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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】ミモザとアリアナとクロード2(クロード視点)

ブックマーク、評価、ありがとうございます。

大変勉強になります。

稚拙な作品にお付き合い頂き、感謝しております。

前話の続きになります。

 アリアナの空色の瞳が、大きく見開かれた。

 吸い込まれそうな空の色は、とても澄んでいる。

 アリアナの瞳に自分の姿を見つけ、ああ、このまま私だけを映していて欲しいと願う。


「まさか!今想う方はおりません。殿下、腕が痛いですわ!」


 アリアナが否定してくれた。ホッと一息ついて、自分を落ち着かせ、指の力を緩めた。

「ああ、悪かった。」


 力は緩めたが、本当はこのまま抱きしめて、アリアナは私のものだ、何処にも行かせないと、宣言したい。

 アリアナは、伏し目がちに、言葉を続ける。


「婚約する方とは、結婚してからでも、愛情を育む事ができればと思っているだけです。本当はクリストファー殿下と、その様な関係になる事が一番良かったのでしょうけれど。」


 クリストファーの名前が出てきて、嫉妬心に火がつく。クリストファーとアリアナが仲良く並んでいる姿など、想像もしたくない。


「クリストファーと本気で結婚する気か?」


「……クリストファー殿下から、婚約破棄を言われると思いますわ。」


「その後はどうするつもりか?他国の王子の元へ行くのか?我が国の貴族に嫁ぐのか?」


 アリアナが他の誰かの元に嫁ぐなど、許せない。

 その時は、きっと私はアリアナを攫って、閉じ込めてしまうだろう。

 彼女は首を横に振る。


「クリストファー殿下と破談になった娘を望む方は、いらっしゃらないでしょう。その後は領地の隅にでも居を構え、のんびり暮らしますわ。」


 田舎に篭れば、警備が手薄になったところを突いて、間違いなく他国の王子たちが攫いにいく。そんな場所には行かせられない。


「アリアナが破談になれば、喜ぶ男が大勢押し掛けるというのにか?」


「まさか!皆様わたくしの家と持参金が魅力的なだけですわ。わたくし自身の事など二の次でしょう。わたくしの本性を知れば、皆逃げ出しますわ。」


「アリアナは何か誤解している。本当のアリアナを知れば、益々男が寄って来る。」


「そんな事はありませんわ。婚約解消した後は誰も寄っては来ません。たぶん?」


 アリアナは何を考えている?

 自信を持って、誰も寄って来ないと言い切るには、それなりの事をワザとしでかすつもりなのか。

 婚約破棄されてもいい様に。

 そう考えると、領地に引き籠るなどの言動も、辻褄が合う。

 アリアナの空色の瞳に視線を合わせる。

 彼女の瞳は、不安気に揺らいでいた。何か隠している。そんな表情だ。


「何を企んでいる?」


「内緒ですわ。ご心配無く。」


「心配しないわけはないだろう!アリアナの事は大事に思っている。」


「ありがとうございます。わたくしも殿下に妹の様に可愛がって頂き、嬉しかったですわ。」


 過去形で言われた事に引っ掛かりを覚える。

 まるで別れの挨拶の様だ。

 私の側を離れるなど、許せない。

 アリアナをどう引き留めるか。


 そう考えたところで、エリックが戻ってきた。

 その後、たわいも無い会話を楽しみ、アリアナはアカデミーに戻った。


 執務室にエリックと二人になり、早速、先程のアリアナの件を伝える。


「エリック、アリアナが何か計画している様だ。いや、クリストファーの方か?」


「アリアナが?何か言っていたのか?」


「アリアナはクリストファーが婚約解消すると確信していたぞ。クリストファーの動向を探らせてくれ。アリアナも、婚約解消後は領地に引き籠ると言っていたが、もしかしたら、姿をくらます可能性がある。彼女が行きそうな場所も、調べておいてくれ。」


「アリアナが、何か言っていたのか?」


「いや、はっきり言った訳ではないが、アリアナはクリストファーが婚約破棄を言い出すと、確信している様だった。王妃の方は、アリアナを諦めるつもりは無い。だが、クリストファーが王妃に知らせないまま、何か行動を起こすのだろう。それをアリアナは把握しているといったところか。」


