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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】作戦会議2(レオンハルト視点)

ブックマーク、評価ありがとうございます。


「レオンハルト、ちょっといいか?」

 そうルーカスから声をかけられた。


 後二週間で卒業式という時だった。

 俺はアリアとの距離が縮められないでいて、焦っていた。そんな時に、ライバルであるルーカスに声をかけられて、眉間にシワを寄せる。


「何だ?」


「アリアナ嬢の事で話があるそうだ。放課後、国際交流部に来てくれ。内密にな。」


「今、話せばいいだろう?」


「イスマエルがアリアナ嬢の件で話があるらしい。ヨハネスや他の生徒も一緒だ。お前が彼女に興味がないなら、来なくていいが。」


 イスマエルと聞いて、イラッとする。自分の知らない所で、アリアの話が出るのも嫌だった。


「わかった。」


 放課後に顔を出した、会合は、アリアナ嬢を守る会なんて、センスの無い名前が付いた会だった。


 同学年の王子達とこの国の貴族の子息達が集まっている。


 イスマエルが主導権を握っている事は気に入らなかったが、そこで聞いた内容は確かに聞いて損は無い情報だった。


 それは、卒業式でアリアが婚約破棄され、断罪されるというものだった。婚約破棄は大歓迎だが、断罪はいただけない。アリアが貶められるなど、許される訳がない。


 ライバル達とは、一時的な休戦となり、卒業後にアリアに選んで貰うとなった。後少しの時間しか残されていないと焦ったが、他の王子達も卒業式までは動けないと思い直し、話に乗る事にした。

 別に連れ去らないと約束しただけで、話したり、デートに誘う事はできるのだ。


 アリアにクリストファーの企みを知らせるかどうかと揉めていたら、アリアが教室に入って来て、手を出すなと皆に釘を刺した。

 自分の問題だからと。


 何であんなに強いのか?

 その凛としたアリアに惚れたのだが、こんな時ぐらい頼って欲しい。

 卒業式や卒業パーティーといえば、保護者も招待される。その場で婚約破棄されるだけでも、貴族令嬢にとっては、不名誉な事であり、それが王子からだと尚更肩身の狭い思いをする事だろう。

 それに加えて、断罪だと?ふざけるな!と言いたい。


 それにしても、クリストファーは馬鹿か?

 こんな素敵な婚約者がいるにもかかわらず、カーラなどに魅惑されるなど、普通なら考えられない。

 まぁ、そのおかげで、俺にもチャンスが回って来そうなのだから、ある意味感謝しないといけないのか。


 だが、アリアを傷つける事は許さない。

 卒業式で何かしようものなら、覚悟しろよ。俺が倍返ししてやるからな。

 そう心に誓った。


 それから、俺は国に連絡を取り、アリアの受け入れ態勢を整えた。

 婚約破棄されたアリアがこの国に居辛くなるのは、間違いない。卒業式後に直ぐに連れて帰っても、問題ない様、根回しと共に、部屋や身の回りの品を準備するよう命じた。

 ドレスなどの身に付ける物はエリスに頼む。彼女ならアリアの好みもサイズも知っているだろう。


 そう思っていたら、エリスから魔法通信がかかってきた。


「レオン、アリアナ様が望まないのに、攫ってしたりしないでね。もしそんな事をすれば、私がアリアナ様を彼女が望む所に逃しますわよ。」


「それは困るな。アリアがこの国で幸せになれないのであれば、我が国で幸せにしたいじゃないか?」


「アリアナ様が望まれるなら、私も大歓迎ですわ。それより、アリアナ様がいらっしゃるかどうかわからない国に色々と準備するより、卒業パーティーで使うドレスや装飾品などを送った方が、よほど役に立つわ。レオンが振られてもアリアナ様は物は大事にしてくださるから。」


