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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】クロードとアリアナ(クロード視点)

ブックマーク等、ありがとうございます。

誤字報告も感謝です。


更新遅くなりましたが、前話のクロード視点の続きです。

先に話を進めるつもりでしたが、ついクロード視点の続きを書いてしまいました。

 魔法師団の私の部屋に、アリアナと転移する。エリックに魔法師団の撤収を任せた為、今は二人きりだ。


 アリアナが側にいる。それがどれだけ私の心が満たされる事か。

 アリアナは私から離れようとするので、腕を引っ張り、抱きしめた。


「アリアナ、心配した。どこへも行くな。ずっと私の側にいて欲しい。」


「殿下!離してください!わたくしはもう子供ではありませんわ!」


 アリアナは一生懸命抵抗する。彼女の魔法力を使えば簡単に抜け出す事はできるのだが、あくまでも魔法を使わないで、抵抗するところは可愛いものだ。


「嫌だね。離すとアリアナは逃げるだろう?」


「わたくしはクロード殿下のお側に、いつまでもいるわけにはいきません。それに、殿下もそろそろお妃様を、お迎えしなければならないのでは?わたくしがお側にいると、誤解を招きかねません。」


 アリアナから妃を持てと言われるとは心外だ。誤解しているのはアリアナの方だ。

 私はアリアナを妃に望んでいるというのに。

 だが、クリストファーとの婚約解消するまでは、私の妃にするとは言えない。

 私の妃になって欲しい。そう言えない代りに、アリアナを抱きしめる腕に力を入れる。


「クリストファーとの婚約は解消させる。もう少し待ってくれ。」


「殿下はこの婚約には関わらないで下さいませ。」


 平然と言い放つアリアナに苛立つ。


「何故だ!クリストファーと結婚したいのか!」


 私は腕を緩め、アリアナの顔を覗き込む。

 空色の瞳が一瞬悲しげに揺れたが、すぐに力強い眼差しに変わる。


「お二人の間に、わだかまりを残したくはありません。クリストファー殿下も、わたくしとの婚約は不本意でいらっしゃる様ですので、わたくしが解消に向けて働きかけます。きっと大丈夫です。」


 彼女が自分の主張をハッキリ言う時は、何か企んでいる。


「何を考えている?」


「内緒です。ですが、クリストファー殿下との婚約は多分近いうちに、解消する事になりますわ。クロード殿下には、今まで妹同然に可愛がって頂き、感謝しております。殿下も早くお妃様をお迎えになられて、お幸せになられて下さいませ。」


 まるで別れの言葉の様だ。

 途端、アリアナをこのまま閉じ込めてしまいたいという、ドス黒い感情に支配される。

 私の元から離れ、何処へ行こうというのか。

 先程までアリアナを口説いていたレオンハルトが、何か入れ知恵したのか。


 私は怒りのあまり、彼女の両腕を指が食い込むぐらいに掴んでいた。


「レオンハルトのところへ行くのか?」


「まさか!」

 アリアナは驚いた様に、直ぐに否定した。

 だが、私はアリアナから何処にも行かない、私の側にいると言って欲しかった。


「では、何を考えている?イスマエルの国へ行くのか?それともルーカスの元へ行くのか?」

 この二人もアリアナを狙っている。

 アリアナの魔法力が欲しいのか、彼女自身が欲しいのか。いずれにしろ、アリアナを渡す気など無い。


「殿下、腕が痛いです!」


 アリアナの腕を握る指に、更に力を入れてしまったらしい。慌てて、指の力を緩める。


「誰のところに行くつもりか?」

「どなたの所へも行くつもりはありませんわ。」

「本当か?」

「本当です!だから離してくださいませ。」


 俺はアリアナの腕を掴んでいた手を彼女の腰に回し、腕の中に囲い込む。


「では、クリストファーとの婚約をどうするつもりなのだ?」


「それは…クリストファー殿下の方から婚約破棄されますわ。きっと。」


「王妃が許すか?」


「王妃陛下には内緒でしょうね。王妃陛下の元へ婚約破棄の連絡が入った時には、もう引き返せなくなっているでしょう。あのクリストファー殿下には考えられないシナリオですから、きっと裏で糸を引いている人物がいるはず。」


