【番外編】卒業パーティー1(レオンハルト視点)
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大変な時期だけに、とても励みになります。
誤字報告もありがとうございました。反省しています。
卒業パーティー前と始まりのレオンハルト視点です。
いよいよ明日が卒業パーティーだ。
結局、アリアを手に入れる決定的な手段を取れず、手を拱いたまま、明日を迎えてしまう。
だが、明日アリアが婚約破棄されれば、その時がチャンスだ。
そう思いながら、この場にいるライバル達を見渡す。
イスマエル、ルーカス、ヨハネスだ。
皆、近隣の王子で、アリアを狙っている。
だがアリアを守る為、今だけ休戦協定を結び、明日の打ち合わせとして、四人で集まっているのだが…
突如、護衛として付けていた者から、賊がアリアのいる寮に出たと連絡が入る。
慌てて、アリアの元へ駆け付けようと腰を上げたら、なんと、四人とも同じ様な連絡を受けていたらしい。
全く考える事は一緒かよ。お前ら。
ルーカスが一緒に連れて行けと言うので、転移を一緒にした。
イスマエルもヨハネスも転移して、賊の前に立つ。
賊は屋根の上まで逃げ、4人で6人の賊を片付けた。
ルーカスも屋根の上でも難なく賊を倒す。
こいつ魔法力なかったよなぁ。身体能力だけでこれだけ動けるのか?
しかも、賊が落ちた先に、アリアを見つけ、真っ先に彼女の元へ行きやがった。
本当に魔法力ないのか?
アリアには怖がらせてはいけないと考え、知らせないつもりだったのだが。
俺たちも賊を片付けた後、アリアの元へ、駆け付ける。
アリアは驚きで目を丸くしながら、呆れている。
「それで、どなたがこの状況をご説明下さいますのかしら?」
確かにこんな時間に、女子寮のバルコニーに男子が4人もいれば、問題になる。
叫びもせず、堂々としているアリアも大概大物だとは思うが。
場所を移し、アリアに事情を説明した。
彼女は自分の身より、我々の身を案じ、叱責する。
アリアは必要だと判断したら、遠慮なくものを言う。王子だろうが、関係ない。
相変わらずのアリアに、皆苦笑しながら、言い訳を口にしていた。
賊の心当たりがあるが、クリストファーでは無いと言うので、庇うのかと問えば、クリストファー自身にそんな能力はないと言い切った。
クリストファーに責任を取らせれば、国政を混乱させることになる。それは望んでいないと。
賊に怯える事無く、豪胆なご令嬢だとは思っていたが、一体何処まで俺をヤキモキさせるのか。
婚約解消後を聞けば、彼女は自分は仕事に生きていくと言う。
俺たちは一瞬言葉を失った。
彼女ならやりかねない、皆、そんな苦虫を噛み潰したような顔をした。
アリアはそんな俺たちを見渡した後、そっと立ち上がり、ソファーの横に移動した。
「明日が卒業式ですが、忙しくなりそうですので、今、この場で殿下方にお礼を申し上げます。この一年、大変お世話になりました。ご一緒させて頂き、楽しかったですわ。また、明日ご迷惑をお掛けするかもしれません。お詫び申し上げますわ。そして、殿下方の今後のご活躍とご健勝を、この世界のどこかでお祈り致しております。」
明日の卒業以降、もう二度と会う事がない、そう確信している様な挨拶だった。
そんな事は許せない。
アリアが自分の前から消えるなど。
皆驚き、慌てて自国に誘い出す。
アリアは呆れた様な表情を見せた後、微笑みながら、一筋の涙を流した。
今まで、彼女が涙を見せる事などなかったのだが…
慌てて駆け寄り、声をかける。
反対の隣にはイスマエルがそっと寄り添い、手巾を差し出していた。
ルーカスが背に立ち、アリアの肩に手を置いている。
ヨハネスは斜め前に屈み、心配そうに覗きこんでいる。
彼女は泣き笑いの顔のまま、冗談とも本気とも取れる言葉を紡ぐ。
「殿下方があまりにも変わらないので。最後にこの様な機会が持てました事を嬉しく思いますわ。」
「最後とは言わないで欲しい。卒業しても、また会おう。必ず。」
そう言えば、彼女はまた涙した。
今の姿が本当の彼女なのだろう。
年相応の女の子だ。
今までの彼女はどこか張り詰めていたのでは無いか。
