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大男とお師匠さん

「っっっっだっっっっ代表!!」


がたりと椅子の音がしたかと思うと、今の今まで管を巻いていたエリナさんが立ち上がり、直立不動。

トアさんも少し遅れて今にも吐きそうな青褪めた顔をしながら立ち上がり、直立不動。

俺はそんな二人を見ながら木でできたジョッキを口に運び酒を口に含んんだ。


「ん?

トア、エリナ

と言う事はお前がアズサか!!」


「ちょっとアンタ、いい加減邪魔なんだけど」


大男の後で女性の声が聴こえる。


「おうすまねーな、トリス、しかしギルマスにも言ってるんだがな、もう少し入り口をでかくしろってよ」

「毎年でかくなってるアンタに合わせてたら金がかかってしょうがないでしょ」


でしょの辺りで大男の顔色が変わった。


「おいおいおい、だからって蹴るんじゃねーよ」


大男の身体の揺れからして後から蹴られているらしい。

そんな漫才のような光景を見ながら俺の前で冷や汗をかきながらブルブルと震えている二人が声を殺しながら会話している。


「ねえやん、今のうちに逃げられないかな」

「バカね、あんた、後に師匠がいるのよ、逃げれる訳無いでしょ」

「僕ら死ぬのかな?」

「・・・流石にそれは無いわよ・・・・多分」

「僕まだ死にたくないんだけど」

「私だってそうよ!!」


そんな二人のヒソヒソ会話が物騒でしょうがない。


大男はようやく扉と後ろからの蹴りに解放されると


「はぁ〜〜〜」


っと大きな息をつきどかどかどかと真っ直ぐこちらに向かってきた。

板張りの床がギィギィギィと嫌な音を立てる。


近くで見ると本当にでかい。

筋肉も必要以上にデカイ。

ボディビルダーの世界チャンピオンも真っ青だろう。


大男はバンっと俺たちのいるテーブルに手を付くと

俺をグッと睨み口を開ける。


「お前がアズサって冒険者か?」


超低音、、。

ビリビリビリとその声を聞いて俺の身体が緊張する。

人間の声が身体の芯に響くって、どんな現象だよ。


「そうだけど」


こんな時たじろいではダメだ、舐められたら終わりの冒険者人生、丹田に力を込めて、きっと大男を睨み返す。


「今回はありがとーなーーーー」


店内に超低音が響き渡る。

目の前でそれをやられた俺の耳はキーーーーンと耳鳴りの様な音を出す。


でも、今俺?

お礼言われなかったか?


大男の脳天が俺に向けられている。これって頭を下げられてるって事だよな?


