【番外編】アカデミーに戻る(アリアナ視点)
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アリアナ視点のお話です。
アカデミーに戻って来た。
早速、王子様達が出迎えてくれたが、挨拶だけになってしまい…お目付役の兄がいるので、会話でさえ、睨まれそうだ。
先生方に挨拶をして、兄と寮の自分の部屋へと向かう。私が使っている部屋は、父兄は許可があれば入室が可能だから、兄には、もう帰っていいと言ったのに。
「お兄様、わたくしはもう大丈夫ですわ。」
「いや、この部屋にも危険が無いか確認しなければ。」
「危険なんて…」
兄は魔法を使いながら、部屋の中を探索する。
すると、居間の花瓶を手に取った。
「お…」
兄が口に人差し指を当てて、静かにする様に伝えて来たので、私も黙る。
すると兄は花瓶から、小さなコインほどの機器を取り出した。そしてそれを慎重にポケットから取り出したハンカチで包み、更に魔法をかける。防音魔法かな。
そして、小声で私に教えてくれた。
「魔法具の盗聴器だ。」
兄はそう言って、寝室も調べる。
幸い、寝室には仕掛けられていなかった。
私達は寝室に移動する。
「盗聴器?何故ここに。」
「誰かがお前の動向が知りたかったと言う事だろう。」
「そう言えば、今まで見なかった花瓶ですわ。」
「全く、ここの警備はどうなっているのか…」
「メイドに、見舞いの花を飾って欲しいと、お金を握らせて頼んだのでしょう。誰かは調べても、無駄ですわ。」
「我が国の者か、他国の王子か。」
「我が国の者でしょう。他国の王子様方が仕掛けた物とは、思いません。」
「他国の王子たちは、お前に求婚しているだろう。」
「お兄様、わたくし自身を知りたいと思う方なら、きっと、寝室にも仕掛けますわ。今回居間だけでしたから、わたくしの動向を調べ、罠を仕掛けるつもりだったのでしょう。」
「お前なあ、他人事みたいに。気持ち悪くは無いのか?」
「やられたら3倍返にして返して差し上げますわ。幸い盗聴器はそのままなのでしょう?」
私は口角を上げる。
「お前、クロードから大人しくしとけって言われただろう?」
「あら、売られた喧嘩を買うだけですわ。それも高く買って差し上げるのです。相手も文句はないでしょう?」
兄はため息を一つ吐き、私を睨む。
「盗聴器は預かって置く。クロードに報告する。」
「お兄様、そんな事すると、クロード殿下の暴走が止まりませんわ。わたくしにお任せくださいな。危ない真似は致しませんから。盗聴器の販売記録を調べて、相手を割り出すぐらい、造作も無い事です。」
そう、犯罪に使われる可能性があるものは、きちんと管理する様にしている。
「いくらなんでも、誰が買ったかまでは、わからないだろう?」
兄に向けて、笑みを浮かべてみる。
「お兄様、シリアル番号ってご存知?」
「何だ?それは?」
「盗聴器を扱っているのは、ルミエール商会だけよ。あそこは商品一つ一つに番号を付けているわ。そしてその番号と誰に売ったかまで、記録している。特に盗聴器などは、身元確認が厳しいの。そして違法な事に使われた場合、購入者が責任を負うと決められているの。例えそれが盗まれた物であっても。」
「お前、どこでそんな知識を身に付けたんだ?」
兄は訝しげな様子で、私を見る。
「聞いただけよ。だから番号を控えてルミエール商会に調べさせるわ。明日には結果が届くわよ。楽しみね。盗まれた物で責任問えるなら、あの盗聴器は使えるわ。」
兄が鋭い眼差しを向ける。これは本気モードかな。
「お前、ルミエール商会に関わっているな?」
「お父様が出資しているだけよ。だからわたくしも時々遊びに行っているだけ。」
「俺も調べているぞ。実質的な経営はお前だろう?今まで信じられないと思っていたが、今の話しで確信した。俺に内緒で、一体何をしているんだ?」
ああ、やっぱりバレていたみたい。
「わたくしは経営はしてはいないわ。遊びに行く事は、お父様には許可をいただいているし。」
そう、今は経営は任せている。
もちろん私も口出しはしているけれど。
「遊びって…実際は何をしているんだ?」
「ただの遊びよ。」
あくまでも、知らない振りをした。
でも、商会の事がバレたのであれば、訪問回数は減らさないと行けないかしら…
「お前なぁ…」
兄は呆れて何も言えない様だった。
結局、シリアル番号だけを控えさせてもらい、盗聴器は兄に取り上げられてしまった。
兄は私の部屋に強力な防御魔法をかけ、クロード殿下に報告すると、帰っていった。
自分でも出来ると言ったけど、信用なかったらしい。
兄が帰った後、私はエリス様のところへと、挨拶に行く。今回の事件に巻き込んでしまい、どんな反応をされるかと、恐る恐る尋ねる。
『エリス様、わたくしのせいで、怖い思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。まだお友達でいて下さいますか?』
彼女は私の言葉を、目を輝かせ聞いている。あれ?私はまた何か変な事を言ったのだろうか?
