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最弱賢者の転生者 ~誰も知らない知識で気楽に無双します~  作者: 木嶋隆太


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第三十四話


 俺とヒュアは数日の間、魔物狩りを行っていった。

 基本的には二人でだが、時々オンギルやクライに誘われて三人、あるいは四人で行動することがあった。


 狩った魔物の多くはストーンハンドだ。どうにもこいつを狙う冒険者は少ないため、ギルドから依頼されたのだ。

 本来よりも報酬も高いため、俺たちは好んで狩りまくったというわけだ。

 ヒュアにとっては格上の魔物だしな。


 一週間ほどはそんな生活をしていたのだが、ある日の朝だった。

 起床と同時に伸びをした俺は、ベッドの上で嬉しそうに笑っていたヒュアに気づいた。


「……朝からニコニコだな」


 というか若干怖かったんだが。

 起きた瞬間、隣で神にでも祈りを捧げているようなヒュアに、俺は驚いていた。

 前世の聖女を思い出してしまった。やつは熱心な教徒であり、いつも朝のお祈りは必ず行っていた。

 ぶつぶつと呟いて不気味だった記憶がある。俺が教会関係者を警戒するのは、その聖女にぽろっと俺が転生したことを話したら、求婚されてしまったからだ。


「ロワールさん、私Dランクになっていたんですよ!」

「おっ! よかったな」

「はい! ロワールさんのおかげです!」


 嬉しそうに微笑んでいる。俺のおかげといってもな。

 確かに支援魔法をかけてはいるが、ストーンハンドと戦い続けているのは彼女自身だ。


 それにしても、ヒュアももうDランクか。これで俺の知る前世で強いといわれるランクに到達した。

 最近の動きを見ていても、彼女のそれはそこらの冒険者を遥かに凌駕しているのがわかる。

 オンギルやクライも一目置いていた。そのたびに、よくその才能に気づいたといわれたものだ。


 今のヒュアなら、野良のパーティーでも引っ張りだこではないだろうか?

 ランクアップは羨ましいな。

 俺はまだCランクのままだ。

 ストーンハンドは俺にとってランクの低い魔物だから、仕方ないのだが。


「それじゃあ、Dランクの能力を見せてもらおうかね」

「はい、任せてください!」


 朝食の後、俺たちは森へと向かった。

 まずはストーンハンドだ。毎日のように繰り返していたおかげで、ヒュアも流れはよく分かっている。

 俺が探知し、発見次第、ヒュアが斬りかかる。ストーンハンドが地面から掴みかかってくるが、すでにヒュアはそれをかわすのも慣れていた。


 今まで五回ほど殴る必要があったのだが、今回は三回だった。

 ……ランクアップの影響がもろに出ているな。


「どうですかロワールさん!」

「ああ、凄い凄い」

「ふふんっ! そうでしょう!」


 ……子ども扱いするな、とたびたび怒る彼女だが、こういう反応を見せられるとな。

 俺が戦士の時代に育てた義娘が十歳くらいに見せた反応と同じだ。


「それじゃあ、今日はもう少し奥でCランク相当の魔物と戦ってみるか?」

「そうですね! 行きましょうか!」


 俺も負けていられない。これからはCランクの魔物と戦ってランクアップを目指そう。

 鼻歌混じりにヒュアが歩いていく。

 ヒュアの成長はランクアップだけではない。

 ヒュアは俺のBランク支援魔法を三つ受けられるようになっている。

 

 すでに支援魔法を受けたヒュアの身体能力は、通常時の俺を超えている。

 あとは装備品だな。


 今のヒュアはFランク冒険者のときと同じものだ。

 剣だけは一度新調したのだが、弓に関してはほとんど使っていないためそのままだった。 

 前世の剣弓士を思い出し、今後の方針を考えていく。


「魔力矢のスキルは覚えたか?」

「はい、Dランクにあがって覚えました。これってどんなスキルなんですか?」

「魔力を消費して矢を作るんだ。慣れている人は、それで属性の矢を作って魔法と似たようなことができるな」

「わ! そうなんですね! でも、私弓はほとんど使わないんですよね……弓の扱いもそんなに得意じゃないですし」

「エルフって確か成人するまでに弓の練習をするんじゃないのか?」

「そうですよっ。ロワールさんの時代もそうなんですね!」

「ああ。それで弓の試験はどうだったんだ? 試験を突破しないとエルフの里から出られないって聞いたことがあるが……」

「ダメでした! エルフ失格で出られました!」

「そうか……」


 ヒュアに弓を扱わせるのはやめよう。なんなら、背負っているその弓も今すぐ捨ててほしい。

 

「クロスボウっていうのは聞いたことあるか?」

「なんですかそれは……聞いたことないですね」

「弓に似たような武器なんだが、俺の時代にはあってな」

「……そうなんですね。私知らないですね」

「そうか……」


 俺が『賢者』として魔道具製作を覚えれば、彼女に造ってやることもできるんだがな。

 しばらく、中距離攻撃は難しそうだな。

 そんな話をしながら、さらに奥地へと向かう。

 出現したのは、フォレストウルフという魔物だ。


 ギルドでも話題になっていた魔物だな。これが狩れるようになれば、この森では安全に活動ができるらしい。

 といっても、今町に残っているメンバーでは、この魔物を狩れる人間はそうはいない。


 動きが素早くストーンハンドとは比べ物にならない魔物だ。

 それでも、俺の支援魔法を受けたヒュアなら問題ない相手だ。

 フォレストウルフの速度を上回り、ヒュアが斬りつけていく。逃げ道をふさぐように俺が魔法を放てば、完封できた。


 ここでの狩りも問題ないな。


「今後はここで魔物狩りを行いますか?」

「そのほうがいいだろう。ヒュアも余裕そうだし」

「もちろんですっ! なるべく自分にとって安全に、簡単に狩れる場所で経験値を稼ぐんですよね!」

「その通りだ。それで、成長したら自分の能力を見直しながら鍛錬を積む。この繰り返しだな」


 しばらく、フォレストウルフとの戦闘を繰り返していくとサーチ魔法に別の大きな魔力がひっかかった。

 俺が足を止めると、ヒュアが首を傾げた。

 

「どうしたんですか?」

「何か巨大な魔物と人間が戦闘を行っているな……下手したら、主魔石級の魔物かもしれないな」

「え? また主魔石を持っている魔物ですか!? ダークパンサーがまだいるんですかね?」


 ……だったら、面倒だな。

 以前より成長しているから、俺たちでも倒せるかもしれないが、できれば遭遇したくない魔物だ。


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