【番外編】卒業パーティー2(レオンハルト視点)
ブックマーク等ありがとうございます。
前話の続きです。
決闘に勝てば、アリアを連れて帰る。
そう宣言すれば、この後すぐに彼女を連れ去る名目が出来る。
クリストファーなど決闘する価値もない、そう断言出来るが、アリアを手に入れる為なら話は別だ。魔法であっても、剣を交えたとしても、楽勝だろう。
アリアは実に迷惑そうな顔をしたが、構わず、防御空間に入る。
アリアの空間防御魔法は、実に良く出来ているよなぁと、いつもながら感心してしまう。これは絶対初見では破れないだろう。
アリアは俺を見据える。
「あら、レオン様、お国に婚約者がいらっしゃるのではなくって?」
エリスの後釜だと吹聴している令嬢の事か?
全く幾ら否定しても、アリアは信じてくれない。
「あれは向こうが勝手に言っているだけだ。決まった相手はいない。だからアリア、結婚しよう!」
遠回しに言っても、アリアには伝わらない。
いや、ストレートに伝えても、伝わっていない。
一体どうしてだ?俺の何が悪いんだ?
「わたくしもレオン様とご一緒できるのは楽しそうだと思いますわ。でも、わたくしはこの様な事を致しましたので、きっと廃嫡になり、貴族の娘では無くなりますわ。だから婚約者なんて無理ですわ。」
ワザと弱々しく見せているが、アリアは楽しんでいるな。こんなところが一緒に居て楽しいのだが。
彼女はわかっているのだろうか?
「悪いのはそこにいる馬鹿の方だ。身分が必要なら、この国でも奪い取ってから帰るか?」
と、腹黒い笑いを浮かべてみる。
クリストファーが次の王に立てば、間違いなく攻め落とすのは簡単だろう。
「レオン様が仰ると、冗談に聞こえませんから。」
彼女はため息を吐きながら、呆れた様に俺を見る。
「冗談じゃないぞ。好きな女の為に一国手に入れて何が悪い!」
俺はアリアを見据える。
彼女の空色の瞳は、俺を射抜く様に見ている。俺の本心を探ろうとしている様に。
「アリアの為なら、それぐらい苦ではないぞ。お前を連れて帰れば、一万の兵以上の価値がある。私も両親からお前を奪い取って帰ってこいと言われ、面白くも無いアカデミーにわざわざ入学したのだから、お前さえいれば構わない。」
「あら、レオン様もわたくしの力をご存知でしたの?どこから漏れたのか、ゆっくり聞く必要がありそうですね。貴方もやっぱりこの力が必要でしたの?それは婚約者としてではなく、軍人としての勧誘ではなくて?」
と笑いながら聞いてくる。
確かに彼女は防御魔法しか、見せてくれてはいない。本当の彼女の力はそれ以上のものだろう。
だが、俺は彼女の力が欲しいのではなく、彼女自身が欲しい。力など無くとも構わない。
だから、俺の両親も歓迎している、廃嫡されても問題ないと言いたかったのだが…
俺は言葉を間違ったか?
「お前はさっき、俺がお前の事を好きだと言ったのを、聞いていなかったのか?」
「いえ、それは私の力が好きと言う事ではなくって?」
やっぱり誤解されていたか。
ガッカリするのは後回しにして、今はアリアを口説かないといけないと、気持ちを持ち直す。
「お前自身が欲しい。お前と一緒にいると楽しいと思うぞ。力が欲しい訳ではない。力なら私も充分に持っている。私と手合わせできる相手もそうそういまいし、その時のお前は生き生きとしていて、楽しそうにしている。そんなお前と一緒に国を守りたいと思うのは、自然な事だろう?」
最初に力目的で近付いたのが、間違いだったのか?
だが、アリアと接して、彼女の力はどうでも良く、彼女自身に側に居て欲しくなった。
今までも、俺の気持ちは伝えていた筈だが。
「やっぱり軍へのオファーですか。」
と、彼女は首を傾げる。
「普段のお前も、力に傲る事も無く、クラスメイトだけでなく、下級生に対しても心配りができる。皆から慕われる。知識も自制心も将来の王妃として充分だ。お前の全てに私の心が持って行かれた。私の妃となってくれ。そこのボンクラとは婚約解消したんだろう?」
「まあ、嬉しいお申込みですが、簡単に「はい」という訳にはいきませんわ。たった今ですのよ。長年の婚約者から婚約破棄されたのは。傷心の乙女心にご配慮くださいませ。」
アリアは馬鹿王子を見ながら、悲しそうな顔をするが、演技だな。間違いなく。
やっぱりアリアとのやり取りは面白い。
俺は口角を上げる。
「そうか。乙女心を解さなくて申し訳ないが、おれには喜んでいる様にしか見えないが。」
俺がニヤリと笑うと、彼女も口角を上げた。
「あら、バレました?こんなバカの相手をしなくて済むのが嬉しくって。」
「馬鹿馬鹿言うな!」とクリストファーが叫ぶ。
横から聞こえてきた声に振り返る。
「「馬鹿だから」」と二人の声が重なる。
すっかり存在を忘れていたな。
全く鬱陶しい王子だ。
「レオン様、これはわたくしとクリストファー殿下の問題ですわ。隣国の王太子殿下を巻き込む訳にはいきません。婚約解消が無事に成立しましたら、わたくしは、この件できっと廃嫡されると思いますわ。なので平民として一人で自由に生きますわ。」
と彼女はニコリと微笑む。
平民として生きると堂々と宣言するアリアは、全く困った様子はない。市井で暮らす大変さを理解していないのか?
