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『願いの木』-世界を超えた僕の運命の物語-  作者: シュン
第6章:文化祭
63/90

6-6-1 願い

文化祭当日。

昨日は、緊張してよく眠れなかった。不安と緊張を抱えながら学校へ向かった。教室へ着くと、みんなに促されるように用意された服に着替える。髪を長く見せるために、ウィッグをつけ、メイクもされた。


ふと、藤澤君を見ると、目が合って、微笑んでくれた。

コック姿の藤澤君は、いつも以上にかっこいい。


緊張するけど、ちゃんと、僕の思いを届けたいな、、

そう強く思う。


「愁君?」

優君が僕を見て驚いている。けれど、僕も優君の可愛さに驚いた。

「そうだよー優君、可愛いね!!」

「えっー、愁君の方が、かっこよくて、可愛いよ!!」


お互いに褒め合った。

凛君と東条君も別人のようになり、みんなを驚かせた。


時間となり、ヴィジュアル系カフェの開店だ!


順調にお客さんは来てくれて、ウエイトレスとしてしっかり仕事をした。


あっという間に【歌コン】の時間が来てしまい、ヴィジュアル系カフェをみんなに任して抜けさせてもらった。服を着替え、メイクを落とし、響君と体育館へ向かう。会場には、たくさんの人がいて、舞台袖へ行くと、みんな、緊張した顔だ。


「さぁ、文化祭、注目のイベント【歌コン】の開催です!!友情、感謝、愛、様々な思いを乗せて、みんなが歌ってくれます!感動すること間違いなしです!それでは、歌コンのスタートです!」


とうとう始まった。

順調に一人ずつ終わる。みんなの歌は、リハーサルよりも上手に聞こえた。

僕の前の人が終わり、その人が舞台袖へ戻って来た。


「次、頑張ってね」

「ありがとう。」


あぁ、僕の番が来てしまった。

緊張で心臓がバクバクしている。


あぁ、不安だ、、

間違えたら、どうしよう、、、

ちゃんと届けたいのに、不安が押し寄せてくる、、


「愁君ならきっと大丈夫!」

横にいる響君が僕の手を握りニコリと笑ってくれた。


そうだよね。僕には、響君もついているんだ。

大丈夫。きっと、うまくいく。


僕の思いをちゃんと届けよう。藤澤君に。


「【歌コン】も最後となりました。さぁ、ラストを飾ってくれるのは、この方です!」


司会者に登壇するように案内された。

ステージへ上がると、照明が僕を照らす。


「今回、【歌コン】のために作詞をされたそうですね。どんな気持ちで作詞をされましたか?」

「えっと、、好きな人を思って、僕の気持ちが届けばいいなと思い作詞をしました。」

「素敵ですね。作曲は、お友達がされたとか?」

「はい、親友の音宮君が、この詩に合った曲を作ってくれました。」

「いいお友達ですね。それでは、歌ってもらいましょう!」


「〈願い〉」


会場が暗くなり、照明が僕だけを照らす。

僕は、目を瞑る。そして、藤澤君のことを考えていた。


高校一年生の放課後。ふと見た校庭。そこで、ひと際、楽しそうにボールを蹴る人がいた。僕の中に爽やかな風が吹いた。一目惚れだった。少しして、その人の名前を知った。その人は、みんなから人気があって、僕なんかが相手にされるわけないと思った。気がつくと、放課後は、いつも校庭を見ていた。姿を見るたびに、胸が締め付けられた。忘れよう、何も見なかったことにしよう、僕には、到底似合わない人だから。そう自分に言い聞かせ、単調な日常生活を歩もうと決めた。そう思っていたのに、高校三年生で同じクラスになった。諦めようと思っていたのに、奥底に眠る感情が、また芽を出した。偶然、席が隣になり、初めて、近くで見た。一年生から見ていた時と、何も変わっていない。あぁ、やっぱり好きなんだ。思い描いていたイメージと違い、あまり笑わない人だった。班まで一緒になって、化学準備室での出来事、体育での出来事でますます好きになっていく。凛君と付き合うようになって、やっぱり諦めようと思った。けど、すぐに別れたと知った。もしかしたら、僕にもまだチャンスがあるのかなと思ってしまった。そして、海へ行った。少しずつだけど、仲良くなれた。藤澤君が、少しずつ笑うようになり、最後には、来年も一緒に来ようと言ってくれた。それがどんなに嬉しかったか。登山では、一緒にビバークをしてくれて、不安で、押しつぶされそうな僕を、後ろから強く抱きしめてくれた。藤澤君をもっと近くで感じていたい。もっと、そばにいたい、そう強く思うようになった。それから、体育祭では、ボロボロの僕を慰めてくれた。僕の中で、どんどん欠かせない存在になったんだ。

もうこの胸の中には、抑えきれない。この思いを届けたい。

僕は、藤澤君のことが好きなんだ。大好きなんだ。



そして、ゆっくりと目を開けた。その先に、藤澤君がいて、僕をまっすぐ見つめていた。この空間が、僕と藤澤君のためだけに用意されたものだと感じる。


二人を繋ぐ見えない糸。


あぁ、届けたい、僕の溢れる思いを、、


響君が前奏を弾き始める。その音は、どこまでも優しくて、力強い。



僕は、思いを込めて歌い始めた。



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