「ん?え?」


俺が困っていると、いつの間にやら大男の後にスラッとしたシルエットの洋服を着た女性が立っていた。


「アンタのバカ声のせいで、ポカンとしてるでしょうが、もっと声のボリュームを落としなよ!!」


そう言って、大男の頭をペチンと叩く。


「皆、すまないね、うるさくしちまって、うちの人のいつものやつだ、一杯奢るから水に流してくれ。」


店内に歓声が沸き起こり。

静まりかえっていた店内にさっきまでの騒がしさが戻り始めた。


そして、二人が俺の席に座る。

大男は他のテーブルから持ってきた椅子を三つ並べてドスンと、女性の方はもちろん、椅子一つだけだが、座り方に優美さを感じさせた。

エリスさんとトワさんは、何故か俺の後で立たされている。

・・・・気まずいて。


「すまないね、あんたも、お楽しみのところ。

ちょっと我慢しておくれ」

「一体何なんですか?」

「それはこの人に直接聞いておくれ、ミリア、こっちにも酒とつまみ持ってきて」

「はーいただいまぁ」


奢り用の酒を各テーブルに配膳していた女の子が元気よく答えてカウンターに戻る。


程なくして、俺のジョッキの3倍はありそうな大きなジョッキと、俺達と同じサイズのジョッキがつまみと共にテーブルに運ばれてくる。


「そうそうこれ、この芋を揚げたやつ、これがないと始まらないわよね」


そう言うと、トリスさんは手掴みで熱々のポテトフライを口に運びホフホフ言いながら咀嚼し酒を煽った。


酒飲みの飲み方だ、俺の喉がゴクリと鳴る様な見事な飲みっぷりを見せつけられ俺もジョッキに手をつけようとしたその時。

大きなジョッキ、嫌もう小さな樽だよ、が持ち上がり

どんどん角度が上がっていく。


「・・・・マジか」


そしてあろう事かあの量の酒が飲み干されてしまった。


「ぷはぁー」


酒臭い息が俺に吹きかけられる。

その息だけで、昔の俺なら酷く酔ってしまったかも知れない程だ。


「うぇ」


と俺の後ろでトアさんの声が聞こえる

耐えてくれトアさん。


「おお、すまんすまん、ついいつもの癖でな」

「この人、いつもはそれアタシにすんのよ、臭くって仕方ないわよね」

「・・・そうですね。」


嫌、最悪だマジで迷惑だぞ、オヤジに酒臭い息吹きかけられるのって。


「ガハハハ、俺はセバス、コイツらの所属してるクランの代表だ、代表っつても、現役で冒険者もしてる。

自慢じゃないが、この町で唯一のS級冒険者パーティのリーダーもやってる。

おーい姉ちゃん、同じ物頼む!!」

「はーい少々お待ちを!」


樽2本目入りました〜!!

おかわりするんですね。

って、結構自慢してますけど。


「アタシはトリス、今話に出てきたクランの副代表で、S級冒険者パーティーの魔導師。

この二人の師匠もやってるわ」


この人が年齢を聞いちゃいけない人か・・・でも見た目20台後半の若い美人さんって感じだけど、、ジャンクフード好きにも関わらず、体型はスラッとして出るとこは出てるし。

人は見た目によらないって奴かな?


「今日は、礼を言いにきた。」

「礼ですか?」

「アムジットとは古い付き合いでな、本当はコイツらよりランクが上のクランメンバーに依頼の話が来てたんだ、それを俺が無理を言ってこの兄弟に経験を積ませる為にゴリ押ししたって訳だ。

つまり、お前が俺のケツを拭いてくれったって訳だな。


ガハッハハハハ!!」


そう言う意味じゃ無いって事はわかってるけど、わかってるけども、、ケツを拭くって気持ち悪さしか感じないんですが。


「さっき俺のとこにアムジットが来やがってよ、お前の事、よろしくってな。

お前らの事も褒めてたぞ、よくやってくれてたって。

だが、ホブを相手にきょどってたってのはな、いただけないよな。」


場が一瞬凍り付く。


「修練メニューをもう一段階上げないといけないようね」

「へ・・・・?」

「エリナ、アタシ、発言は許して無いけどねぇ?」


後ろでガタガタと震える音がしてる、、してるよな。

凄い心理的プレッシャーだ、普段どんな鍛えられ方をしてるんだこの二人。


それにしてもアムジットさん、手回しが早いって、俺の敏腕マネージャーじゃ無いんだから、、。

マジでどこを買われたのやら。

疑問しかない。


「で、アズサぁよ、ここにはいつ迄いるんだ?

お前東から旅してきてるんだろ?」

「ええ、そうなんですけど、しばらくここに滞在してみようかと」

「へぇ、この町を気に入ってくれた訳か?」

「はい、活気があっていい町だと思います。」

「そうか、そうか、じゃあ、お前ここにいる間俺のクランに入れ」

「?」


どう言うこと?


「アムジットにも頼まれた手前、お前の面倒を見るのは近くに置いておった方が良いと思ってな」

「断ってくれても良いのよ、その場合、アタシらがサポートできる事があれば手伝うしね」


クランのメリットとデメリットがよくわからないが。

アムジットさんが話を通してくれているんだから、悪い事では無いんだろう。


「じゃあ、お願いします」

「よし、じゃあ、早速うちの修練場に移動するぞ」

「え?」

「クランに入んだろ?

入団テストだ。

でも心配すんな、アムジットから聞く限り、お前の実力は本物らしいからな、要は俺がお前とやってみたいだけだ」


やってみたいって・・・まさか


「アンタ、嫌、セバスさんと俺が戦うって事ですか?」

「それ以外に何かあんのか?

心配すんな、死にゃしねーし、家には腕のいい魔療師もいるしな」

「アンタ注文した酒はどうするんだい?」

「おっとそうだったな、それを飲んだら、行くぞ、ちょっと待っとけ!!」


ランクが一体いくつあるか知らないけど、S級といえば、ファンタジーあるあるでは上のランクの冒険者の筈。

そんな人間と手合わせって、、、、。

はは、1日目にしてイベント目白押しじゃないか全く。


自分の今の実力は測るいい機会だ。


やってやる


俺は拳を力強く握りしめた。

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