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最弱賢者の転生者 ~誰も知らない知識で気楽に無双します~  作者: 木嶋隆太


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第二十五話


「……ねぇ、ロワール」

「なんだ?」

「なんで、キミはまったく怯えていないんだい?」


 ……また、その質問か。


「怯えたって仕方ないだろ」

「そ、そうだけど……」


 怯えたところで、やることは変わらないからな。

 拠点についた俺は、ダークパンサーをB・サーチで追いかけながら、どう戦うかを考えていた。


 ダークパンサーの動きはやはり素早い。

 あれに対応するには、職業補正も兼ねたクライの速剣士に頼るのが一番だ。

 あとは、ヒュアも俺の支援魔法ありで十分対応できるだろう。


 それに、敵の攻撃をいくつか見れたのも良かった。

 戦闘は情報戦だからな。


「なあ、ロワール。勝てる見込みはあるのかい?」


 隣に並んだクライが不安そうに見てきた。

 そんな彼に、俺ははっきりと頷いた。


「なんとかなると思うな」

「ほ、本当かい」


 まあ、確信はしていない。

 ただ、口でなら適当言っても問題ない。

 特にいま、クライが求めている言葉はそういうものだしな。


「作戦が決まれば、奴に苦戦することはない。そのためにも、特にオンギルとクライの協力が必要になる。頼むぞ、クライ」

「お、おえ……」

「おまえは優秀な冒険者なんだ。ダークパンサーと対面して、怯えていたとはいえそれでも最後まで一緒に様子を確認した。たぶん他の冒険者だったら逃げ出してるだろうさ」


 クライをその気にさせるための言葉だ。

 これも支援魔法みたいなものだ。

 何も魔法をかけるだけが仕事じゃない。


 前衛の人間に気持ちよく戦わせるのもその役目だ。

 クライがそれなりに俺を信用していると判断して、あえてそう言った。

 クライはしばらく考えるように俯いたあと、顔をあげた。

 引き締まった顔の彼は、ようやく決意を固めたように見えた。


「結局、戦わないといけないんだよね」

「そうだな」

「それなら、僕も……僕なりに頑張るよ。こ、怖いけど、さ」

「そうか。ありがとな」


 クライに改めてそう伝えてからギルドへと向かった。



 ○



 ギルドの中庭。

 訓練場として開放されているそこではダークパンサー討伐戦に参加する冒険者たちの姿があった。

 支援魔法の制御を行っている彼らは、どうにも苦戦シている様子だった。


「調子はどうだ?」


 キャッツに声をかけると、キャッツがにゃはは、と笑った。


「まだまだ、完全制御まではできていない感じだにゃー」

「そっか。ま、仕方ない。こっちはダークパンサーを確認してきたが、なかなかの迫力だったな」

「やっぱり、そうなのかにゃ?」

「ああ、情報を共有しておきたいから全員を集めてくれ」

「わかったにゃ」


 キャッツが全員を呼びにいく。

 ダークパンサーの攻撃パターンだけでも教えておく必要があるからな。

 この場で実演させるために、俺は人形を用意することにした。

 魔法使いのゴーレム作成の魔法だ。


 キャッツも試験用に作成していたものだが、俺のゴーレム作成はそこまで高性能な魔法ではない。

 俺はダークパンサーとゴブリン五体を作成する。

 すべて土でできたものだ。大きさは片手ほどの小さなもの。実際の戦闘の状況を見せるには、このくらいのほうがちょうどいい。


「おまえ、そんな器用なものまで作れるのか?」


 覗きこんできたオンギルが感心したように見ている。


「習得した魔法をそのまま使用しているだけだがな」

「オンギル、Bランク支援はどうだ?」

「中々だな。体への負担がでかいが、まあ何とかなっているな。それにしてもすげぇなこれ。一度経験すると、この支援魔法なしの生活が考えられないぜ」


 クライとオンギルも、道中含め支援魔法の制御は行っているが、どちらもBランクまでは問題なさそうだ。

 ……ま、今回の作戦の要はこの二人だ。

 クライとオンギルが、Bランクまで制御してくれているため俺はそれなりに気楽でいられた。


「みんな集まったにゃー」


 キャッツが言うとおり、冒険者たちが集まっていた。

