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『願いの木』-世界を超えた僕の運命の物語-  作者: シュン
第1章:恋心
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1-3 遠くの彼を見つめて

しばらくして担任の坂木さかき先生が入ってきた。女性の先生で2年生の時に現代文を担当してくれた。普段は温厚な先生だけど、生活指導をしていて生徒の間では意外と怖い先生で有名だった。先生の挨拶をぼんやりと聞きながら、藤澤君を意識していた。こんなに意識をして、これからの高校生活が心配になってしまった。先生の話は、ひと通り終わり、今日は、解散となった。藤澤君は、解散となったと同時に親しげに話をしていた男性とどこかに行ってしまった。

僕は、藤澤君のいない机をぼんやりと眺めていた。

「愁君、部活行く?」

凛ちゃんがふいに話しかけてくる。

「うん、そうだね。今日は、1年生をしっかり勧誘しないとね。」

「新入部員をジャンジャン入れよう!」

凛ちゃんは、にこやかな笑顔で言った。今日は、新入生のための部活の勧誘行事がある。僕たちブラスバンド部は、毎年演奏をして、新入生を勧誘している。

僕たちは、ブラスバンド部の活動場所である音楽室に向かった。音楽室に向かう途中に一人の男性に話しかけられた。

「今年も一緒になれなかったね。残念。」

穏やかな笑顔で話すのは、音宮響おとみや ひびき君だった。響君も僕たちと同じブラスバンド部に所属している。ブラスバンド部は女子が多く、男子として初めて仲良くなったのが響君だった。彼はトランペットを吹いていて、たまに指揮者もしている。僕が言うのもなんだけど、音楽の才能に溢れている人だ。トランペットも高校生から始めたのに、すごいの一言だった。それと、たまに何かを見通しているような目をする人でもあった。

「結局、3年間一緒になれなかったね。」

僕は、残念そうに言う。

「最後ぐらい3人で一緒になりたかったよね。」

凛ちゃんも同意する。部活内では、僕ら3人が一番仲良しだ。

響君が笑顔で言う。

「クラスは違うけど、部活で会えるし、また今度3人でどっかに行こうよ。」

「そうだね。行こう!」

「クラスだけが全てじゃないわよね!」

僕たちは、他愛のない話をしながら音楽室へと向かった。部室に着くと他の部員たちも集まっていた。

「ごきげんよう。」

気品あふれるお嬢様のように話かけてくるのは、姫城彩ひめじょう あやさんだった。姫城さんは、ブラスバンド部の部長である。いつも余裕があり、頼りになる部長だった。僕たちは、部長と少し談笑した。そして、自分が吹くユーフォの準備を始めた。みんなも各自準備に取り掛かっていた。

「みなさん、今日は、一年で一番重要な日ですわ。各自、気を引き締めて演奏してくださいね。」

部長が今日の一連の流れを話す。指揮者は響君で、今流行っている曲を演奏することになっている。僕たちは、楽器を持って校庭に出た。校庭には、新入生が通る道ができていて、両脇に様々な部活の勧誘スペースを作っていた。偶然にもサッカー部の目の前のスペースで演奏することになった。サッカー部は、まだ集まっていないようで、内心、気が気でなかった。

「緊張してる?」

響君が心配そうに話しかけてくる。響君は僕をいつも気にかけてくれる。

「いや、大丈夫だよ、、」

「それならいいけど、リラックスしていこうね。」

「うん、そうだね。」

僕は、リラックスをした。演奏準備が整い、しばらくすると、サッカー部がやってきた。僕の場所からは、サッカー部の勧誘の様子が事細かに見えた。そこには、藤澤君がいて、黒いユニフォームを着ているせいか、いつもよりさらにかっこよかった。気にしない、気にしないと自分に言い聞かせていたけれど、自然と視線が藤澤君の方を向いてしまう。藤澤君の隣で親しげに話をしていた男性もそこにいた。やっぱり同じサッカー部だった。

2人は、とても楽しそうに見えた。


新入生がもうすぐ来る時間となった。演奏を始め、1曲、2曲と順調に終わる。3曲目の演奏に差し掛かった時に、ちょうど新入生が僕たちの前を通り始めた。興味津々に演奏を聴いてくれる人もいた。サッカー部の勧誘も勢いが増していて、藤澤君が、自然と目に入る。目は生き生きとしていた。僕は、いつの間にか、指揮者の響君を見ずに、藤澤君ばかりを見ていた。あっという間に演奏が、終わってしまった。

「ずっとどこ見てたの?」

響君が片付けをしている僕に話しかけてくる。

「いや、その、新入生を、、」

僕は、必死にごまかす。

「ふーん、、、」

何か悟っているような目で僕を見つめる。

「なんだよーー。」

「別にーー。」

響君はどこかに行った。

大丈夫だよね、ばれてないよね、、、

響君からは、僕が何を見てたかまではわかんないもんね

大丈夫だよ、、、

僕は、自分にそう言い聞かせた。


気がつくとまた遠くの藤澤君を見ていた。


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