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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】エリスの送別会3(エリック視点)

ブックマーク、評価等、ありがとうございます。


更新遅くなり、申し訳ありませんでした。

エリック視点です。

 クロードからアリアナを守る様言われ、やって来たエリス嬢のお別れパーティー。


 過保護なクロードが心配した為、俺はパーティーに参加する事になった。


 エリス嬢はアリアナ誘拐事件に巻き込まれた為、迷惑をかけた。詫びもふくめて花束とプレゼントを用意し、彼女に渡した。

 横でルイスの拳が握られ震えている。

 それだけでも、来た甲斐があると、つい口角が上がる。ルイスとは昨年まで共に学んだ仲だが、彼が我が国の内情を探ろうとしていた事は知っていた。

 それを除けば、気の合う仲間だったのだが。


 学生で大した情報も掴めないだろうと、たかを括っていたのだが、レオンハルトを送り込んで来たところを見ると、アリアナの事は彼から漏れたと考えるのが妥当だろう。


 普段から女子生徒達に心地よい言葉を囁き、次から次へと隣に立つ女子を変えていた彼には、いい薬になる、そう考えた俺は、エリス嬢とダンスを踊る。


 彼女はルイスを嫉妬させるつもりらしい。

 学生時代のルイスの武勇伝、もちろん女性に関する事を色々と話してやった。

 そして、考え直すなら、今の内だと。


 すると、彼女は、いい事聞いたと喜ぶ。

 ついでに関係があった女子の名前を教えて欲しいと言う。つい、心配になり、婚約を解消するのかと尋ねると、結婚した後に、彼を操縦する為に使うと言う。


 なかなか、しっかりしたご令嬢の様だ。

 そう言えば、攫われた時も、元気だった。

 全く、類は友を呼ぶとは、この事だ。

 アリアナと気が合う筈だ。


 アリアナは、3人の王子達のダンスの申し込みを断り、ヨハネスと楽しそうに踊っていた。


 ヨハネスはノーマークだったな。

 そういえば、祭りの時に、アリアナを誘っていた奴だ。


 なるべく側に寄り、風魔法の一種、集音魔法を使う。近くの音を集めてくれる魔法だ。


 ヨハネスがアリアナを彼の国に誘っている。

 はっきりと求婚している訳ではないので、咎める事も難しいが、言葉の裏に隠されているのは、アリアナへの求婚だろう。


 そんな事を考えていると、曲が終わる。アリアナの元へ行き、王子達を牽制しながら、アリアナと踊り出した。


「お兄様と踊るのは久しぶりだわ。」


 アリアナは嬉しそうに笑う。

 アリアナと踊るのは、いつ以来だろうか…

 幼い頃にクリストファーの婚約者になった妹は、15歳の社交界デビュー以降のエスコートは、クリストファーかクロードだった。

 デビュー前は、舞踏会に憧れていた妹から強請られ、何度も踊っていたのだが。

 ふと、まだ王宮に上がる前のアリアナを思い出す。

 物語を読んでやったら、王子様とお姫様の様に、舞踏会で踊りたいといい出した。

 俺もダンスはまだ始めたばかりだった。

 だけど、アリアナの期待に満ちた目に負けて、踊る真似事をした。

 アリアナは俺の腕を取って、クルクルと回って、楽しそうに踊っていた。

(おにいさまがわたしのおうじさま?)

(ああ、ぼくの可愛いお姫様。)

 思えば、あの頃は純粋にアリアナを愛する事ができた。アリアナは俺だけの天使だったし、俺だけに懐いていた。

 昔の思い出に浸っていたら、アリアナと繋いだ手に力が入る。


「お兄様?」

 アリアナが俺を不思議そうに覗き込む。


「そうだな。夜会のエスコートはクリストファーかクロードがお前の相手だったからな。」

 クリストファーは婚約者だから、エスコートする事は当然だが、クロードも同じぐらいエスコートを買って出た。踊る事は苦手なクリストファーが逃げていた為だ。


「でもお兄様と踊る方がいいわ。楽だし。」

 そう言いながら、踊るアリアナは、幼い頃と同じ様に、無邪気に笑う。ああ、この笑顔をずっと側で見ていたいと思ってしまう。


「楽だって?クロードもクリストファーもダンスはできるだろう?」


「だって、クロード殿下と踊ると失敗したら怒られそうで緊張するし、クリストファー殿下は、相手の事など考えずに踊るから大変ですのよ。」


「そうか。」

 クロードがアリアナと踊る時は、彼の想いを出さない様にしている。弟の婚約者に好意を持っていると、他の者に悟らせる訳にはいかないからだ。

 彼を不憫だと思うが、俺だけのアリアナの笑顔かと思うと、優越感に浸ってしまう。これくらいは許して欲しい。


「お兄様、今日はクロード殿下はご一緒じゃないのね。」


 アリアナはクロードの事がやっぱり気になっているのか?

 クロードなら任せていい、そう思っていたが、アリアナからクロードが好きだと聞かされたら、俺は耐えれるだろうか?いや、耐えなければならないのだが。

 アリアナが他国に嫁ぐより、頻繁に顔を見れる方が安心だ。例え自分の気持ちを押し殺したとしても。


「何だ?クロードに会いたかったのか?」


「いえ、お兄様だけでよかったわ。」

 クスッと笑うアリアナに、俺も笑みが浮かんでしまう。 


「何でだ?」


「だって、クロード殿下がいらしたら、わたくしは皆様とゆっくりお話できないし。最後になるのですから、ゆっくりお別れしたいですわ。」


「最後?」

 アリアナの言葉に引っかかりを覚える。


「エリス様、帰られるし。」

 アリアナは慌てて下を向いて、言い訳をしているが、それだけが理由でない事は明白だ。

 一体何を考えている?