 相変わらず、手厳しい。


「何を送ったらアリアは喜ぶ?」


「そうねえ、今のレオンだったら、何を送られても困るかも。」


「お前、言っている事が矛盾しているぞ!」


「ふふふ…自分で考えないと意味がありませんわ。頑張ってね。レオン。」


 全く、遠慮なく言ってくれるな。と溜息を吐く。

 彼女の言葉は耳が痛い。

 卒業パーティーか。クリストファーの企みだけに囚われていたが、エリスが言うように自分が送った物を身に着けてくれたら、どれほど嬉しいか。

 そういえば、イスマエルは奴の国の衣装をアリアに着せていたな。思い出すだけでも、腹立たしい。

 我が国の民族衣装といっても、この国とさほど変わらない。だが、俺の瞳の色のドレスや装飾品を身に付けてくれたらと、想像を膨らます。


 ドレスは今からだと間に合わないかもしれないが、装飾品なら何とかなるだろう。

 ルイスに相談してみよう。



 肝心のアリアとは、なかなか話せないでいる。

 彼女も忙しい様で、生徒会や国際交流部の引き継ぎなどでバタバタしている様だった。

 これでは、デートに誘う暇もない。


 そうこうしている間に一週間が過ぎる。

 今日はアリアナ嬢を守る会の第二回目がある。


 国際交流部の扉を開けると、前回と同じメンバーが揃っていた。

 今回は俺が最後だった様だ。


「待たせたな。」


「いや、今が約束の時間だ。では、始めよう。」

 イスマエルは皆を見渡した後、一人の生徒に指示を出す。ニコラスと言ったか。


「で、何かわかったのか?」


「生徒の派閥のリストです。」

 そう言って、ニコラスが書類を皆に配る。


 渡された書類にサッと目を通す。

 だいたい把握していた通りだった。

 但し中立派の欄には、備考欄に勧誘を受けたかどうか、クリストファー派に味方するかなどが付け加えてあった。


 なかなかいい仕事をするなと、ニコラスを見直す。


「見てもわかる様に、殆どの中立派の生徒が勧誘を受けています。半分が金銭や地位の見返り、半分は弱味を握られての脅しですね。」

 と、ヨハネス。


「で、どう対処したんだ?」

 ルーカスがニコラスに尋ねる。


「本人を見て、見込みがある者にはもっと大きな権力を使って、中立派のままでいてもらう事にしました。」


「こちら側に引き込まずともいいのか?」

 そう疑問に思い、尋ねるが、ニコラスは頷きながら、答えてくれる。


「下手に動けば、相手に感づかれてしまいます。少なくとも相手側に入らないと確約があれば十分だと、言われました。」


「誰に言われたかは、聞いた方がいいのかな?」

 と、イスマエル。


「そこはスルーしてください。」

 ヨハネスは全く動じていない。


 アリアナの兄君か?クロードか?

 この分だと中立派の半分はクロード派に属するのか。

 これ以上は彼も話す気は無いのだろう。


 俺はもう一つの懸案事項を確認する。

「で、あのカーラとかいう女はどうなんだ?」


「相変わらず、男子生徒に色仕掛けをしています。幻惑の魔法を使っている可能性もありますが、アカデミーに通う生徒はその手の魔法には抵抗できる様に訓練されているはずなのです。原因を今、魔法師団とも協力して突き止めている最中です。」


