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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】王と公爵とクロード(クロード視点)

ブックマーク等、ありがとうございます。

更新遅くなり申し訳ありませんでした。


 アリアナの卒業式まであと一週間。


 貴族内の派閥のゴタゴタをエリックと共に片付けていたら、もうこんな時期になってしまった。


 アリアナが攫われた事件がきっかけに色々と尻尾を掴む事が出来たのだ。何とかアリアナの卒業式までに間に合って良かったと安堵する。


 父王と公爵には、クリストファーのアカデミーでの行動やアリアナに対する態度や言動と共に、野外活動でのアリアナ誘拐事件の調査内容も報告を上げている。


 アリアナの誘拐は、クリストファー派の侯爵の指示だった。決定的な証拠がなかった為、魔法具を侯爵家に入れ、盗聴盗撮させれば、彼自身が決定的な言葉を吐いた所を押さえる事が出来た。


 理由は、やはりアリアナがクリストファーと結婚すれば、ファーガソン公爵家の力が大きくなり、自分達の思う様に国政を動かせないどころか、今までの不正がバレるのを恐れていたらしい。


 アリアナに対抗出来るだけの娘を送り込もうにも、侯爵家には年頃の娘はいない。

 自分の派閥で年頃の娘を探したが、どの家もファーガソン公爵に睨まれる事はしたくないと、娘を差し出す事を断ったらしい。

 だからカーラを使った。

 子爵家に最近迎えられた見目が良い娘、失敗しても、切り捨てれば問題ない。

 クリストファーに取り入る事ができれば、侯爵家の養女として、クリストファーの妃として嫁がせ、自分が実権を握りたいと。


 だから、色々な意味でもアリアナは邪魔だった。


 王妃に婚約解消をする様に再三申し入れていたが、彼女は取り合わなかったそうだ。なので、手っ取り早くアリアナを排除しようとしたらしい。


 それと同時に、私を暗殺する計画も立てており、その計画も明らかになった。

 アリアナの次は私の命を取れば、完璧だと。


 これらの証拠を有効に活用させて貰おう。


 幸い、王妃はこれらの謀略には関係していなかった。言わずもがな、クリストファーもだ。

 クリストファーの口の軽さや何も考えずに行動を起こそうとするところを見れば、それは当然の事だろう。まぁ、そんな王子だから、自分の思い通りに動くと目を付けられたのだ。


 父は決して、妃の後ろ盾になる侯爵に優遇を図ったり、特別扱いはしなかった。それが侯爵家にとっては面白くなかったのだろう。


 父王は見た目、温和で親しみやすい雰囲気なのだが、実は裏の顔は厳しい為政者だった。

 いや、不正に対して厳しいというべきか。

 民にとっては賢王であった。


 母とは恋愛結婚だったが、母の身分が低い事で祖父からもう一人妃を娶らなければ、母と別れろと迫られ、クリストファーの母を王妃として、据えたのだった。苦渋の決断だったのだろう。


 だが、結婚した後は、王妃と母を区別する事も無く、二人がトラブルにならない様、心配りをしてきた。そのお陰で、私達親子は肩身の狭い思いをする事もなかった。自分がこの歳になれば、それがどんなに大変な事かと理解できる。


 王妃自身も出来た人間であったのだろう。

 お互い微妙な立場であり、表だって仲良くする事はなかったが、嫌がらせを受けたりする事も無く、時々は王妃とクリストファーとも晩餐を囲む事もあった。

 外交もそつなくこなし、王妃としての役割を果たしながらも、権威を振りかざす事は無く、波風を立たせるこはなかった。


 そんな彼女が唯一王妃の権利を使ったのが、クリストファーとアリアナの婚約だったのだ。

 それ以外は、父の妃として尊敬しているのだが。


 クリストファーとは、それまでは時々は遊んだりしていたと思う。だが、アリアナを取られたと思った私は、彼女を取り戻す為に勉強や剣術に打ち込んだ為、距離を置いた。


 長い道のりだった。いや、まだ途中だ。


 アリアナの父君であるファーガソン公爵と父に改めてアリアナと結婚させて欲しいと、願い出た。


 父の執務室で、父と向き合う。父の後ろにはファーガソン公爵が控えている。


「お前の気持ちはわかったが、今のところ、クリストファーが婚約者失格となる様な落ち度はないぞ。多少他の女子生徒と仲良くした事で、直ぐに婚約をなかった事には出来ぬだろう。誘拐事件も許せないものだが、クリストファーが指示した証拠はない。いや、彼奴に指示できる様な力量は無いだろう。だからこそ、婚約解消は難しい。」