『勿論です。わたくしの方こそ、助けて頂き、ありがとうございます。アリアナ様がお元気になられて、よかったですわ。』
彼女が微笑みながら、応えてくれたので、ホッとする。エリス様とは、私の身分を気にせず話してくれる数少ない友人になったばかり。私のせいで、事件に巻き込まれ、私のお転婆な姿も見せてしまった。嫌われたらどうしようと不安だったけど、杞憂だったみたい。
『よかった。ところで、ご相談が…』
ついでにとばかりに、ミモザの日について、相談する。彼女は喜んで手伝ってくれると言ってくれた。
その数日後、エリス様に付き合って、レオンハルト殿下とお茶をする。
レオンハルト殿下とエリス様もとても仲が良く、微笑ましく思っていたら、レオンハルト殿下の求婚が始まった。会えば必ず結婚の申し込みをするなんて、聞いたことないけど。
前世では、全く縁がなかったし、今世では早くから婚約していたしで、実際に言われたら、どれだけ胸がトキメクのかと期待していたのに…
こうも頻繁に言われたら、もはや揶揄われているか、挨拶にしか思えない。
う〜ん。好きな人から言われるとまた違うのかな。きっと違うはずよね。
そんな事を考えながら、私も言い慣れた断りの言葉を繰り返す。
王太子の妃なんか、私に務まる訳が無い。
今でさえ、猫を何枚も被って、誤魔化しているのに。
気を抜くと、前世の私が出てきてしまう。
これ以上窮屈な生活は無理。
確かに、国王陛下には、男子しか子がいない為、隣国から妃を迎えたいと言われれば、私も対象者になる事は間違いない。だけど私は婚約している。今は。
婚約者が誰かはさて置き、今は最大限に婚約の事実を言い訳に使う。
以前から思っていたけれど、レオンハルト殿下はお友達としては、楽しい方だと思う。俺様ってエリス様から言われていて、王族らしい強引なところはあるけれど、人を惹きつける何かがある。
隣国は人の距離感が近く、親しみやすい国民性を体現した様に、気軽に声をかけてくるわよね。
そんな事を思いながら、エリス様達との会話を楽しんだ。エリス様が卒業式まで残れないことは寂しい。
でも、心配かけない為には、その方がいいかも。
レオンハルト殿下が、エリス様に街を案内して欲しいと言うので、承知したけど、殿下も一緒なんだろうな。うーん。エリス様が一緒だからいいかとも思うけど、折角だから女子を数人誘っておこう。
そんな事を考えていたら、時間はあっという間に過ぎ、お茶会はお開きになった。
後日、このお茶会のことが、イスマエル殿下とルーカス殿下にバレてしまい、二人ともお茶会をする約束をしてしまい…
兄には内緒だなぁ。
それからの日々は、ミモザの日の準備をしながら、卒業式の断罪イベントに備え、証拠集めをする。
クリストファー殿下が強行手段に出なければ、私も穏便に婚約解消する事ができるのに。そうあって欲しいと思うけれど。
あの盗聴器は、次の日には身元が特定でき、アカデミーに通う子爵家の子息が購入した事がわかる。
クリストファー殿下の腰巾着でカーラに入れ込んでいる男子生徒の一人だ。
カーラの差し金だろう。
一応、兄には報告をする。だがアカデミー内の事で政治的には意味が無いと念を押す。
そしてミモザ祭りが終わるまでは準備が忙しく、魔法師団には行けないと伝える。
やられたら3倍返し。とは言え、私自身も色々とカーラを探っているので、お互い様だ。
最も私の探り方は、ルミエール商会の最新鋭の商品を使っているので、もっと性能がいい。
しかも防犯目的と学校にも公認させている。
そんな事を考えて過ごしていると、時間はあっという間に過ぎていく。
ミモザ祭りの前日になる。
その日はとても忙しく、魔法師団に行く事が出来なかった。
なんだかんだで忙しく、アカデミーに戻ってから一度も顔を出していない。
ミモザ祭りの当日もとても忙しかった。
ミモザを配り終えた時は、どんなにホッとした事か。皆を労い、お茶をする。
今年はクラスの皆にミモザを送った。
私自身にも皆からミモザを頂いたので、部屋に持ち帰る。
王子様達も沢山貰っていたなぁと振り返る。
私のミモザにはクッキーは付けていない。
部屋に花を飾って貰い、カードを集めていたら、兄から通信魔法が入る。
「クロードがお前を呼んでいるから、今から抜け出せるか?」
やっぱり、お呼び出しが来ましたか。
「今から行こうと思っていたの。お兄様の部屋へ、転移するわ。」
私はそう返事をして、バスケットにミモザとケーキとクッキーを入れる。
そしてこの間まで使っていた部屋へと転移した。
転移ポイント作っていてよかった。
今までは父の執務室だったけれど、魔法師団までは少し距離があるし、何よりも父に顔を見せなくていい。
父は可愛がってくれるけれど、私の地も知っているから、顔を合わせるとお小言が始まる。
今日は、父のお小言は無いかと安心していたら、兄の執務室には、兄の他に眉間にシワを寄せたクロード殿下が待っていた。
う〜ん。今回はどんなお説教だろうか。
回れ右して逃げ出そうとする足を、なんとか抑えて、二人に優雅に挨拶をした。
お読みいただき、ありがとうございました。
拙い文章にお付き合い頂き、大変感謝しております。
次回もお約束は難しいですが…
お付き合い頂けますと、幸いです。




