俺は柴咲さんを諦めない③
「そんな、そこまで言ったのなら見せてくださいよ」
「ダメだ。白鳥さんの名誉に関わるからな。見せるのであれば、白鳥さんの許可を取ってからだ」
そう言って俺はスマホを操作し、動画ファイルを白鳥さんに転送する。
「白鳥さん、それを見せていいと思うのなら、柴咲さんに転送してくれ」
「気は進みませんが、確認すればいいんですか?」
「ああ。ただ、会社で確認するのはお勧めできない。家に帰ってから確認するといい」
「そんなレベルなんですか……。その時点で、絶対見せたくないですよ……」
俺としても、アレは他人に見せるべきではないと判断する。
いや、他人どころか家族にも見せられないレベルだろう。
「とりあえず、白鳥さんの件については解決した。あと問題なのは柴咲さんについてだ」
「私? 私に何の問題が……」
「俺が今でも柴咲さんを好きだという問題だ」
「なっ!? こ、こんな所で何を言い出すんですか!?」
柴咲さんが慌てて周囲を確認するが、俺も人がいないことくらい確認している。
幸いなことに、始業前の休憩スペースは人があまりいないので、こんな会話もできるのだ。
「まあ、詳しい話は今夜にでもどうだろうか。柴咲さんの都合を確認したい」
白鳥さんの予定については先日のうちに確認済なので問題ない。
「それは大丈夫ですけど、場所はどこで?」
「昨日一昨日と、白鳥さんと柴咲さんの家に呼ばれているからな。今日はウチでどうだろうか」
◇
「「お、お邪魔します」」
「ようこそ、我が城へ」
恐る恐るといった感じで部屋に入ってくる柴咲さんと白鳥さん。
「そう怯えずともいい。特に二人を害するようなものは置いていない」
「そ、そうは言いますけど、男の人の部屋に入るのって初めてで、やっぱり少し怖いんですからね! ねえ、静香ちゃん?」
「そ、そうですね。私は入るのは初めてじゃないんですけど、嫌な思いでしかなくて……。あ、でも主様の部屋ということなので、別の意味でドキドキはしています」
もう大人とはいえ、か弱い女性には変わりないということか。
いやしかし、単純な戦闘力で言えば俺は二人には到底敵わない。
この場合、身の危険は俺が感じるべきなのではないだろうか。
「俺も少しドキドキしてきた。二人が本気なら、俺は手も足も出ずやられるだろう」
ここは我が城だというのに、あっさり攻略されるのが情けない。
俺は魔王にはなれないようだ。
「なんでこれから戦うみたいな感じなんですか! やりませんからね!」




