとしている
世の中には召喚魔法と言うものが存在する。所謂黒魔術と言うやつで、公には禁止されているが、こっそり研究する者は後を絶たない。
何か悪しき者の召喚魔法の生贄にしようとしているのならば、生贄はできるだけ清らかな物と言うのがセオリーだ。
(これもやっぱり、夫婦としての関係を進めないこととの辻褄は合うけど……魔法の研究をしてるようには見えないのよね)
そんな時間があるようには見えない。
夜中にやっているならわからないが。
(もしかして、夜一緒に過ごさないのは研究の時間をとるため……?)
4、実は吸血鬼
顔色が悪くて美しいところはなんとなく当てはまるけど、普通に日に当たってるし、甘い物が好きな吸血鬼なんて聞いたこともない。
にんにくが効いた料理も普通に食べていた気がするし。
あれこれ考えていると、変な顔になっていたらしい。
鏡に映るライナが奇妙な物を見るような目をしていた。
はっとして、アンリエッタは表情を引き締めた。
(4は却下……1番可能性が高そうなのは、1かしら)
しかし、クリストフェルにしらばっくれられたら確かめようがない。
(いつどうなってもいいように、心の準備はしておこう)
アンリエッタは深呼吸して心を落ち着かせた。
そんなアンリエッタを、ライナが不思議そうに見ていた。