「もう遅い」のざまあを喰らったら、今度は「ズルいズルい」と連呼する妹キャラ属性を併発した件
前作は↑の野球エッセイ集タグからご覧いただけます
ちょうど2年ほど前でしょうか、『プロ野球で起こっている「もう遅い」な問題』という題名で、北海道日本ハムファイターズ(以下「ファイターズ」)が本拠地移転をした経緯についてエッセイを書かせていただきました。
内容の詳細はそちらをご覧いただければと思いますが、掻い摘んで説明すると、ファイターズのホーム球場移転を機に、web小説でよくある追放からの逆転劇、所謂「もう遅い」な展開が実際に発生しているというお話です。
今回はそれから2年経ち、どうなったかなあという続報を書くわけですが、結論から言うと、「もう遅い」でざまあされた札幌ドームは、実はドアマットヒロインの姉が持つ物を「お姉様ばかりズルい」と言って尽く奪い取る、所謂「ズルいズルい」を連呼するアホな妹でもあったのです。
ファイターズがそれまで借りていた札幌ドームから、自前で建てた新球場エスコンフィールドHOKKAIDO(以下「エスコン」)にホームを移転したのは、昨年2023シーズンからです。
新庄剛志監督率いるチームは、まだまだ戦力不足な面は否めず成績は最下位でしたが、若手中心のスタメン起用に舵を切ったことで、後々楽しみな有望株が何人も出てきたところで、着々と土台固めは進んでいる印象です。
そして、肝心の球団などの収支はどうだったかというと……
黒字も黒字、大成功です。
細かい数字については記載を割愛しますが、ファイターズ球団も球場を運営する子会社も増収増益だそうです。
新球場オープン初年度の実績なので、前年との比較が難しい面もありつつ、関係者談として「もっと早く移転すれば良かった」と報じられていることからも、札幌ドームから出ていって正解だったようです。
何がそんなに変わったのかと言えば、札幌ドーム時代は広告収入は全て球場側のものだし、グッズや飲食販売ではかなりのマージンを取られるし等々で吸われるだけだったところを自社の収入と出来たのが大きい。
そして、試合日以外の来場者というのも影響が大きく、昨年3月から9月までで、エスコンを中心としたFビレッジと呼ばれるボールパークを訪れた方が303万人もいたそうですが、うち33%は野球観戦しない利用者だったとか。
つまり自前の施設だからこそ、試合が無くても観光施設として開放することができ、そこでの飲食物販などによる収入があったわけです。
そのおかげか分かりませんが、FA(※1)の資格を持った加藤貴之投手(主力選手)の引き止めに成功したほか、オリックスから山崎福也投手をFAで獲得し、チーム編成に費用をかけられるようになったようなので、移転は大成功だったのだと思います。
(※1)FA〜一軍の選手登録145日を1年として換算し、国内なら8年、海外なら9年経過で自由に移籍出来るという、一軍で長年活躍した(=実力のある)選手のみが得られる権利。
これによって移籍を宣言した場合、元の球団は引き止めることは出来ない(交渉して年俸アップなどの条件を出して残留するケースはある)
さてさて、それではもう一方の当事者であった札幌ドームはどうなったかと言いますと……
悲惨だね。まあ事情を知っている人間からしたら、「そらそうよ」としか言い様が無いのですが……
ファイターズに出て行かれたドーム側はなんとかその穴埋めをしなくてはと考え、手がけたのがコンサートやイベント会場としての需要拡大でした。
とはいえ、札幌ドームの席数は公式で41,566人とあり、器としてはかなり大きい。ぶっちゃけこれを満員に出来るアーティストやイベントってどれくらいあるのかという話です。
海外アーティストの場合、おそらく日本公演は東京と大阪くらいで札幌には行かないでしょうし、国内のアーティストだって札幌はツアーの1会場でしかありませんから、どんなに多く見積もっても、利用実績は年に10回もあればというところです。
アーティストにしても、満席にならなければ人気が無いとか言われるので、あまりにも大きな箱で開催するのはリスクがある。札幌開催の場合、余程のファンなら遠方から来る可能性もありますが、基本的に集客は道内からでしょう。それで4万人はリスクが高すぎます。
そこで札幌ドームが考えたのが、「箱が大き過ぎるなら小さくすればいいじゃない」ということで、2万人規模の会場として使うための「新モード」。このために場内を暗幕で仕切る装置を設営し、その費用は約10億円とも言われております。
さあ、その新モードの成果はと言うと……
なんと! 2023年度は3日も利用がありました!
