出会い
高校生、なんで魅惑の響きなんだろう。
俺にはわかる、わかるぞ!
この高校で新しい自分に生まれ変わって、みんなが指をくわえて羨ましそうにするくらいの青春を過ごす。
明日からそんな日々が自分を待っているなんて、なんて夢のようなんだろうか......
そして今俺はゲームセンターに来ている。
なんでかって?そりゃ
「受験勉強から解放されたからさァァァァ!!」
久々のゲームセンター。
今の今までやれていなかった家庭で出来るゲームを一通り消化したのち、せっかくならと明日から通う学校周辺の下見も兼ねて、近場のゲームセンターに来ていた。
「......ママ〜、あのぬいぐるみ欲しい〜」
「......こら、我慢しなさい、置いていくよ」
「......やーだー、ぬいぐるみ欲しい〜」
そうそう、昔は俺も似たようなことを......
「そういえば、ここ最近やった事なかったな....」
なんだろう、ただ周りに流されてクレーンゲームを見ただけなのに、急にやりたくなって来た....
「そういえば、あの子....あのぬいぐるみが欲しいって.....どれの事だろう」
少女の目線をなぞった俺の目の先には、白い犬のぬいぐるみがあった。
それなりのサイズあるな.....
取れるのか?あれ
財布の中身をそっと確認するが、そこには併願を受けない代わりに貰った5000円のお釣り、大体1460円くらいしか残っていなかった。
「全部使うのは流石にリスクがあるな......」
少し考えて、400円なら使えると割り切った。
「今日の俺は、一味違うぜっ!」
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そんなこんなで、今日の夜を迎えてしまった訳だが、一体誰だよ、400円で取れるとか言ったやつ。
「ほぼ全額持ってかれたんだが......」
結局あの後、400円では取れず、ならば500円で6回やった方がお得だと思い、500円を入れたが取れず、ここまで来たらと残りの500円もと、何も考えずに使い、1回目で取れてしまった。
この上なく、なんとも言えない気分になってしまい、ひとまず家に持って帰ってしまった。
「結局、何がしたかったのかわかんなくなっちまったな.....」
今までゲームばかりで、ろくにぬいぐるみなんて欲しがらなかった人の部屋に突如として置かれたなんとも可愛らしい白い犬のぬいぐるみ。
でも俺からしたら、少し憎たらしくも見える。
「はぁ....とりあえず適当な場所に飾っておくか」
ひとまず、俺が勉強で使っていた机に置いておく事にした。
高校生デビュー、前日になかなか締まらない一日を過ごした気がするが、何を言っても仕方がないだろう。
「もう、寝るか......」
布団入って、一眠りすれば、明日から新しい生活が始まる。
「.......友達出来るかな」
そんな小言を呟きながら、眠りに落ちた。
(.......ぉい)
ん?誰だ?こっちは眠いんだが?
(おい)
急に耳元で囁くなって、今何時だと思ってるんだ?
そう言いつつ、時間を確認したが、時間は深夜1時だった。
(おい!)
だから、おいおいってなんだ.....
一気に振り返ると、ぬいぐるみの顔が正面ほぼゼロ距離に来たので思わず心臓が止まりそうになった。
(おい、ぬいぐるみだって寒いんだ、さっさと布団に入れやがれ)
は?ぬいぐるみが喋った?
(おい、聞いてんのか?さっさと布団に入れろって言ってんだよ)
なんだろう
文句や聞きたい事なんて、山ほどあるが、それを無視しても今はやるべき事が一つあった。
「わかった、布団には入れるから、ひとまず寝かせてくれ」
(わかったから、さっさと布団に入れろ)
一旦布団を被せるために、少し起きあがろうとしたその時
(....隙あり)
そのぬいぐるみは布団のわずかな隙間から侵入、ほどんど自分の方に寄せてしまった。
「いや、布団返してくれないか?」
(....頼み方ってもんがあるんじゃないか?)
「返せや!このヤロー!)
高校生デビュー初日は思いもよらぬ、形で始まったが、この1匹?1体?の白いぬいぐるみとの新しい生活が......
次の投稿は1/2くらいになるかと思います。
追記:投稿日は変更になりました。次話は1/4になると思います。