俺は柴咲さんを諦めない⑧
人差し指を立てて説教する姿は、いわゆる世話焼きな委員長キャラのようであった。
ここに来てさらに属性を増やすとは、白鳥さん……、おそろしい子!
「それで主様、お酒はありますか?」
「? ビールとチューハイならあるが」
「では、詩緒ちゃんに飲ませましょう」
「……何故だ?」
「そ、そうだよ静香ちゃん、いきなりどうしたの?」
「どうしたのって、決まってます。詩緒ちゃんを、酔わせるんです!」
白鳥さんは、拳を握って力強くそう言った。
「酔わせて、どうする?」
「酔ってベロンベロンになった詩緒ちゃんから、本音を聞き出します!」
「……それはもしかして、自分が曝した痴態を柴咲さんにも曝させるためか?」
「だ、だって、私だけあんな姿見られるなんて不公平ですよ!」
さっきまでの世話焼き委員長から、今度は子どもに変わっている。
ころころキャラが変わるのは見ていて新鮮だが、実際は単純に情緒不安定なのかもしれない。
「静香ちゃん、私、ビールやチューハイくらいじゃ酔わないよ……」
確かに、飲み会でも柴咲さんが酔っているのは全く見たことがない。
対して白鳥さんはかなり酔いやすいタイプで、柴咲さんに介抱されているのをよく見る。
「それに、酔わなくても、私はちゃんと本音で話すよ」
柴咲さんが、少し真剣な表情に切り替えて言う。
「じゃあ、主様のことがしゅきですか!?」
そして白鳥さん、なんか酔ってません?
「しゅ、しゅき……?」
「だいしゅきなんですか!?」
「だい……、ああ、そういう意味……。えっと、うん、好きだよ」
おお、はっきりと言われるとやはり少し照れるな。
思わず顔がにやけそうになる。
しかし、白鳥さんは逆に泣きそうな顔になっていた。
「やっぱり、詩緒ちゃんはズルい! なんで、そんなに堂々と言えちゃうの……」
「そ、そんなことを言われても、性格の問題じゃないかな……」
白鳥さんはシュンとしているが、そんなに凹まなくてもいいと俺は思う。
「サバサバしていて友達思いな柴咲さんも、友達のためなら自分を殺せる白鳥さんも、どっちも魅力的だと思うぞ」
「「~~~!」」
「そんな二人だから、俺は好きになった。そこに優劣はない」
「……でも、それじゃあ、どうするつもりなんですか?」
このまま二人と付き合うのも悪くはない。
実際そうしている男女も少数だが存在している。
愛の形は人それぞれなのだ。
しかし、それでは真に二人と結ばれたとは言えないだろう。
「俺は……、忍者になろうと思う」