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『願いの木』-世界を超えた僕の運命の物語-  作者: シュン
第3.5章:定期演奏会
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部活の引退

定期演奏会が終わり、ほどなくして部活の引退の恒例行事となっているパーティが音楽室で開かれることになった。そのために僕は、学校へ向かう。学校へ向かう途中、響君と出会った。

「おはよう!」

「おはよう!」

「今日で、本当に引退だね。なんだか、寂しいや、、、」

「三年間早かったね。もっと、みんなと弾いていたいけどね、」

「そうだね。今日の後輩に送る部曲は、うまく弾けるかなぁ。定期演奏会の練習ばかりで、少し疎かにしちゃったよー」

三年生は、後輩たちへ向けて、代々ブラスバンド部に続く部曲を演奏することが習わしとなっている。作曲した人は、未だに不明で噂ではブラスバンド部を初めて作った人と言われている。曲は、喜怒哀楽が混じっている感じだった。

「大丈夫だよ。きっと指が覚えていると思うよー」

「だといいんだけど、、」


「よっ!」

凛君と合流する。

「朝から、不安そうだな!」

「うん、部曲がうまく弾けるかなって。」

「大丈夫、俺もやばいからー」

凛君と僕は、一緒に笑う。つられて響君も笑っていた。


「おはようございます。」

姫城部長が話しかけてきた。

「おはようございます。」

「朝から、楽しそうですねー」

「いやぁーーまぁ、、」

詳細を説明すると、

「後輩たちに、恥じないようにしてくださいよ。」

念押しされてしまった。

「言われてるぞ。」

「凛君もだよー。」

また笑いながら、僕たちは、音楽室へ向かう。響君は、部長と何か話し込んでいた。

「何話してたの?」

「内緒。あとでわかるよ!」

笑顔でそう言われ早く音楽室へ行こうと促される。他の三年生は、すでに来ていて、みんなで一斉に音楽室の扉を開けた。


「パーン!!」

クラッカーが鳴り、後輩たちに歓迎される。

「先輩!!今までおつかれさまでした!!!」

みんなに笑顔で言われ、僕は、ほほえましかった。音田先生も来てくれていた。テーブルが並べられ、たくさんのお菓子やジュースやピザまであった。僕たちは、それぞれ後輩たちと楽しく談笑する。響君は、鈴宮君と話していた。


――――――――――――――――――――


「先輩がいなくなるなんて、本当に寂しいです。」

「たまには、顔をだすよー」

「ほんとですか?約束ですよ」

「うん、約束する。」

「やったぁー!」

―――――――――――――――――――――


しばらくして後輩たちとの談笑も終わり、後輩一人一人から寄せ書きと花束をもらった。寄せ書きには、たくさん暖かい言葉が書いてあり、それを見て、本当にいい人に恵まれたと感じる。次は、後輩へ僕たちから送る番となった。部長が話し出す。

「みなさん、今までありがとうございました。今だから言えることですが、最初、部長を任命された時、ワタクシは、不安でした。ですが、なんとかここまでやってこれたのも、みなさんのおかげです。温かい人たちに囲まれたことを幸せに思います。代々続くこの曲を次に繋ぐ後輩たちへ送ります。聞いてください。」

僕たちは、部曲を演奏する。この曲を演奏している時に、多くの思い出が蘇る。あまりにも多い思い出、それは、時には、苦しい思い出もあり、それ以上に嬉しい思い出もあった。たくさんの人の笑顔が思い浮かぶ。曲を弾き続けるごとに、思い出が変わり、この曲が終わる頃、全ての思い出が不思議と僕の胸に入っていた。後輩たちの拍手で音楽室は包まれる。音田先生は、深く頷いていた。拍手がやみ終わると、驚いたことに響君が立ち上がり話し始める。

「高校に入った時、本当のところ、音楽が嫌いでした。それは、いろんな理由があって、けれど、ブラスバンド部に入って、みんなと演奏するにつれて、音楽の楽しさを改めて感じました。みんな、本当にありがとう。これは、僕からのささやかなプレゼントです。」

そう言うと、ピアノの前へ座った。今まで響君が実際にピアノを弾く姿を見たことはなかった。


どんな風に弾くんだろう、、


演奏が始まった。

それは、上手とかいうレベルの演奏ではなかった。これが、ピアノなのかと感じるほどだ。曲名は、知らなかったけれど、その演奏に引き込まれる。あの定期演奏会で聞いた音とは、全く違う。優しくて温かい気持ちになる。僕は、この音にずっと包まれたいと思った。しばらくして演奏が、終わった。


少しの沈黙があり、一斉に拍手が起こる。音田先生も拍手をしていた。


「すげぇーーー。ピアノってこんななのか!!」

凛君が驚いている。

「音宮君の実力なら、当然です。」

部長が微笑む。

「みんな、本当にありがとう!」

響君は笑顔だった。全員の空気が暖かく、僕は、幸せに包まれていた。最後に僕たちは、音楽室で記念撮影をする。こうして、僕たちは、名残り惜しくも音楽室を後にした。


三人で靴箱まで来たところ、鈴宮君が走ってくる。

「音宮先輩、お話があります!」

「どうしたの?」

「できるなら、、、二人でお話したいです。」

鈴宮君が照れているように感じた。


「あっ、俺らは、先で待ってるな!!」

凜君は、僕の背中を押しながら先へ進む。

「あれは、告白だな!」

「えっ?そうなの?」

「愁君は、相変わらずですねー」

「えっーー」


―――――――――――

「先輩、その、今までありがとうございました。」

鈴宮君は、うつむいている。

「うん。こちらこそ、ありがとね。」

「演奏、とても感動しました!」

「ありがとう。」

「えっと、えっと、、、」

鈴宮君は、緊張しているようだ。

「どうしたの?」

僕の顔を真剣に見て言った。


「僕、先輩のことがずっと好きでした。もしよかったら、付き合ってください。」


夏の風が吹き抜ける。


少しの沈黙のあと

「ありがとう。けど、その思いには、応えられない。ごめんね。」

鈴宮君の目から涙が落ちる。

「ほかに、、好きな人がいるんですか?」


黙って頷いた。


「僕、、、先輩に振りむいてもらえるように、もっと頑張ります!!だから、、諦めたくない、、、です、、」

そう言うと今にも泣き崩れそうになる。

「ごめんね、、」

僕は、そっと鈴宮君を抱きしめる。


風が、少しだけ冷たかった。

――――――――――――


しばらくして、響君はやって来た。

「告られたんだろ?」

凛君がニヤニヤしている。

「そうだね、、、」

「やっぱりな!」

「えっ、そうなの?」

僕は、驚く。

「で、付き合うのか?」

「ううん。断ってきた。」

「そっか、、他に好きなやつでもいるのか?」

凛君が尋ねる。

「どうだろう、、」

響君は、微笑んだ。


「よっしゃーー、打ち上げやりますか!!」

凛君が元気よく言う。


僕は、響君の顔を見た。

響君は、僕に優しい眼差しを向ける。


こうして、僕たちは、部活を引退した。


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