 クロードが言っていた様に、姿を(くら)ますつもりか。

 アリアナに問い詰めたいと思うが、下手に問い詰めて、更にとんでもない事をしでかすかもしれない。

 ここは気付かない振りをするしかないか。


「まぁ、それはそうだろうな。今日は隣国の使者と会っているんだ。クロードはお前に会いたがっていたから、近いうちに顔を出してやれ。」


 そう、クロードは陛下の代理として、今、隣国の使者と面会している。

 親父と一緒に。

 レオンハルトとイスマエルとルーカスが国同士の縁組として、アリアナとの縁組を申し込んで来たのだ。

 公爵家に直接来た分は、親父が軽く断っていたが、国同士の縁組となれば、親父だけでは、対応できない。この3人以外にも打診してきた国があるから、アリアナを遠ざけたい、クリストファー派の工作だろう。

 しかし他国にアリアナの魔法力が知られての縁談の申し込みなら、厄介だ。

 クリストファー派はアリアナの魔法力は知らないはずだが、油断はできない。

 特にこの場にいる3人は要注意だと思う。


「隣国の使者?ベルンブルグ国?」

 アリアナは当然の様に聞いて来た。


「ああ、そこだけではないがな。」


「本気だったんだ。」と、アリアナが呟く。


「お前、何か知っているのか?」


「ええ、レオンハルト殿下がわたくしが嫁げば、友好条約を結ぶ事ができると。」


「アイツ…」

 アリアナの優しさに付け込んで、と怒りが湧いてくる。アリアナに熱い視線を送るレオンハルトをチラリと見る。彼がアリアナを欲しているのはわかる。だが、国を使って圧力をかけるなど、言語道断だ。


「わたくしはお断りいたしましたわ。でも本当に使者の方がいらっしゃるとは、思ってもみませんでしたが。」

 アリアナがはっきり断ったと聞いて、ホッとした。

 優しいアリアナの事だから、受け入れたのではないかと危惧したのだ。

 使者の方はクロードが断りを入れるだろう。


「ところで、さっき踊っていたのは、ヨハネス殿下だろう?」

 そう、珍しい人物と踊っていた。彼が在学しているのは知っていたが、アリアナとの接触は報告されていない。


「お兄様、ご存知でしたか?」


「去年からいたしな。彼と何を話していたんだ?」


「ああ、ウサギのぬいぐるみのお礼をしておりました。」


「はあ?ウサギのぬいぐるみ?」

 年頃の男女が一緒に踊って、話題がぬいぐるみ…

 俺は頭を抱えるべきなのか。


「そうです。とてもフワフワモコモコしていて、可愛らしいのです。以前頂いたのですが、今も大切にしていると。」


「ぬいぐるみ…お前、幾つになったんだ?」

 そいいえば、昔からぬいぐるみは好きだったよなぁ。

 何だか張り詰めていた心が、緩んでしまう。


「あら、可愛らしい物は幾つになっても好きですわ。ちゃんとお兄様に頂いたクマのぬいぐるみも大事にしておりますのよ。」

 いや、クマは大事にしてくれて、嬉しいが。


「はー。ヨハネス殿下に呆れられただろうな。」


「いえ、お礼を言われましたわ。」


「はっ?」


「以前、ヨハネス殿下のお国の羊毛製品の販路拡大のお手伝いをしましたの。とはいえ、ほんの少しなのですが。今は安定して販売出来ている様で、わたくしも安心致しました。」


 我が妹ながら、商才があると関心する。

 会話の内容がぬいぐるみだけではなく、商売の話かと思うと、妙に納得するが。


「そうか。で、お前はヨハネス殿下はどう思っている?」

 大事な事を聞いておこう。

 アリアナの気持ちを。


「お友達ですわ。とても綺麗な方だと思いますが。」

 少し首を傾げ、アリアナは応える。


「男に綺麗はないだろう?」


「だけど、ヨハネス殿下には綺麗と言いたくなるのです。そう思いません?」


「まぁ北の国の人は色が白く、髪も白銀や薄い金色が多いからな。で、最後に何か言われていただろう?」


「やだ、お兄様聞いていらしたの?」


「妹の安全を守らないといけないだろう?」


「わたくしがクリストファー殿下から逃げ出す時は、匿って下さると。」


「結婚の申し込みでもされたか?」


「いえ、ただ、いつでも頼って欲しいと。」


「全く、油断も隙もないな。」


「あら、ヨハネス殿下は純粋に心配して頂いただけだわ。アカデミーでは、わたくしとクリストファー殿下の不仲は有名ですから。」


「お前はクリストファー殿下と本当に結婚するのか?王妃から結婚の日取りを決めたいと、申し出があったそうだが。」


 そう、他国からの使者の話を聞き付け、王妃は早くアリアナをクリストファーの妃に迎えたいと言ってきた。妃になれば、他国も手を出す事はできないからと。

 クリストファー派はアリアナの事が邪魔だと排除しようと、王妃はクリストファーの相手は、アリアナしかいないと思っている。


「わたくしが決める事ではないのは、わかっていますが…本音は結婚など無理ですわ。」


「で、何を考えているんだ?」


 そう、アリアナが婚約解消の為に、何をしようと考えているのか?さっきは深く追求しなかったが、卒業までに、自分で決着をつけるつもりだろう。


 アリアナの空色の瞳が大きく開かれた。




お読み頂き、ありがとうございました。


次回も不定期更新ですが、お付き合い頂けますと幸いです。


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