俺は柴咲さんを諦めない⑪
二股とは、同時に二人の恋人と交際することを表す単語だ。
日本人の一般的倫理観においては、悪いこととされる行為である。
「抵抗があるのは重々承知している。俺も一昨日までは柴咲さんと添い遂げることしか考えていなかった」
柴咲さんと別れはしたものの、俺は柴咲さんのことを完全に好きになっていた。
白鳥さんのことも好きではあったが、最終的には柴咲さんを選ぼうと考えていたのである。
しかし、白鳥さんの本音を知り、彼女の性質を知ったことで、俺の中で白鳥さんへの愛情が爆発した。
もう俺には、彼女を捨てることなどできはしない。
「柴咲さんは、俺が白鳥さんのことを放っておけなくなることがわかっていたんだろう。だからこそ、最初から身を引く気だった。違うか?」
「…………」
柴咲さんは、好きでもない人と付き合ったりしないとは言っていたが、最初から別れる気満々だった。
あのとき俺が別れを切り出さなくても、自ら身を引くつもりだったのだろう。
それは、俺が白鳥さんを本気で好きになる確信があったからだ。
「ニオイでどこまで確信があったかはわからないが、俺の性格や性質みたいなものは把握していたハズだ。だから、俺が白鳥さんのことを本気で好きになることも織り込み済みだったのだろう。……俺はそんな柴咲さんの思惑にまんまと嵌まり、白鳥さんと本気で向き合ってしまった」
「……もしかして、それを後悔しているなんて言わないですよね?」
「言わない。俺は本当の白鳥さんを知れて良かったと思っているし、好きになったことにも一切後悔はない」
「主様……」
「だったら、めでたしめでたしじゃないですか」
「そうはいかない。俺は柴咲さんを諦めない」
「っ! だから、それは二股じゃないですか! 里のルールだか何だか知りませんが、まず心情的に許されません!」
「……本当にそうか?」
「そ、そうに決まって――」
「譲ってもいいと思える相手であれば、二股だとしても心情的に許されるんじゃないか?」
「そんな都合のいいこと、あ、あり得ません!」
「じゃあ、白鳥さんはどうだ? 俺が柴咲さんと二股したら、どう思う?」
「私は、詩緒ちゃんと主様が結婚し、それに仕えたいと思っていました。私の立場が変われど、その思いは変わりません。私は主様の恋人であり、同時に二人に仕える忍びです」
「なっ……」
「ということで、白鳥さんは籠絡済みだ」
「静香ちゃんは結構頑固なのに……。一体、どんな手を使ったんですか!?」
サブタイトル回収!