 Cランク冒険者たちは当然として、ヒュアもここにいる。

 皆、真剣な眼差しでこちらを見ていた。


「それじゃあさっそく、ダークパンサーに関しての説明を行っていく。わからないことがあったらどんどん質問してくれ」


 そう前置きをしてから、俺は両手を叩いた。

 俺の背後に、実際のダークパンサーを作り出す。すると、皆が驚いたようにそちらを見る。


「い、一瞬でゴーレムを作成したのかにゃ!?」

「ああ、実際のサイズはこんな感じだな」


 キャッツも驚いていたが、それは冒険者たちもだ。


「……相変わらずすげぇな」

「ああ……っ、彼についていけば、間違いなくダークパンサーにだって勝てるっ」


 Cランク冒険者たちが、俺の魔法を見て感心している。

 信頼を集められるのなら、こういった見せる魔法はいくらでも使えるな。


 ダークパンサーのサイズを確認してもらったところで、ゴーレムは消す。所詮、俺のゴーレムは見掛け倒しだからな。

 手元に作成した人形に指示を出し、ダークパンサーとゴブリンの戦闘をできる限り再現していく。


 さすがに俺もすべてを記憶しているわけではないからだ。

 多少、クライとオンギルに補足してもらいながら、実際の戦闘を見てもらった。


「……やべぇな」

「チビパンサーを生み出していたのが、ダークパンサーってことか」

「戦闘中に無限に生み出されたら、数の暴力でどうしようもなくなるよな……」


 冒険者たちの表情が険しくなっていく。

 俺はそこでゴーレムの操作をやめると、キャッツが首をかしげた。


「それらの対策はどうするのにゃ?」

「基本はCランク冒険者のパーティーで、チビパンサーを足止めしてもらう。連携もそのほうが取りやすいだろうし。それで、残りの五人でダークパンサーと戦っていくつもりだ」


 そういうとほっとしたようにCランク冒険者たちが息を吐く。

 いくら訓練をしたとはいえ、そりゃあ不安だろうな


「にゃるほど……」

「ただ、魔法使いである俺とキャッツはその場の状況に合わせて、どっちに対応するかを考えていく必要があるな。俺は基本的にダークパンサーを相手する予定だから、キャッツにはCランク冒険者の援護に回ってもらう予定だ。そのあたりは、俺とキャッツで相談しながらやっていこう」

「わかったにゃ。ダークパンサーの情報はこのくらいかにゃ?」

「そうだな。あとは、みんなには支援魔法の制御を行ってもらう。俺はずっとサーチでダークパンサーの様子を伺っているから、気楽にやっててくれ」

 

 そう伝えてから、もう一度冒険者たちに支援魔法の制御訓練を再開してもらう。

 全員を遠目にしながら、俺は魔力を練り上げていく。

 まだまだ魔力に余裕はあるが、さすがにいつもよりは減っているな。

 それでも、今日一日使い続けても問題はないだろう。


「ちょっと、いいかにゃ?」


 俺が一人でいると、キャッツがやってきて隣に座った。


「何の用事だ?」

「……まずはありがとにゃ。危険な情報収集役を申し出てくれて、凄い助かったにゃ」


 ぺこり、とキャッツが頭を下げてくる。


「感謝はまだ早い。ダークパンサーはまだ倒してないぞ?」

「……そうだけど、私も色々と不安あったからにゃ。だいぶ、余裕が出てきたのにゃ」

「それならよかった」


 そういうと、キャッツが意外そうにこちらを見てきた。


「……気づいていたのかにゃ?」

「わかりやすかったぞ」

「そうかにゃー、結構隠してると思ったんだけどにゃー。……私、サブリーダーだけど最近あがったばっかりなのにゃ。将来有望視されてるーとかで、そういったもの込みでの昇格だったにゃ」

「なるほどな」

「自分ではそれなりにできると思ったのにゃけど……実際、こういう危機に立たされたとき、どうしたらいいのか分からなかったのにゃ。早く決断出さないとーって思ってもそれが正しいかわからなかったし……だから、感謝してるにゃ」

「それだったらよかった。わりと出しゃばってしまったし、あとで怒られるんじゃないかと思ってた」

「そんなことないにゃー」


 キャッツの表情も柔らかくなっていった。


「どうしたのにゃ?」

「そろそろ、準備開始だ」

「……わかったのにゃ」


 ダークパンサーの魔力がこの町へと向かって、歩き出した。


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