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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】クロードの不安1(クロード視点)

ブックマーク等ありがとうございます。

更新遅くなり、申し訳ありません。

 エリックが渡してきた書類に目を落とすと、そこにはクリストファーが卒業式の日に、婚約破棄を皆に宣言し、アリアナを断罪しようと企てている。そして生徒たちを味方になる様に勧誘(脅迫)していると書いてあった。


 婚約解消を皆の前で行うなど、言語道断だ。

 アリアナの名誉を貶められるなど、許せる事ではない。第一王家から申し入れした婚約を本人の都合だけで解消できるものではない。ましてやファーガソン公爵を敵に回すなど愚策としか言いようがない。


 王妃に婚約解消を願い出ても、聞き入れられないからと、皆の前で婚約破棄を宣言し、誰も異を唱えられない様、アリアナを断罪するのか。


 クリストファーにはそんな策略は無理だし、度胸もないだろう。となれば、裏で糸を引く人物がいる。


 やはりクリストファー派は一掃しなければならないのか。王妃の後ろ盾とは事を構えたくはなかったが、先日のアリアナの誘拐事件といい、もう見過ごす訳にはいかない。

 とは言え、今すぐ動いても卒業式の日には、間に合わない。アリアナの身の安全が一番だ。


「これはアリアナは知っているのか?」

 思わず紙を持った手に力が入る。

 エリックに問えば、彼は表情を変えずに淡々と答えた。


「ああ、知っている様だ。そこには書いていないが、クリストファーの企みを知った王子達と一部貴族令息達がアリアナを守る会というものを立ち上げ、対抗しようとしていたら、アリアナから手出しするなって、釘を刺されたらしい。」


 アリアナを手に入れようと画策している王子達の話を聞くだけで、心が騒めく。


「アリアナを守る会って、奪いたい会の間違いじゃないか?」


「ハハハ…違いねぇ。皆アリアナの信奉者だ。特に王子達は妹を奪いたくて仕方がないだろうな。だが、集まった事で抜け駆けが出来なくなった。そんな取り決めになったそうだ。彼らも王子だから、最低限の約束は守るだろう。周辺国が絡む話だからな。だから妹は卒業式までは安全にアカデミーに在籍できる。」


 王子達が手出し出来ないのは安心だが、アリアナは何か考えがあってか?


「で、アリアナはどうするつもりだ?」


「まだ本人とは話せていない。だが、倍返しだろうなぁ。クリストファーももう少し頭を使えばわかるだろうに。」


 義弟のバカさ加減に頭が痛くなった。

 カーラにいい様に踊ろされている。

 王族として、あってはならない事だ。


「アリアナに会いたい。呼べるか?」


「放課後なら来れるかもな。でも問い詰めても無理だと思うぞ。」


「とにかく顔が見たいんだ。呼んでくれ。」


 そう、彼女に会いたい。何だか胸騒ぎがする。

 クリストファーが婚約破棄を皆の前で宣言すれば、必ず他国の王子達が動く。

 アリアナは彼等の事を友人としか見てなくとも、居場所がないならと、連れ去る可能性がある。

 現にレオンハルトはそう宣言していた。

 その誘いに彼女が応えたら、そう考えると居ても立っても居られなかった。


「わかったよ。だが、いきなり問い詰めたりするなよ。求婚もクリストファーとの婚約解消が済んでからだ。」


「わかっているよ。」


 空が茜色に染まってきた頃、アリアナが執務室へ現れた。


「ご機嫌よう。クロード殿下、お兄様。お呼びだと伺いましたが?」


「アリアナ、もうすぐ卒業だな。」

 変わらないアリアナの笑顔にホッとする。

 ペンを置き、アリアナの側に行く。


「はい。殿下。先日はドレスをありがとうございました。」


 そう、アリアナに卒業式の為のドレスを贈ったのだった。真紅のドレスにした。デザインは良くわからなかったので、アリアナ御用達の店のデザイナーに任せてしまったが。


「いや、気に入ったか?卒業パーティーで着て欲しい。」


「とても素敵なドレスでしたわ。卒業パーティーで着るのは勿体無いですわ。それに、殿下にお気遣い頂くなど恐れ多い事です。婚約者でもありませんのに。」


「アリアナは細かい事は気にせずとも良い。それに卒業パーティーには私がエスコートする。陛下からも許可を頂いている。エスコートするなら、ドレスを用意してもいいだろう?」


 アリアナは首を傾げる。

「陛下が何故?それに、わたくしにはエスコートは必要ありませんわ。」


「クリストファーはアリアナをエスコートしないだろう?」


「ええ。」


「また他国の王子にまた頼むのか?」


「いえ、エスコートは必要ありませんわ。」

 多分と口籠ったのを聞き逃さなかった。

 アリアナは一人でいいと言っても、王子達が許さないだろう。


「俺がエスコートするよ。クロードがエスコートすれば、話がややこしくなる。」


 私が顔を顰めていたら、エリックが横から口を挟むが、アリアナは微笑みながら、その申し出を断った。


「お兄様、卒業パーティーにはいらっしゃらないでくださいな。」


「何でだ?」


「ちょっとゴタゴタしそうなので。お父様とお兄様がいらっしゃれば、混乱を招きますわ。わたくしは一人で大丈夫ですわ。」


 やっぱりアリアナは何か知っているのか?

