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『願いの木』-世界を超えた僕の運命の物語-  作者: シュン
第1章:恋心
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1-5 化学準備室にて

席替えと班決めが終わり、気が重くなってしまった。

藤澤君を見てはドキドキして、武藤君からは意味もなく絡まれる毎日を送るとなると、単調な日常はきっと消えるだろう。けれど、凜ちゃんと優ちゃんがいてくれたので心強かった。優ちゃんが、僕の席に来て話かけてくる。

「一時間目は、化学だよね。そろそろ化学室に行こう。」

僕は、授業のことなんかすっかり忘れていて、これからのことを考えていた。

「そっか、移動だよね、、」

「じゃあ、アタシも一緒に行く!」

凜ちゃんが話に加わる。僕たちは、化学室に向かった。

「元宮さんと話すの初めてよね。アタシ、柳木凛って言います。みんなから凜ちゃんって呼ばれているから、凜ちゃんって呼んでもらってかまわないよ。」

「ウチは、元宮優って言います。よろしくね。凜ちゃん。」

「二人って、初対面だったんだ、、、」

凜ちゃんの性格上、どこかで接点がありそうだと思っていた。

「アタシだって、話したことがない人、たくさんいるよ。」

凜ちゃんは笑っていた。

「優ちゃんって呼ぶね。これからよろしくね。」

凛ちゃんの社交的な性格で、2人はすぐに仲良くなった。僕は気になっていたことを聞いた。

「ところでさ、凜ちゃんって、武藤君と知り合いなの?」

「知り合いっていうか、幼馴染なのよ。」

「へぇ、そうだったんだ、、」

「あいつ、昔からお調子者っていうか、ああいう感じなのよね。それにあのニヤニヤした顔、見ててむかつく、」

「はは、けど、仲良さそうだったけど。」

「誰がよ、冗談はやめてよね。」

優ちゃんは、クスリと笑っていた。話をしていると、化学室に着き、席は、適当に座った。しばらくすると先生が入ってきた。今日は、何をするのだろう、、、

「おはようございます。今日は、3年生の最初の授業ですね。みんなも知っているように化学の授業は実験も行います。そこで坂木先生から班決めをしたことを聞きましたので、その班でまとまって着席してください。今、バラバラだと思うので、さっそくですが班ごとにまとまって席を座りなおしてください。」

さっそく班か、、、と思った。僕たちは、班で集まり、席に座った。僕の隣には凜ちゃん。凜ちゃんの隣に優ちゃん。僕の目の前に藤澤君。藤澤君の横に武藤君が座った。目の前に藤澤君がいるので、僕は、前を向けなかった。藤澤君は、いつものようにけだるそうだった。

「班ごとに席を座りましたね。それでは、授業を行います。」

化学の授業が始まった。できるだけ教科書と黒板だけを見るようにした。授業は順調に進んでいく。

「今日は、最初なのでこのあたりで止めます。すでにやった人もいるかもしれませんが、先生が好きな簡単な実験を一つやります。黒板に書く物を持ってきてください。」

炎色反応の実験だった。実験の中で様々な色を見ることができた。武藤君は、終始楽しそうで、藤澤君は、火をじっと眺めていた。実験も無事に終わり、片付けとなり、武藤君は片付けもせずに周囲の男子とずっとはしゃいでいた。

「勇も片付けやりなよ!」

凜ちゃんが強めに言う。

「へいへい。」

武藤君がちゃかしたように返す。藤澤君と優ちゃんは、黙々と片付けをしていた。僕は、実験で使った物質を化学準備室に持っていった。化学準備室は、湿っていて少し臭かった。返す場所を見つけたけれど、その棚は少しだけ高さがあった。近くにあった台に登り棚の中に入れようとした時に、ガラスの割れる大きな音が聞こえた。

僕は、その音で驚き体勢を崩し、落ちると思った瞬間、後ろから

「大丈夫か。」

藤澤君が僕を抱くように支えてくれた。

僕は、振り返り、伏し目がちに言う。

「ごめん、大丈夫、、、ありがとう、、」

「気をつけろよ。高いところは俺がやるから。」

僕が手にもっていた薬品を代わりに返してくれて、化学室に戻っていった。

僕の身体は熱くなり火照っていた。

あのガラスの割れる音は、武藤君がフラスコを割った音で、先生から怒られ少しだけおとなしくなっていた。

凛ちゃんは、呆れた顔をしていた。


僕は、その光景を見ながら、藤澤君の温もりを一人感じていた。


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