 アリアナは最後の一文は考え込む様に告げる。


「シナリオ?」


「ああ、忘れてくださいませ。独り言ですわ。」


 彼女は何かを掴んでいる。そう確信する。

 そしてこれから何か行動を起こそうと考えている。


「アリアナ、何を知っているのだ?何をするつもりなのか?」


「何も知りませんわ。」


「アリアナ!知っている事を白状しろ!」


「嫌ですわ。まだわたくしの推測ですし。証拠を掴まないとお話できません。」


「頼むから、大人しくしていてくれ。心臓が持たない。クリストファーとの婚約は、私が父に頼んで解消させる。だからアリアナは動くな。」


 父には、私の気持ちとクリストファーの行動を報告している。クリストファー派の貴族も、アリアナとクリストファーの結婚は望んでいない。

 早晩二人の婚約は解消されるだろう。

 ただ厄介な事に、他国の王子たちが我が国宛に、アリアナとの婚姻を申し出ている。

 クリストファー派はこれ幸いとばかりに、婚約解消させ、他国に嫁がせる事で、国の役に立つ方が良いではないかと騒ぎ立てている。

 私にファーガソン公爵家の後ろ盾ができると、クリストファー派は困るからだ。


「この婚約はわたくしの問題です。わたくし自身でどうにかします。クロード殿下を巻き込む訳にはいきません。」


 そんな事は無い。彼女が婚約した時から、私の問題だ。私がアリアナと婚約したかった。何度も諦めるべきだと思ったが、アリアナの屈託のない笑顔や純粋に私を慕ってくれる姿を見ると、どうしても諦めきれない。

 せめて、クリストファーがアリアナを大事にして、二人が幸せな恋人同士であれば、私も諦めがついたかもしれないが…

 いや、それはそれで許せないだろう。

 私は被りを振る。


 だが、クリストファーとアリアナの距離は広がるばかりだ。その事に安心していた。

 母の言葉を信じて、自分を磨き、彼女に相応しい王子となる様努力した。


「弟の不始末は、兄である私も責任がある。」

 

「わたくしはご兄弟の争いは望みません。わたくし自身の問題ですから、どうかお見逃し下さいませ。」


「ダメだな。アリアナを危険にはさらしたくはない。一体何をするつもりだ?何を知っている?」


「何も知りません。ですが、卒業迄に何かあるはずです。わたくしが知っているのは、それだけですわ。」


 卒業迄に何があるのか?

 アリアナが口を割らなければ、独自に探らせるしかないか。アカデミーはやはり危険だ。


「やはりアカデミーには戻さない。アリアナはここにいればいい。」


「クロード殿下、わたくしの事はお構いなく。自分の事は自分で何とか致します。既にレオンハルト殿下にわたくしが意識不明ではない事が知られてしまいました。これ以上、此方でお世話になる事は出来ません。卒業まであと少しです。ご心配は無用です。」


「卒業後は、どうするつもりだ?」


「クリストファー殿下との婚約が解消できれば、しばらくは領地の別荘にでも、羽を伸ばしにいきますわ。」


「他国の王子たちが、アリアナを狙っているのにか?」


「あら、殿下もわたくしの力をご存知でしょう?わたくし一人であれば、如何様にも対処致します。殿下と義兄妹になれないのは、少し寂しいですが。」


 義兄妹などになりたいわけでは無い。

 生涯の伴侶になって欲しいのだ。

 アリアナの特別な男になりたい。頼って欲しい。

 領地などには行かせたくはない。いつも顔を見ていたい。


「クリストファーとの婚約は解消させるが、領地に行く事は許さない。魔法師団へ正式に入団する様に。」


「それは無理ですわ。父も新しい縁談を用意するでしょうし、魔法師団へ入っても直ぐに辞める事になれば、殿下にご迷惑をお掛けしてしまいます。」


 クリストファーとアリアナの婚約が解消されれば、アリアナと私の婚約に関しては、父もファーガソン公爵も了承している。

 クリストファー派の貴族達を黙らせる事と、他国からのアリアナとの婚姻の申し込みを断るだけだ。


「アリアナ、頼むから私の目が届くところへ居てくれ。レオンハルトもイスマエルも魔法力が高い。ルーカスは知恵が回る。彼らはアリアナを手に入れようと躍起になっている。だから、本当はアカデミーにも戻したくはない。」