「貴族のご令嬢が市井に下って、一人で生きて行く事は難しいだろう?かと言って、国内の貴族に嫁いだとしても、この馬鹿王子が目に入るだろう?ならば我が国に来るのが一番だ。」
「あら、誰が市井で生きていけないのかしら?わたくしを誰だと思って?」
「公爵令嬢だろう?」
訝しげに答えると、彼女のニコリと笑う。
「ふふふ…肩書きはそれだけではなくてよ。」
「ハハハ!やっぱりお前は面白い!」
きっと彼女は生きる術を沢山持っているのだろう。
魔法力だけでも、十分生きていける。
そう思い当たれば、おかしくなった。
他国の王太子相手に、堂々と物申し、自分の思いを突き進んでいく。
ああ、やっぱりアリアに側にいて欲しい。
彼女は俺の機嫌を伺う事はない。
俺が間違った時には、遠慮なく正してくれるだろう。俺が迷った時には、一緒に考えてくれるだろう。
俺がこれから歩む道に、彼女が居てくれたら、どんなにいいだろう。
クリストファーには勿体ない。
実力をわからせてやろう。少し脅せば、自分の非を認める筈だ。それでダメなら、潰して仕舞えばいい。
俺は笑いながら、剣の柄に手をかけようとした時、外から叫び声が聞こえた。
「待て!」
振り返るとクロードとアリアの兄がいた。
チッと内心舌打ちしてしまう。
クロードがアリアの側まで来て、頭を下げた。
折角いい所だったのに、邪魔しやがって。
王子達もいないこの場は俺にとって、チャンスだった。
クロードは義弟の愚行を謝罪し、アリアもそれを受け入れている。
そこまではいい。だが、クロードはアリアに求婚した。一体何を考えている?
俺が求婚したから、対抗したのか?
この国がアリアの力を手放す気が無いという表明か。
彼がアリアの手の甲にキスを落とす。
それだけで俺は苛立ちを感じた。俺のアリアに触るなと。
それだけでなく、決闘も彼が代わると言う。
アリアは断っているが、クロードは引かない。
尚且つ、俺の求婚をどうするのかと、横槍を入れてくる。
「レオン様の求婚はいつもの冗談ですわ。わたくしが剣を取らなくとも良いように庇って下さったのですわ。でも、わたくしは庇ってもらうほど弱くはありませんわ。」
全く俺の気持ちが届いていない事に苦笑しながら、俺はアリアの肩に手を置き、クロードから引き離す。
クロードを一瞬睨んだあと、彼女の手を取る。
「アリア、冗談じゃないよ。本気だ。婚約破棄になったら連れて帰っても構わないだろう?」
そう言って、彼女の手の甲にキスを落としながら、追跡魔法をかける。以前かけていた魔法が解術されていたからだ。
「消毒」
俺は彼女の耳元で囁く。
彼女の耳が赤くなった。可愛い。
昨日の涙といい、強がっている時との差が…
アリアに見惚れていると、邪魔が入った。
「決闘に勝てば、アリアナ嬢を貰い受ける事ができるのであれば、私もこの勝負、加えて頂きましょう!」
「ならば私も。」
「いや、私こそアリアナ嬢に相応しい!」
ヨハネス、イスマエル、ルーカスが名乗りを挙げてきた。
アイツらも気付いたか。邪魔されない様、クリストファーが俺たちを足止めしようとした事を。
誰がクリストファーの相手をするかを揉めている間に、アリアはそれらを断り、クリストファーと二人きりの空間防御魔法を作り、彼と向き合っていた。
あくまでも自分でケリをつける気か。
邪魔は出来ないか。
いざとなれば加勢するかと、見守る。
彼女の剣捌きは見事だった。
魔法力を使わず、ドレス姿であそこまで剣が振るえるなど、考えられない。
だからこそ、アリアだと思う。
見惚れるほど綺麗な剣捌きは、剣舞を見ている様だった。
服だけを切り裂くなど、子供の喧嘩で済ませるつもりなのだろう。
呆然としているクリストファーに、王族としての心得を説き、華麗に挨拶をして、消えた。
転移魔法か?
クロードが追いかけて行くのと同時に、俺も追う。
さっきキスを落としながら、追跡魔法をかけておいて正解だったな。
着いたのは、民家なのだろうか?
貴族の令嬢の部屋にしては、小さめだが、小さな机とベッドが置かれたセンスの良い部屋に、アリアが背を向けていた。
俺の前には、クロードとアリアの兄がいた。
二人は怒りが収まらない様だ。
「へー。ここがアリアの部屋かぁ。」
俺がそう言えば、アリアがゼンマイ仕掛けの人形の様に、振り向く。
俺が口角を上げると、彼女は叫びながら、近くのドアの中へ逃げ込んだ。
クロード達が一緒にいる為、思う様には動けない。
彼はどう動く?
この場にいないイスマエルやルーカスの動きも気になる。
俺はアリアが逃げ込んだドアの前に陣取る二人を見ながら、アリアの次の転移先を考えた。
さあ、アリア、どこへ逃げる?
逃げ出すその時が、チャンスだな。
逃さない、そう扉の向こうにいるアリアに向かい、呟いた。
お読み頂き、ありがとうございました。
第3話、レオンハルトの発言部分を一部変更しました。「虫除け」→「向こうが勝手に言っている」
次回はその後を少し書きたいと思います。
少し時間がかかりそうなので、不定期更新とさせて頂きます。
お付き合い頂けますと、嬉しいです。