……アホか。10億も金かけて利用実績3日ってどういうことよ? 見込みの段階で年間6件ってのもいくらなんでも少なすぎるが、実際にはその半分。しかもそのうち1日はラグビーW杯のパブリックビューイングのためで、無償利用だったとか。
ただね、みんな分かってましたよ。絶対上手く行くわけがないって。
考えてもみましょう。元々4万人入る箱をわざわざ半分にして開催するということは、そのアーティストは最初から4万人呼べるほどの集客力は無いと言っているに等しい。そのアーティストにそこまでの集客力が実際にあるかどうかは別にして、そんな見られ方をして面白い人はいないでしょう。
しかも札幌市内には、真駒内アリーナや北海きたえーるという収容1万人程度の施設がある。そこまでの集客を見込めないのなら、最初からそちらを使うというものです。
そしてもう1つ、新たな収入源して期待したのがネーミングライツ。広告料を払う代わりに施設名にそのスポンサー名を冠することが出来るというもので、日本で有名なところだと日産スタジアム(横浜市)や味の素スタジアム(東京都)、京セラドーム(大阪市)、みずほPayPayドーム(福岡市)などのスポーツ施設のほか、コンサートホールなどの文化施設でも数多く採用されている手法です。
札幌ドームでもこれを取り入れようと募集を開始したのです。
――ここからちょっとTVショッピング風
社長「ネーミングライツによって、スポンサー様のお名前を来場者・関係者だけでなく、メディアを通して幅広い層に宣伝することが可能になります」
タレント「え〜、でもお高いんでしょう?」
社長「ええ、たしかに一流ブランドのネーミングライツなので、価格交渉は中々大変だったんですが、今回は特別に、お値段……年間2億5千万え〜ん」
(観客の声)
――わー!
――えー!
――おおー!
――高〜いw
はい、はっきり言って高すぎます。
ちなみに先程例として挙げました日産スタジアムが年間で1億5千万、味の素スタジアムが年間で2億1千万です。これらは競技場のみならず、周辺の付帯施設にも名前を付けてこの金額です。
首都圏で試合もコンサートもかなりの回数開催されてテレビ中継等もあり、観客も数万単位で入る施設でこの値段なのです。ファイターズに逃げられてメディア露出が大幅に減っているのにこの金額ですよ?
企業はその費用に見合う価値があるから広告を出すわけで、価値を見いだせない場所に広告は出稿しないだろうと考えるのは、経営に携わる立場でなくとも仕事をしていれば分かります。
実際にネーミングライツも期間内に応募者は現れず、募集期間延長となっているのを見れば明らかかと思います。
そして、こんな感じで2023年度の営業を終えた札幌ドームですが、当期純損失は6億5100万円となりました。
ファイターズに出て行かれ、平日の稼働が減ることは元々分かっていたので、最初から2023年度は赤字想定でしたが、当初の想定額は約3億円でした。実際は倍以上の大赤字です。
しかも当初想定では2023こそ赤字だけど、翌年度以降は黒字に転じ、2027年度までの5年間計で900万円の黒字となる見込みを立てていましたので、現状を見れば到底黒字転換は無理なのでは? と思わざるを得ません。
恐らくその収益の中には、前述のネーミングライツの広告料も入ってるでしょうから……
この決算について、札幌ドームの社長は会見で、「やろうとしたことが思うように進まなかった。平日開催は頭の痛いところ。広告と平日ナイターがなくなり収益を上げるのが難しい。平日にプロ野球をやれたらいいが、やらせてくれないのでね」とコメント。
ええと……この期に及んで野球開催出来ると思ったのか? あんな経緯で出て行かれたのに……?
社長のコメントは色々解釈がありそうですが、ファイターズの試合を誘致したいという意味なら、出て行ったファイターズが使うとは思えません。
そして、それ以外のチームが北海道で主催試合を開く意向があったのに、ファイターズが許可しなかったという話だとすれば、これもまたおかしな話です。
前作で触れましたが、プロ野球には地域保護権といって、他球団が本拠地とする都道府県で自チームの主催試合を開くときは、その球団の許可が必要になるのです。北海道であればファイターズに許可を求めないといけないのです。
自分たちがエスコンで試合をしている同じ日に、他球団を札幌ドームで試合させるかというと無い話かと思います。それは他球団とて自分が同じことされたら困るわけで、やるはずがありません。
となれば、開催するとなるとファイターズが遠征中で北海道にいない日となるわけですが、それであればエスコンを使うかなと思います。
これも前作で触れましたが、札幌ドームの人工芝はペラペラで、選手たちからもかなり評判悪いみたいなので、使わせてもらえるなら天然芝のエスコンの方がいいに決まってるし、ファイターズも使ってもらえれば使用料を貰えるわけですからね。