「アカデミーぐらいは卒業させて下さいませ。」


 アリアナは懇願する様に、下から私を見上げる。

 昔から、この瞳には弱い。


「卒業後、魔法師団へ入るのであれば、許そう。」


 そう言えば、横槍が入る。

「卒業後は親父がアリアナは花嫁修行させるって言っていたぞ。魔法師団は諦めてくれ。」


 いつの間にか、部屋に入って来たエリックだった。

 私の花嫁になる為の花嫁修行なら大歓迎だが、他の男の花嫁になる為であれば、許せない。

 眉間にシワがよるのがわかる。


「悪い、ノックしたが、反応がなかったから、心配して入ってしまった。アリアナを放してやれよ。」


「ワザとだな?」

 俺はエリックを睨む。


 彼は口角を上げる。

「当たり前だ。可愛い妹に手を出されたら、たまらないからな。」


「お兄様、クロード殿下はそんな不埒な殿方とは違いますわ。だいたい私は妹扱いですのに。」


「だってさ。クロード、信頼があって良かったな。」


 私がアリアナにとって、兄の位置にあると、思い知らされる。そんな私を見て、エリックは笑っていた。

 エリックがアリアナに話があると言うので、三人でソファーに座る。


「アリアナ、3日後にアカデミーに戻すから、今晩意識が戻った事にする。親父には話している。明日、明後日は大人しくしていろよ。見舞いが来たら大変だからな。」


「見舞いって。どなたがいらっしゃるのですか?お断りして下さいな。」


「筆頭が王妃陛下だろう?クリストファーも来るかもな?」


「エリック、断れ。」

 クリストファーなどには会わせたくはない。間髪入れず、エリックに言い放つ。


「婚約者が見舞いに来るというのを断れないだろう?他国の王子達も面会の申し込みが来ている。外交部は見舞いぐらいいいだろうと煩いし、一度は許可しないといけないかもな。」


「却下だ。」


「お兄様、今更弱った振りなど、難しいですわ。だいたいクリストファー殿下がわたくしの見舞いなどいらっしゃる訳ありません。」


「王妃陛下がクリストファーと連れだって見舞いに行きたいと、アリアナが運ばれた当初から仰っていたんだ。意識を取り戻したと伝えれば、嬉々として来るだろう。」


 エリックがそう告げると、アリアナはあからさまに嫌な顔をする。


「どなたがいらっしゃっても、お兄様は一緒に居てくださるのでしょう?」


 アリアナがエリックを頼るのを見て、腹立たしい。

「私が同席しよう。」

 クリストファーとアリアナを会わせたくはない。会わせなければならないのであれば、側にいたい。


「いや、それは無理だ。心配するな。俺が監視しておくよ。」

「嫌だわ。監視なんて。わたくしが何か悪い事をしているみたい。」

「実際色々やらかしているだろう?」

「お兄様、酷いですわ。わたくしはいつも大人しくしていますわ。」


 兄妹でまたやり取りが始まる。いつもと変わらない会話に、安堵すると共に、熱くなっていた頭がだんだんと冷静さを取り戻す。


 アリアナが何を知っているのか、どう動くのか、探り、彼女の身の安全を守らなければならない。

 彼女がアカデミーを卒業した後、魔法師団で手元に置き、クリストファーとの婚約を解消させ、私との結婚を進める為の手段を考える。


 私がアリアナを幸せにする。

 アリアナがアリアナらしく生きていける様に守っていこう。


 そう心に誓うのだった。


お読みいただき、ありがとうございました。


ストーリーがなかなか進まず、申し訳ありません。

寒かったので、片頭痛が…


未熟な文章にお付き合い頂き、感謝の気持ちで一杯です。


次回は明後日か明々後日に。



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