俺は柴咲さんを諦めない⑨
「……はい?」
柴咲さんが、お前は何を言っているんだ、というような表情で首をかしげる。
白鳥さんも、わけがわからないよ、というような感じでマスコットキャラのような顔をしている。
「俺達三人が幸せになるには、それが最善だと判断した」
「いやいや、意味不明ですよ! なんでそれが私達の幸せに結びつくんですか!?」
「説明しよう」
俺はお茶を一口飲んでから、真剣な表情を作って口を開く。
「忍者になると、二人と結婚できるんだ」
「「……」」
二人は固まっている。
いや、柴咲さんが早々に復活して口を開く。
「説明下手ですか!? それじゃ何もわかりませんよ!」
「そうか、柴咲さんは忍者の里のことについては聞いていなかったな。白鳥さん、説明を頼んでいいか?」
「え、あ、はい」
俺が説明するより、白鳥さんが説明する方が良いだろう。
「――それで、私には腹違いの兄弟がいて……って、えぇっ!? もしかして、主様、そういうことですか!?」
白鳥さんが自分の境遇と家族構成について説明していると、急に驚いたような声をあげる。
先程から反応が鈍かったからもしやと思ったが、本当に気づいていなかったらしい。
「つまり、そういうことなんだってばよ」
忍者の里では、跡継ぎを残すために側室の存在が正式に認められている。
現代の法では側室や妾の存在は許されていないが、里においては治外法権的にそれが許されているのだ。
勿論里の外に出ては適用されないが、里の中であれば周囲からも認められた存在になる。
「……要するに、里の中であれば一夫多妻制が認められるってことですね?」
「そうだが、あまり驚かないんだな」
「驚いていますが、アナタならもっと突飛なことを言い出すと思っていたので、そこまでの衝撃はありませんでした」
「……俺が何を言い出すと思っていたんだ?」
「影分身を覚えて、それぞれ別々に付き合うとか」
「っ!? 成程! その手があったか!」
素晴らしい案だと思い白鳥さんを見るが、白鳥さんは苦笑いをして首を横に振った。
「流石に分身の術は存在しませんよ。幻術で似たようなことはできなくもありませんが、質量を持った分身は不可能です」
「そうか……」
白鳥さんは変わり身の術を使っていたし、分身の術も或いはと思ったが、流石に無理だったか。
つまり、MEPE攻撃や分身殺法も不可能と。残念である。
「柴咲さん、やはり予定通り俺が正式に忍者となり、二人を娶るプランでいこうと思う。それで良いだろうか」
良くないだろ常考……