ということで、社長のコメントは何言ってんの? という話なのですが、所謂他責思考なのかなと思います。
そもそもで体育館などの運動施設やコンサートホールなどは、平日の稼働率を上げるのが大変なんです。
コンサートやらイベントなど、大規模な集客を見込むものであれば、当然週末に開催するのが普通です。
東京ビックサイトや幕張メッセであっても、平日は主に企業の商談会とか見本市的な使われ方で、そこまで大規模なものは多くありません。しかもホールを区切れるので、全部を使う必要は無いのです。平日に全く開催されないわけではないでしょうが、一般入場有りのイベントの場合、土日もしくは金土日というのがほとんどかと思います。
これまで、札幌ドームはその入りの悪い火水木に、数万人が来場するプロ野球があったからこそ収益に余裕があったわけで、だからこそ野球興行を誘致したいのでしょうが、ファイターズに出て行かれたのは、完全に身から出た錆。
にもかかわらず、無理と分かればアイツらがウチを使ってくれないせいだって……
これを見て、私はweb小説でよくある、「ズルいズルい」と連呼する意地悪な妹のお話を思い出してしまったのです。
お姉様ばかり野球興行が出来てズルい! みたいな感じですかね。
役柄としては、商家の切り盛りを一人でする長女がファイターズ、ズルいズルいと言ってその姉の物を奪い取っていく妹や、「姉なんだから妹の言うことを聞いてやれ」と完全に妹側に立つ毒親が札幌ドームやその後ろにいる行政ってところですかね。
◆
とある王国にドゥーム商会という手広く商売を行う名の知れた商家があった。
しかし当主である父には商才がなく、経営が傾きかけたところ、その娘であるポラリスが若年ながらも職人や使用人たちを取りまとめ、外との商談も上手くまとめてなんとか家業が続いている状態。
しかし、父と後妻、そしてその間に生まれた異母妹ミュレットは散財する毎日で、ポラリスがどれだけ頑張って毎日の利益を上げようとも、あっという間に溶けて無くなる毎日。
しかも自分で好きな物を散々買い漁っているのに、姉が仕事のために必要な物ですら欲しいと思えばワガママを言って奪い取ろうとする妹。そしてそれを擁護する父と、それを遠目で見てニヤニヤする義母。この家にポラリスの居場所は無いのだ。
そして、遂に妹は姉の婚約者カーヴァーまで欲しがり、寝取ってしまった。
さすがのポラリスもこれには怒り心頭だが、ミュレットのお腹には子が宿っており、今更引き離すわけにはいかないと言う。
そこで両親はミュレットとカーヴァーを結婚させ、商会の跡を継がせることに。
とはいえ2人に商売が出来るとは思えないから、実質的な商会の実務だけをポラリスにさせようというのだ。
あまりの仕打ちに涙も出てこないポラリス。それでも自分が働かなくては商会の人たちを養っていけないと身体に鞭打って働くも、疲れが溜まったせいか、ある日のこと商談先で倒れてしまう。
その日の取引相手だったノースアイル・ワイト伯爵は、ここ最近のポラリスの様子がおかしいと気づいており、見舞いを兼ねて事情を聞き、ドゥーム商会の内情を知ると、彼女にとある提案をした。
「出ていくとはどういうことだ!」
「この家に私の居場所が無いことは良く分かりました。なので、身一つで新しい仕事を始めようかと」
「女一人で何が出来る!」
「ご心配なく。ワイト伯爵様が新たな商会を立ち上げ、私をそこの会頭にとお望みです」
ワイト伯爵は貿易で身を立てる貴族。彼はポラリスから話を聞き、ここが好機とドゥーム商会のシェアを奪うべく新たな商会を立て、要であった彼女を引き抜いたのだ。
こうして新たな人生をスタートしたポラリスは、これまで商会のしきたりやら慣習やらで手を出しにくかった新しい事業にも積極的に取り組んで大きな利益を上げた一方、彼女を失った実家は業績が下がるばかり。
ミュレットは姉に出来たことが自分に出来ないはずがないと豪語していたが、商売のイロハも知らぬ素人にどうにか出来るわけでもなく、やることと言えば下働きの者の賃金カットや職人たちの品を買い叩くなど、無理難題を押し付けるだけだ。
そんなわけでドゥーム商会からは一人、また一人と人が去っていき、彼らはかつて恩義を受けたポラリスのもとに身を寄せていく。
「お姉様ばかりズルい!」
そのためにポラリスの商会へ抗議に来たミュレットがその言葉を放つ。だが姉からは全ては身から出た錆だと見向きもされず……
どテンプレやな。テンプレ過ぎて↑のあらすじで完結しとる……
書こうと思ったら書けるけどって、前作でも言ってて書いてないのよね。
時間のあるときに書いてみますか。どテンプレ過ぎて面白いかは知らんけどw
お読みいただきありがとうございました。
札幌ドーム批判が強いですが、実際に現場で働く社員さんは大変でしょう。
やり方さえしっかりしていれば、税金補填でなんとか経営を続ける……みたいな選択肢もアリかとは思いますが、現状だとかなり厳しいですね。