ガンジガラメ
結局は全て与えられた観念。
その常識、倫理観。善悪の分かれ目も。
真っ白な世界を持っているのは、どこかにおわすかもしれない宇宙創造の神のみだ。
俺が生まれた時には、覚醒した時には、この世界はこういう風に出来上がっていて、もうそういう風に回っていたんだ。
だから弱者は、生きたいんだったら、罰せられたくないのなら、それに合わせて生きて行くしかない。
そして、それは時の流れと共に驚くほど変えられてゆくんだ。
為政者に都合のいいように、どうにでも。
全てが作為的。世界中が。
──常識と倫理観。善悪の観念。
俺にはもう、わからない。何が良くて何が間違っているのかも。
為政者のそのまた為政者の意向に沿って、底辺の俺の周りの環境も、作られた時流に変わって行く。
大抵はみんな素直だね。最初に与えられた倫理観が基本のまま大人になる。
だから世代間での倫理観のギャップも大きいんじゃないのかな?
俺も甘い汁を吸えていれば良かったな。
そうだったら何も考えずに、苦悩も無く風潮に従えていたのに。
努力して高給な奴隷となってゆくんだね。テストでいい点取れれば未来は拓くらしいから。
子どもの頃から階級を作り、マウントを取り合い、下を見下す優越感で支配している。
スタートラインも不平等のままに。
残念ながら俺、生まれつき、あんたらみたいに賢くなれないんだ。
この年号の丸暗記、意味あんの? この動詞にsつけ忘れると何かそれほど大きな問題でも起こんの? くっそ寒い中、何でなんキロも走らされなきゃイケないの?
ねえ、生徒はなんでこんなことで比べられんの?
ああ、そうか。自分的にあんま意味を見いだせない指令にも全力で取り組める、嫌なことだって頑張っちゃう人材選別か。
この世の中では。
俺、逃げ込める場所さえない。これも俺の努力不足だっていうのか?
だからせめて、架空の世界を作って遊んでる。
だけど、その世界だって真に自由じゃない。
その身ひとつで。大自然に与えられるもののみで生きて行ける生物が羨ましい。たとえ人より短い命だったとしても。
翼を広げ、大空を自由に飛べる鳥にたまらなく憧憬する。
生まれながらに管理されることのない野生が羨ましい。
空もいいけれど、人間なんてそうそう来れない場所こそが一番尊いかもね。
深く冷たい海の底に住む、ガチ硬い貝殻の貝になれたなら。
何も考えずに、誰にも関わらずに済むのに。
あ、自分無宗教なんで。
神の存在は信じてないから、悩める俺を勧誘しないでね _φ(゜Д゜ )