俺は柴咲さんを諦めない④
そうは言うが、柴咲さんはかなりの武闘派なので、迂闊なことを言うといつでも正拳突きが飛んでくる。
身の危険を感じずにはいられなかった。
……そういえば、魔王城で正拳突きというと某有名RPGを思い出すな。
結構外していたし、俺もなんとか避けられるかもしれない。
「……また何かくだらないこと考えてるでしょ」
「いや、正拳突きがボス戦のカギだったことを思い出していただけだ」
「だからやりませんてば!」
そう言いながらも拳に力が入っている。油断はできない。
「ちなみに、白鳥さんなら敵に対してどんな攻撃を行うんだ?」
「私ですか? 私なら手裏剣とか苦無とか火薬ですね」
「ほぅ? もしかして、今も持っているのか?」
「手裏剣や火薬は携帯していませんが、苦無ならあります」
まあ、そうだろうな。
流石に現代社会で手裏剣や火薬を持ち歩くのは危なすぎる。
いや、苦無だって危ないんだが、アレは多目的ナイフのようなものだからな。
「見せてもらえたりするか?」
「はい、大丈夫ですよ」
そう言って白鳥さんは、スカートをたくし上げ、その素晴らしい脚線美を披露する。
「おお!」
「ちょっと静香ちゃん!? 何やってるの!?」
「何って、苦無を見せようと……」
白鳥さんは下着が見えるのも構わず、太ももに巻き付けられたバンドから苦無を引き抜く。
それが大変色っぽく、否応なしに興奮してしまった。
「黒か……、素晴らしい」
「はっ!?」
俺が思わず呟いたことで、白鳥さんもようやく自分が何をしでかしたか気づいたらしい。
「もう! 静香ちゃん! そういう迂闊さが身の危険を招くっていつも言ってるでしょ!」
「ごめんなさい、詩緒ちゃん! 主様も、お見苦しいものをお見せして大変申し訳なく……」
「いや、眼福だった。苦無はてっきり太ももの外側に付けるものだと思ったが、内ももなんだな」
「あ、はい、そうなんです。外側に付けると、持ち物検査でバレちゃうので」
世知辛いな。アニメや漫画だと、スカートをたくし上げてカッコよく取り出すというのに。
「しかし、それだと咄嗟に取り出せなくないか?」
「咄嗟に取り出すことがないので……」
それもそうか。
任務中や戦闘が予測される状況ならともかく、日常生活で咄嗟に使う機会などほぼない。
というか、咄嗟じゃなくても使う機会はない気がするが。
「ふむ、意外と小さいな」
「小苦無ですので」
携帯には便利そうだが、多目的に使う強度はない気がする。
暗殺や、投げるのには向いていそうだ。