この時ほど、自分の無力さを実感したと同時に、彼女を護りたいと思った事はなかった。
多分、同席した皆も同じ思いだったのだろう。
アリア、俺だけの時に、その涙は見せて欲しかった。
そう心内で呟いた。
卒業式の朝は何事も無く始まった。
カフェテリアで朝食を取っていたら、ヨハネスがアリアを呼び出すのが見えた。
あの大人しい王子が、今頃何故アリアに接触するのか?4人の王子達の中では一番控えめにアリアに接していたのだが。
気になり、後を付けると、アリアに何か差し出している。
ああ、最期に贈り物を渡したかったのか。
彼の性格であれば、無理矢理攫ったりはしないだろう。俺と違って。
二人に気付かれないようにその場を離れた。
午前の卒業式は何事も無く終わった。
午後からが、卒業パーティーだ。
間違いなく、クリストファーはこの場面でアリアを貶めようとするだろう。
俺の護衛にも、アリアの身辺に気を付ける様に伝え、身の危険があれば、遠慮なく敵を倒していいと伝えている。我が国もこの国に負けないぐらい大国だ。しかも軍事力は我が国の方が優っているだろう。
後はイベントが終わったら、すぐに彼女を手に入れ、我が国に連れて帰る。
そう心に誓い、卒業パーティーの会場へ向かうが、途中、下級生と見られる生徒から、声をかけられる。
「レオンハルト殿下、パーティーの始まりまで時間がありますので、他国の王家の皆様には特別控室を用意しております。ご案内いたしますので、こちらに。」
滑らかに話しているが、睨みつけると、目が泳いでいる。何を企んでいる?
「そんな話は聞いていないが?お前は誰の指図を受けている?」
「先生からの指示です。」
彼はそう言うが、動揺を隠せていない。
アリアの味方を減らす為に、力のある他国の王族の会場入りを遅らせるつもりか?
「悪いが約束があってな。会場へ直接向かう。邪魔するな。」
そう言って睨みつけると、
「ひぃ!」と飛び退く。
小者は無視して、パーティー会場へ足を踏み入れると、クリストファーの叫ぶ声がした。
「 アリアナ-ファーガソン、お前との婚約を破棄する!」
会場に入り、周囲を見渡す。
奥にクリストファーとカーラが寄り添い、周囲に取り巻き達が囲んでいる。
間を空けて、アリアが対峙し、その背後に彼女の味方であろう生徒達が見守っている。
丁度半々になるぐらいか?
これがこの国の勢力図と見てもいいか。
アリアから手出しするなと、言われていたので、アリア側の柱にもたれ、静観する。
クリストファーがアリアの罪状を論うと、アリアが反撃を始めた。
まぁ、クリストファーがどれだけ馬鹿なのか露呈した様なものだ。
アリアは予めこうなる事を見越していた様に、自分の無実を証拠を持って証明していく。
余りにも痛快だった。俺も一言加勢する。
しかし、魔法具とはいえ、効果的に使っているなと感心する。同じ歳の女子だよな?
あれよあれよという間に、アリアは自分の無罪を証明し、カーラの虚言を立証した。
手腕は見事だった。
しかし、話はそれだけで終わらなかった。
納得していないクリストファーが更に難癖をつけようとすると、アリアが魔法を使い、腰巾着とカーラを地面に伏せさせた。
怒り狂ったクリストファーが衛兵にアリアを捕らえる様命じる。
マズいと思い、アリアの元へ行こうとしたが、その間にアリアが衛兵の足も止めた。
一体何をした?
俺は足を止め、アリアを見据える。アリアは俺のことなど眼中にも入れず、どんどんカーラの虚言を暴いていく。
それだけでは、気が済まなかった様で、とうとうクリストファーに決闘を申し込んでしまう。
防御魔法が得意だと言っても、力は及ばないだろう?
何無謀な事しているのか?
ここらが潮時か?静観しているのは。
「おい!その決闘、俺にやらせろ!楽しそうだ。」
そう言って、アリアの横に出た。
そして、堂々と宣言する。
「勝てばお前を婚約者として、我が国に連れて帰る。いいだろう?アリア?」
お読み頂き、ありがとうございました。
レオンハルト視点で一話にまとめたかったのですが、長くなってしまい、二話にしました。
後半は明日か明後日には更新出来ると思います。
お付き合い頂けますと幸いです。




