表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/120

【番外編】卒業パーティー1(レオンハルト視点)

ブックマーク、評価等、ありがとうございます。

大変な時期だけに、とても励みになります。

誤字報告もありがとうございました。反省しています。

卒業パーティー前と始まりのレオンハルト視点です。

 いよいよ明日が卒業パーティーだ。


 結局、アリアを手に入れる決定的な手段を取れず、手を(こまね)いたまま、明日を迎えてしまう。


 だが、明日アリアが婚約破棄されれば、その時がチャンスだ。


 そう思いながら、この場にいるライバル達を見渡す。


 イスマエル、ルーカス、ヨハネスだ。

 皆、近隣の王子で、アリアを狙っている。


 だがアリアを守る為、今だけ休戦協定を結び、明日の打ち合わせとして、四人で集まっているのだが…


 突如、護衛として付けていた者から、賊がアリアのいる寮に出たと連絡が入る。

 慌てて、アリアの元へ駆け付けようと腰を上げたら、なんと、四人とも同じ様な連絡を受けていたらしい。


 全く考える事は一緒かよ。お前ら。

 ルーカスが一緒に連れて行けと言うので、転移を一緒にした。

 イスマエルもヨハネスも転移して、賊の前に立つ。

 賊は屋根の上まで逃げ、4人で6人の賊を片付けた。

 ルーカスも屋根の上でも難なく賊を倒す。

 こいつ魔法力なかったよなぁ。身体能力だけでこれだけ動けるのか?

 しかも、賊が落ちた先に、アリアを見つけ、真っ先に彼女の元へ行きやがった。

 本当に魔法力ないのか?


 アリアには怖がらせてはいけないと考え、知らせないつもりだったのだが。


 俺たちも賊を片付けた後、アリアの元へ、駆け付ける。


 アリアは驚きで目を丸くしながら、呆れている。


「それで、どなたがこの状況をご説明下さいますのかしら?」


 確かにこんな時間に、女子寮のバルコニーに男子が4人もいれば、問題になる。

 叫びもせず、堂々としているアリアも大概大物だとは思うが。


 場所を移し、アリアに事情を説明した。

 彼女は自分の身より、我々の身を案じ、叱責する。

 アリアは必要だと判断したら、遠慮なくものを言う。王子だろうが、関係ない。

 相変わらずのアリアに、皆苦笑しながら、言い訳を口にしていた。

 賊の心当たりがあるが、クリストファーでは無いと言うので、庇うのかと問えば、クリストファー自身にそんな能力はないと言い切った。

 クリストファーに責任を取らせれば、国政を混乱させることになる。それは望んでいないと。

 賊に怯える事無く、豪胆なご令嬢だとは思っていたが、一体何処まで俺をヤキモキさせるのか。


 婚約解消後を聞けば、彼女は自分は仕事に生きていくと言う。

 俺たちは一瞬言葉を失った。

 彼女ならやりかねない、皆、そんな苦虫を噛み潰したような顔をした。


 アリアはそんな俺たちを見渡した後、そっと立ち上がり、ソファーの横に移動した。


「明日が卒業式ですが、忙しくなりそうですので、今、この場で殿下方にお礼を申し上げます。この一年、大変お世話になりました。ご一緒させて頂き、楽しかったですわ。また、明日ご迷惑をお掛けするかもしれません。お詫び申し上げますわ。そして、殿下方の今後のご活躍とご健勝を、この世界のどこかでお祈り致しております。」