 私が尋ねても答えないだろう。ここはエリックに任せるか。エリックは私の視線を受けた後、小さく頷いた。言わずとも意図を察してくれる優秀な部下だ。


「それは無理だな。因みに、ゴタゴタってクリストファー絡みだろう?」


「お兄様、やっぱりご存知でしたか?」


「で、何があるんだ?お前の事だから、粗方向こうの動きを抑えているのだろう?」


「やっぱりお兄様の手の者が紛れ込んでいるのね。」


「当たり前だろう?可愛い妹の為だからな。で、何が計画されているんだ?」


「クリストファー殿下はわたくしがカーラに嫌がらせをしていたと断罪するそうですわ。それを理由にわたくしとの婚約を破棄するらしいです。」


 私は頭を抱えたくなる。

 その様な理由で婚約破棄などあり得ない。ましてや皆の前でなど…

 しかし、アリアナはそれを知っていても平然としている。


「ふ〜ん。それでお前はどうするんだ?そこまでわかっていて、手を打たないはずがないよな?」


 エリックがニヤリと笑えば、アリアナも口角を上げていた。


「断罪される謂れはありませんので、無実の証明をさせて頂くだけです。ついでにクリストファー殿下にちょっと目を覚まして頂こうかと思って。まぁあの殿下の事ですから、目を覚まして心を入れ替えるかはわかりませんが。もちろん婚約破棄は喜んで受け入れますわ。」


「お前、何する気だ?」


「さあ?」


「アリアナ、何を考えている?」

 我慢の限界で、アリアナの前に立ち両肩に手を置き、空色の瞳を覗き込む。


「内緒です。」


「ならば、私がアリアナのエスコートをすることは決まりだな。放って置くと何をしでかすかわからないからな。」


 全くクリストファーが熟考しない事はいつもの事だが、それに対抗するアリアナも考えが斜め上過ぎて、大人しくさせるのは、一苦労だ。


 アリアナは私の手をそっと外そうとする。


「殿下にエスコートして頂く訳にはいきません。いくら卒業パーティーで婚約破棄されるといっても、まだわたくしはクリストファー殿下と婚約しているのですから。」


 私は彼女の手を両手で包み込む。


「クリストファーの事は心配せずとも良い。それよりアリアナの名誉が貶められるなど、黙って見ている訳にはいかないだろう?」


「わたくしの名誉など、どうでも良い事です。王家の後継者問題で派閥争いが起きている今、クリストファー殿下を推す派閥に付け入る隙を与えてはなりません。」


「クリストファーが騒ぎを起こすならば、いい機会だ。これを機に不毛な争いから降りて貰えばいいだけだ。」

 そうだ、こんなバカな事をしでかすのであれば、王太子失格と烙印を押せるだろう。


「だからと言って、殿下が直接関わるのは悪手です。」


「王家の問題にアリアナを巻き込む訳にはいかないだろう?」


 アリアナが頑なに私が関わる事を拒否する。

 彼女の手はいつの間にか、私の手の中から抜け出していた。


「もう十分巻き込まれていますわ。」

 と言いながら、溜息を吐いた。


「すまない。」


「いえ…殿下が悪いのではありませんから。わたくしはクロード殿下に国を導いて頂きたいのです。クリストファー殿下であれば国が傾くでしょう?なのでクロード殿下をわたくし達のゴタゴタに巻き込む訳にはいかないのです。」


 彼女から国を託された。信頼を得ていると、嬉しく思うが、国を背負って立つ時には、アリアナが隣にいて欲しい。


「だが、クリストファーがアリアナに婚約破棄を言い出せば、それに乗じて、他国の王子達が君に手を出して来るだろう?」


 クリストファーからはアリアナを守る事は容易いだろう。幾らアリアナの罪を捏造しても、調べればわかる事だ。だがその混乱した状況を、アリアナに熱を上げている王子達が見過ごすとは思えない。


「他国の殿下方のご心配は無用ですわ。彼等はわたくしの命を狙っているわけではありませんから。」


 命だけの問題では無い。私はアリアナに側にいて欲しい。アリアナを誰にも渡したくは無いのだ。

 はっきり求婚できない事が、こんなにももどかしいとは。


「他国の王子達はアリアナを攫う気だぞ。」


「それはそれで楽しみですわ。どなたが計画されているのか存じませんが。」


「アリアナ!」

 思わず声を荒げてしまう。

 だが、彼女は微笑み返してきた。


「殿下もご存知でしょう?わたくしが本気になれば、どなたも手出し出来ない事を。」


「アリアナが本気にならなければ、手出しができるだろう?」


「わたくしがワザと攫われると?」


「可能性はあるだろう?アリアナは優しいから友人となった王子を傷つける事はしないだろう?」


 そう、アリアナの優しさに付け込んで、彼女を攫うだろう。レオンハルトか?イスマエルか?ルーカスか?

 特にこの三人は要注意だ。


 婚約破棄など茶番だが、悪意のある噂の種になるのは目に見えている。しかし卒業式まで時間が無い。当日止める事が出来ればいいのだが。


 アリアナの今後の生活を考えれば、他国の王族に嫁ぐ方が過ごしやすいと言われれば、反論できない。しかし、私の心はアリアナを求めてしまう。


 やはり、アリアナは手放せない。

 目の前のアリアナをどう説得しようか。








お読み頂き、ありがとうございました。


次回も不定期更新とさせて頂きます。

お付き合い頂けますと幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 登場人物達のそれぞれの視点の違いから物語が読めるのは楽しいですね(=^ェ^=) [気になる点] アリアナさんに相応しい相手がいない気がします(・・;) [一言] はじめまして。最初のお話か…
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