第六話
現在猫と少女が歩いているのは、港町ウィーリアから内陸のサンテナンに向かう、干物街道と呼ばれる道である。かつては大量の魚の干物を乗せた荷馬車がこの道を通ったらしいが、経済の中心が王都に移り、また人々の食の嗜好も変化し、かつてのような賑わいはすでになく、かろうじて乗り合い馬車の定期便が維持されている程度である。
猫達が少女に出会った地点から少しウィーリア寄りの所でかつてはもう一つの港町レフィレルに向かう道があったのだが、そちらは百年ほど前に港が閉鎖されてから徐々に人もいなくなり、今では道も木々に覆われているらしい。
「最初はてっきりレフィレルの方から来たのかと思ったのですが」
その話をする少女の声色はともかく、目だけは少しだけ険しい。
「残念ながら、もしそうだとしても覚えてはいないのでねぇ」
きつい視線を受け止めながら、猫は飄々と応える。実際覚えていないのだから他に返しようもないのだ。
「他に道らしい道は無いはずなんですよ?」
少女としてはそれで納得が行くものでもない。
「案外空から降ってきたのかもしれないよ?」
「いいですねそういうの。夢があって」
少女は呆れ気味にそう言うと、少しふくれてしまった。
「なあ、やっぱり変だよな」
空気を読まない傘がそこに割って入る。
「嬢ちゃんの来たウィーリアだったか、そこと、大きな町を結ぶ道は、今はもうそんなに人の行き来が多い訳じゃないんだろう?」
誰もその問いに答えないが、傘は気にしない。
「そんなところに根城構える賊って何だろうな?」
やはり誰も答えない。というより、傘の話を聞くモードに入っている、と言うべきか。特に少女は興味津々である。
「そもそも嬢ちゃんは何しにその大きな町、なんだっけか」
「サンテナンです」
「そう、そのサンテナンに向かってたんだ?」
「レフィレルの再開発許可を、郡令に申し出るために」
少女が手をぎゅっと握り込んだ。
「ふむ……なあ、本当にそのレフィレルとかいう港町は廃墟なのか?」
「どういうことです?」
少女が傘の方を向き……どこに視線を向けて良いかわからず、目が泳ぐ。
「ああ、そうか。そこの再開発をして欲しくない誰かがいて、しかもそいつらはそこを根城にして何かしてるんじゃないか……そう言いたいんだね?」
ヒゲを撚りながら猫が言う。
「そんなはずは……しかし……」
しばらく傘のどこを見るか悩んでいた少女が、視線を猫に移した。
「確かに、現地調査をしたわけではないですし、その可能性はあると思います」
「じゃあ、詳しいことはおじさん達に聞いてみようかねぇ」