 明日の卒業以降、もう二度と会う事がない、そう確信している様な挨拶だった。


 そんな事は許せない。

 アリアが自分の前から消えるなど。


 皆驚き、慌てて自国に誘い出す。

 アリアは呆れた様な表情を見せた後、微笑みながら、一筋の涙を流した。


 今まで、彼女が涙を見せる事などなかったのだが…

 慌てて駆け寄り、声をかける。

 反対の隣にはイスマエルがそっと寄り添い、手巾を差し出していた。

 ルーカスが背に立ち、アリアの肩に手を置いている。

 ヨハネスは斜め前に屈み、心配そうに覗きこんでいる。


 彼女は泣き笑いの顔のまま、冗談とも本気とも取れる言葉を紡ぐ。


「殿下方があまりにも変わらないので。最後にこの様な機会が持てました事を嬉しく思いますわ。」


「最後とは言わないで欲しい。卒業しても、また会おう。必ず。」


 そう言えば、彼女はまた涙した。


 今の姿が本当の彼女なのだろう。

 年相応の女の子だ。

 今までの彼女はどこか張り詰めていたのでは無いか。


 この時ほど、自分の無力さを実感したと同時に、彼女を護りたいと思った事はなかった。


 多分、同席した皆も同じ思いだったのだろう。

 アリア、俺だけの時に、その涙は見せて欲しかった。

 そう心内で呟いた。




 卒業式の朝は何事も無く始まった。

 カフェテリアで朝食を取っていたら、ヨハネスがアリアを呼び出すのが見えた。


 あの大人しい王子が、今頃何故アリアに接触するのか?4人の王子達の中では一番控えめにアリアに接していたのだが。


 気になり、後を付けると、アリアに何か差し出している。

 ああ、最期に贈り物を渡したかったのか。

 彼の性格であれば、無理矢理攫ったりはしないだろう。俺と違って。

 二人に気付かれないようにその場を離れた。


 午前の卒業式は何事も無く終わった。


 午後からが、卒業パーティーだ。


 間違いなく、クリストファーはこの場面でアリアを貶めようとするだろう。


 俺の護衛にも、アリアの身辺に気を付ける様に伝え、身の危険があれば、遠慮なく敵を倒していいと伝えている。我が国もこの国に負けないぐらい大国だ。しかも軍事力は我が国の方が優っているだろう。


 後はイベントが終わったら、すぐに彼女を手に入れ、我が国に連れて帰る。


 そう心に誓い、卒業パーティーの会場へ向かうが、途中、下級生と見られる生徒から、声をかけられる。


「レオンハルト殿下、パーティーの始まりまで時間がありますので、他国の王家の皆様には特別控室を用意しております。ご案内いたしますので、こちらに。」


 滑らかに話しているが、睨みつけると、目が泳いでいる。何を企んでいる?


「そんな話は聞いていないが?お前は誰の指図を受けている?」


「先生からの指示です。」


 彼はそう言うが、動揺を隠せていない。

 アリアの味方を減らす為に、力のある他国の王族の会場入りを遅らせるつもりか?


「悪いが約束があってな。会場へ直接向かう。邪魔するな。」


 そう言って睨みつけると、

「ひぃ!」と飛び退く。


 小者は無視して、パーティー会場へ足を踏み入れると、クリストファーの叫ぶ声がした。


「 アリアナ-ファーガソン、お前との婚約を破棄する!」


 会場に入り、周囲を見渡す。


 奥にクリストファーとカーラが寄り添い、周囲に取り巻き達が囲んでいる。


 間を空けて、アリアが対峙し、その背後に彼女の味方であろう生徒達が見守っている。


 丁度半々になるぐらいか?

 これがこの国の勢力図と見てもいいか。


 アリアから手出しするなと、言われていたので、アリア側の柱にもたれ、静観する。


 クリストファーがアリアの罪状を(あげつら)うと、アリアが反撃を始めた。

 まぁ、クリストファーがどれだけ馬鹿なのか露呈した様なものだ。

 アリアは予めこうなる事を見越していた様に、自分の無実を証拠を持って証明していく。

 余りにも痛快だった。俺も一言加勢する。


 しかし、魔法具とはいえ、効果的に使っているなと感心する。同じ歳の女子だよな?

 あれよあれよという間に、アリアは自分の無罪を証明し、カーラの虚言を立証した。

 手腕は見事だった。


 しかし、話はそれだけで終わらなかった。

 納得していないクリストファーが更に難癖をつけようとすると、アリアが魔法を使い、腰巾着とカーラを地面に伏せさせた。


 怒り狂ったクリストファーが衛兵にアリアを捕らえる様命じる。

 マズいと思い、アリアの元へ行こうとしたが、その間にアリアが衛兵の足も止めた。


 一体何をした?


 俺は足を止め、アリアを見据える。アリアは俺のことなど眼中にも入れず、どんどんカーラの虚言を暴いていく。

 それだけでは、気が済まなかった様で、とうとうクリストファーに決闘を申し込んでしまう。


 防御魔法が得意だと言っても、力は及ばないだろう?

 何無謀な事しているのか?


 ここらが潮時か?静観しているのは。


「おい!その決闘、俺にやらせろ!楽しそうだ。」

 そう言って、アリアの横に出た。


 そして、堂々と宣言する。


「勝てばお前を婚約者として、我が国に連れて帰る。いいだろう?アリア?」  








お読み頂き、ありがとうございました。


レオンハルト視点で一話にまとめたかったのですが、長くなってしまい、二話にしました。

後半は明日か明後日には更新出来ると思います。

お付き合い頂けますと幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=158316304&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