「俺のところには、アリアナは何も言ってこなかったが?」


「迷惑かけるとでも思っているのだろう。とにかく調べてくれ。時間がない。アリアナが卒業までとこだわるのは、それまでに何か起こると確信しているのだろう。そして婚約破棄を受け入れ、身を隠すつもりかもしれない。」


「あのアリアナが大人しく身を引くか?」


「クリストファーと結婚したくはないのだろう。」


「いや、婚約解消は受け入れるだろうが…」


「婚約解消は歓迎するが、クリストファーがアリアナの名誉を貶す可能性がある。そうでもしない限り、王妃が認めないからな。だからクリストファーとその一派が、何かしら企んでいるはずだ。」


「ああ、わかった。部下を出しておくよ。」


 数日後の夕方、エリックが私の執務室へ入って来た。


「今から少しいいか?アリアナの件だ。」


「ああ。防音魔法かけておけよ。」

「もちろんだ。」


 ソファーに対面に腰掛ける。

 エリックは封筒に入った、分厚い書類を差し出した。


「クリストファーの行動調査と、アリアナの逃亡先になりそうな所のリストだ。」


「こんなにか…」


「まぁ、みてみろよ。」


 クリストファーの行動調査から、目を通す。

 呆れた事にカーラの言いなりになっている様だ。背後にクリストファー派の侯爵家が糸を引いている。


 クリストファーは、カーラからアリアナの悪口を吹き込まれ、それを素直に信じているらしい。

 卒業までにアリアナを断罪するんだと息巻いていて、腰巾着とカーラと一緒に、アリアナを断罪し、名誉を地に貶す計画を立てている。

 その場として、父兄が出席する卒業パーティーを選び、一部生徒を買収し味方を増やしていると書いてあった。


 思わず眉間にシワが寄る。

「バカな奴だ。半分でも血の繋がりがあるかと思うと、嫌になる。」


「同情するよ。」


「しかし、良くここまで調べたな。」


「クリストファー派に潜り込ませている配下がいるからな。」


 エリックは昔から抜け目ないが、ここまで先回りしていたのかと驚く。


 もう1組の書類は、アリアナに関しての書類だったのだが…

 そこには、アリアナの個人資産、交友関係、立ち寄りそうな場所が書いてある…が、しかし…


「エリック、アリアナの個人資産とは?」


「アリアナが自由に動かせる資産だ。これは親父も手を出せない。」


「だとしても、額が多すぎだろう?誰かから遺産相続でもしたのか?」

 それは伯爵家の年間予算ぐらいある。

 アリアナが遺産相続したとの報告は来ていない。


「だよなぁ。俺より多いし。相続じゃない。アリアナが自分で稼いだ金だからな。」


「アリアナがどうやって?」

 アリアナが稼いだと言われても、信じられない。

 普通、貴族の令嬢は個人資産など持たない。

 例外は遺産相続で、令嬢が相続した場合だ。


「前にも言ったが、アリアナは、色々と新しいアイデアを出して、我が家の収益を大幅に増やしたんだ。そしたら、親父に交渉して、増えた利益の一部を自由に使いたいと自分名義にさせた。そこまでは俺も知っていた。」


「ああ、そういえば、個人資産で援助するとか言っていたな。」


 イスマエルの国への援助の時に、自分の資産を使うと言っていたが、令嬢に出来る範囲など限られていると高を括っていた。あの時に確認するべきだった。


「ああ。だが、今回調べたら、まだ色々と出てきたんだ。アリアナは、王都に魔法具店やセレクトショップを経営しているらしい。お前も行った事があるだろう?あの魔法具店もだ。あいつ俺に内緒で何をしているのか…」


「魔法具店?セレクトショップ?」


「ああ、魔法具店は3店舗、セレクトショップは女性向けの輸入品販売だ。どちらも表向きは別の人物が代表になっているが、実際はアリアナが管理している。隠れるとすれば、これらの店のどれかが、一番都合が良いだろう。」


「そうか。」

 アリアナの行動力に、改めて驚いてしまう。

 まだ学生の身でありながら、一体何をしているのか。勉強と妃教育だけでも忙しいのに、魔法師団にも顔を出している。その上、店を経営していると聞けば、もう呆れるしかない。