「お言葉ですが、父上、クリストファーもアリアナ嬢もお互いに結婚を望んでおりません。確かに政略結婚であれば愛情は二の次になるのでしょうが、それでは二人とも不幸になりませんか?いえ、クリストファーは望めば側妃、愛妾を置く事が出来る。しかし彼が、父上の様に妻とした女性達に心配り出来るとお考えですか?」


「いや、しかし…」

 父が言いよどむ。母に愛を囁きながら、もう一人妃を迎えた過去が思い出されるのだろう。


「父上、考えてみて下さい。娘がいたら、自分の娘以外に愛情が向いている男の所に嫁がせますか?」


 そう言って、ファーガソン公爵を見た。

 彼の表情は変わらない。私は話を続ける。


「アリアナ嬢の力を国内に留めたいのであれば、彼女が幸せに過ごして貰わらなければ、彼女は国を出ていくでしょう。現に周辺国の王子達からの誘いが来ています。正式に申し込みがあった分は断っていますが、王子達は彼女自身に誘いをかけています。いずれも彼女自身が欲しいのであって、身分等は気にしない、身一つで十分だと。彼女さえその気になれば、彼等はいつでも彼女を攫っていくでしょう。いや、彼等は彼女がその気にならずとも攫うかもしれない。父上は彼女を他国に取られてもよろしいのですか?」


「余は、アリアナ嬢を他国に取られてもいいと思っているわけではない。」


「私はアリアナが幸せであれば、どこに嫁がせても構いません。確かに娘の魔法力は高いです。ですが、今では制御も覚えております。祖国に害を為す事はないでしょう。魔法力の為の婚姻であれば、どなたであってもお断りさせて頂きます。」


 突然の公爵の言葉に、父と私が驚く。

 私の求婚も魔法力の為と思われているのか?

 心外な!怒りが湧いてきたが、それを押し隠し、公爵に対峙する。


「私は魔法力の為にアリアナ嬢を娶りたいのではない。以前から私の妃はアリアナ嬢しかいないと思っていたんだ。公も以前は彼女が婚約解消したら認めてくれると言ったではないか?」


「もちろん、クロード殿下が娘を気にかけて下さっているのは存じております。穏便に婚約解消が可能であれば、娘を殿下にお任せしても構わないと。しかしその事でご兄弟のわだかまりを生じさせる訳には参りません。」


「クリストファーはアリアナに愛情は持っていないぞ。私が彼女を妃に迎えても何とも思わないだろう。」


「クリストファー殿下が娘を煙たがっていても、クロード殿下が娘を妃になされれば、必ず難癖をつけてくるでしょう。もちろん娘はそれくらい軽くあしらう事は容易い。ですが、派閥がある以上、徹底的にクロード殿下が上に立たなければ、この国が二分に分かれてしまうでしょう。」


「私が圧倒的に強くなり、王太子として認められればよいのか?」


「余計な火種を生まない為には、娘を他国へ嫁がせる事も一つの選択肢かと考えております。」


 公爵は私の質問には答えず、ニヤリとする。

 お前がクリストファー派を抑えられるのかと、暗に言われている様だ。


「公はアリアナ嬢を何処へ嫁がせようと考えているのか?」

 父が口を挟む。父が公爵の話に乗るのか?