「薬かもな。」

 ルーカスが呟く。


 確かに誘惑する為に使う媚薬の様な薬はあるが、こんなに長期間継続する薬など、聞いたことが無い。


「薬で長期間効くのか?」


「俺も数時間の薬しか知らないが、魔法と併用するとか、別の薬物と併用するとかすれば、可能性はあるんじゃないか?」


「確かに。その辺も調べられるか?」


「我が国の問題ですので、急ぎ調べましょう。」


「で、当日断罪が始まったら、どうアリアを保護するんだ?」


「私が転移魔法でアリアを逃がそう。」

 イスマエルが堂々と宣言する。

 確かに転移魔法を簡単に使えるのは、学年では俺かイスマエルしかいない。


「お前、そう言って、自分の国に連れて行くんじゃないのか?」

 俺はイスマエルを睨み付ける。


「お前だろう。そう考えているのは?」

 ルーカスが俺も一緒だろうと突っ掛かってくる。


 ルーカスも国の諜報機関を使えば、アリア一人ぐらい、攫うことは容易いはずだ。

 こいつも油断できないなと思う。


「アリアナ嬢の保護に関しては、ご心配はありません。魔法師団を配置していただける事になりましたので、姫の御身が危険に曝される事になれば、魔法師団の者が王宮へ保護する様、手配が整っています。」


「「「何?」」」

 俺たち三人の声が重なる。


 あわよくば、それに乗じて、アリアを連れて帰ろうかと思っていた俺は、魔法師団という言葉に反応してしまう。

 間違いなく、クロードの命なのだろう。


 ふと横を見ると、イスマエルもルーカスも同じ反応をしている。二人とも同じ事を考えていたのか?


 ヨハネスだけは、平静だった。

「魔法師団の人選は間違いないんだな?」

 と、ニコラスに派閥争いが魔法師団まで及んでいないか、確認している。


「ああ、間違いない。魔法師団はクロード殿下が団長だし、入隊時に誓約魔法をかけるから、裏切る事はない。そもそも、クロード殿下に心酔している者が多いんだ。」


「それなら安心だな。」


 ヨハネスは純粋にアリアの事を心配していた。

 アリアを手に入れる事だけに囚われていた俺は、居心地が悪くなっていまう。


「それから、皆様に姫から殿下方にお手紙を預かっております。」

 そう言って、ニコラスは封書を取り出し、イスマエルに渡す。


 イスマエルが封を開けて、中からカードを取り出す。

 それを見たイスマエルの顔が固まる。


 俺は彼の手から、カードを奪って、目を落とす。


 《絶対、手出ししないでくださいませ。邪魔したら、絶交ですわ。       アリアナ》


 そう、優雅で流れる様な字で書いてあった。

 絶交…それは困る。イスマエルの反応が理解出来た。


 俺も固まっていたら、ルーカスからカードを引ったくられる。


「はははは…梨奈だなあ。彼女は何か考えているんだろう。彼女が助けを呼ぶまで、手出しはしない方がいい様だな。」


 ルーカスはそう言って、笑いながら、ヨハネスにカードを渡した。


 ヨハネスはカードを見て、肯く。

「姫らしいですね。姫の身に危険が及ばない限り、見守りますか。」


 そう言って、まとめていた。


 その場は解散となり、俺は寮に戻る為、中庭に面した回廊を歩いていた。


 ふと庭を見ると、アリアが一人でベンチに座っているのが見えた。いい機会だ。少しでも話す事が出来たらと俺も中庭に降りて、アリアの元へと歩き出す。


 アリアは薔薇の花を見ていた。俺が近付いている事に気付いていない。

 少し早めに咲いたその一輪の花は、凛としていて、まるでアリアの様だな。


 そう思いながら、足を進めていたら、アリアが立ち上がり、そしてパッと消えた。


 転移魔法か?

 詠唱も魔法陣もなかった。簡単に消える事ができるなど、誰にでも出来る事では無い。


 改めてアリアの魔法力に驚かされる。


 せっかく話が出来ると思ったのだが。

 どうしたら、彼女の気持ちを手に入れられるのか?

 もう時間が無い。焦りもあり、頭を抱えてしまったのだった。



お読み頂き、ありがとうございました。

更新遅くなり、申し訳ありません。

外出も思うように出来ないと、気持ちも落ち込み、なかなか書き進める事が出来なくて…

皆様もどうぞお身体をお大事になされてください。


次回も不定期更新とさせて頂きます。

お付き合い頂けますと嬉しいです。


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