「その店に身を寄せるのであれば、保護する事も簡単なんだが。」


「他にもあるのか?」


「ああ。孤児院や修道院にアリアナは慈善事業として、広く関わっている。毎年かなりの額を、個人資産から、それぞれに寄付をしている。王都やその周辺や我が家の領地だけでなく、国内全てに何らかの関わりがある。事情を知った者が同情して匿ってもおかしくはない。」


「孤児院と修道院って、国内にどれだけあるか…」


「だろう?追跡魔法も遠くなれば精度が落ちる。ピンポイントで居場所が特定出来るところであればいいんだがな。正直俺もアリアナがここまで手を伸ばしているとは、思わなかった。」


「厳しいな。」


「まだあるぞ。アリアナとしてではなく、リアとしてなら、城下の下町に知り合いは沢山いる。こっそり姿を変えてなら充分あり得る。」


「下町であれば追跡魔法で追えるだろう?」


「下町だから住民の結束が固いんだ。匿うと決めたらとことん匿うだろう。彼らのネットワークを使い、遠くに逃げる事も出来る。」


「厄介だ。」


「一番厄介なのは、アリアナの資産を換金すれば、海外に逃げる事も可能だ。あいつは言語が堪能だからな。海外の可能性も否定できない。もちろん近隣の王子達の国が候補になるだろう。今、同期だけで4人の王子達がいる。4人ともアリアナに心酔しているから、アリアナが頼めば、喜んで手を貸すだろう。」


「考えたくもないな。」


「特にイスマエルの国は、大使と仲良くしているからな。大使はアリアナが援助をしている事を知っている。恩人として崇めているぐらいだ。喜んでアリアナに手を貸すだろう。大使館に逃げ込まれると、いくら追跡できても手出しできない。」


「一番嫌なパターンだ。」


「ああ。一番いいのは、その前に確保する事だな。」


「やっぱり呼び戻すか。」


「いや、それは難しいだろう。アリアナがクリストファーの計画を把握しているとして、一方的にやられるとは思えない。必ずアリアナも何か計画して反撃するはずだ。だから大人しく呼び戻されたりはしないぞ。」


「頭が痛いな。」


「だが、クリストファーを追い落とすには絶好の機会だ。俺たちも証拠を掴み、陛下に進言しよう。そうすれば、アリアナとクリストファーの婚約は解消され、お前とアリアナの婚約も決まるだろう?親父も応援してくれている。」


「ああ。ありがとう、エリック。」

 少し気分が上昇する。我ながら単純だ。


「頼むぞ。お前を見込んで大事なアリアナを託すんだからな。アリアナが、本当に誰とも結婚したくはないのであれば、俺が一生側面倒を見る。いつでも奪い返すから覚えておけよ。」


 エリックは真剣だった。彼のアリアナに対する気持ちも薄々気付いていたが、奪い返すと言われ、身が引き締まる思いがする。


「怖いな。義兄上は。心配せずとも、大事にするさ。」


「ああ、それとちゃんとアリアナを口説くんだぞ。」

「わかっているよ。」


「俺は親父にクリストファーの件を報告してくる。」

「頼むよ。」


 エリックは執務室を後にした。


 残された私は、溜息を吐く。

 しかし、アリアナは一体何を考えているのか。


 クリストファーがアリアナの名誉を傷付けるなど、許しがたい。それと同時に、アリアナが何も相談してくれない事に腹が立つ。

 何をするつもりなんだ?アリアナ。

 危ない真似だけはしないでほしい。


 机の引き出しをそっと開き、小さな箱を取り出す。

 蓋を開けると、銀色の指輪が二つ並んで光っていた。私の紋章を刻んだそれらは、一つはアリアナで一つは私の物だった。

 プロポーズする時に、アリアナに渡そうと準備したものだ。

 クリストファーが婚約解消するのであれば、それと同時に、結婚を申し込もう。

 決してアリアナの名誉を傷付けさせたりしない。

 そっとアリアナの指輪に口付けて、そう誓ったのだった。



お読みいただき、ありがとうございました。


次回の更新も不定期とさせて頂きます。

未熟者で申し訳ありません。

新型コロナのニュースばかりで、気が滅入りますが、皆様もお身体をお大事になされてください。

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