「北の国でしたら、良質の鉄鉱石の鉱山が最近発見されていますし、ベルンブルク国に嫁がせれば、友好条約を結べます。南の国であれば、交易が進むでしょうし、西の国であれば、彼の国の最新技術が手に入るでしょう。王子達はアリアナと同じ歳、幸い友人としては交流を深めている様です。」


 アリアナに纏わりついている王子達の国を挙げられ、怒りが頂点に達しそうだ。


「国の利益の為に、アリアナを嫁がせるのか?それは許せない。他国へは渡せない。」


「だが、クリストファーとの婚約解消し、お前と婚約すれば、公が心配する様に、要らぬ憶測を呼び、政治にまで影響が及ぶぞ。」


 父に言われずとも、十分わかっている。そしてそれを利用しようと企んでいるのは父と公爵だろう?と二人に鋭い視線を送る。


「父上はそれがお望みだったのでは?すでにある不穏分子を炙り出したかったと私は見ていますが?父上はクリストファーに継がせて、この国を混乱させたいのですか?」


 私は口角を上げる。

 するとファーガソン公爵も目を細めた。どうやら正解だった様だ。


「クリストファー派の一部貴族は違法薬物や人身売買に関わっている様です。今回のアリアナ嬢の誘拐事件を手掛かりにかなりの情報を手に入れる事が出来ました。首謀者の証拠も掴んでおります。実行犯達は既に捉えてありますし、上位貴族達には見張りを付けています。これを機に利己的な貴族は一掃します。ああ、王妃陛下とクリストファーが関わっていない証拠も用意していますので、ご心配無く。」


「うむ。よくやった。」


「ですので、褒美を下さい。」


「何が欲しい?」


「アリアナ嬢を。」


「アリアナ嬢は物では無い。余が褒美として与える訳にはいかないだろう?」


「では、アリアナ嬢との結婚を認めて下さい。」


「アリアナ嬢がお前との結婚を承諾すれば、余は認めよう。クリストファーと王妃へは話をしておく。但し、ファーガソン公爵の承諾はまた別の話だ。アリアナ嬢から色良い返事が貰えたら、知らせてくれ。」


 父からは承諾を貰える。次はアリアナの父君だ。


「ファーガソン公爵、私とアリアナ嬢との結婚を認めてくれ。」


「困りましたね。他国の使者へは何と返事をしましょうか?アリアナをそれぞれの国に行かせてみて決めようかと考えていましたが。」


 彼は意地の悪い笑顔になる。

 大事な娘は渡せないと顔に書いてあるようだ。


「絶対ダメだ。ベルンブルクなどに行かせれば、アリアナを隠して、事故死と言ってくるぞ。使者にはアリアナは婚約しているでいいではないか。だいたい公爵は困っていないだろう?前回も一言で終わらしたのは誰だ?」


「さあ、誰ですかね。私はアリアナが幸せになれれば良いのです。娘が殿下と共に歩む道を選ぶのであれば、私は反対する理由はありません。但し娘を御するのは難しいですぞ。」


「私が何年アリアナ嬢の側にいると思っているんだ?公爵に言われずとも十分承知している。その上でアリアナ嬢がいいのだ。」


「殿下のお気持ちはわかりました。クリストファー殿下と正式な婚約解消が成りましたら、殿下のお心のままに。」


 クリストファーとの婚約解消後であればと、了承を得られ、ホッとした。

 父から王妃に話してくれると言質を取れ、安堵する。



 執務室に戻るとエリックが書類と格闘していた。

 私が入ってくると、ペンを置き、顔を上げる。


「話はついたか?」


「ああ、何とか認めて貰ったよ。で、義兄上は認めてくれるのかい?」


「俺はアリアナ次第だ。アリアナがお前を選ぶなら祝福するよ。それより、報告だ。クリストファーがアカデミーの卒業式で何かやらかすらしい。」


 そう言って、エリックは書類を渡してきたのだった。








お読み頂き、ありがとうございました。


更新したと思っていたら、出来ていませんでした。

私のミスです(汗)

次回も不定期更新とさせて頂きます。


色々と大変な時期ですが、皆様もお身体をお大事になさってください。


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