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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】レオンハルトとクロードの対峙(クロード視点)

ブックマーク等、ありがとうございます。

誤字報告も勉強になります。感謝です。


前々話のクロード視点です。

レオンハルト視点と同じ時系列なので、読まなくとも、流れには支障はありません。(いつもより長くなってしまい…)


 レオンハルトが訪ねて来た時に、嫌な予感はしていた。


 彼らが退出した後、魔法師団に戻ろうと回廊を歩いていると、アリアナに付けていた護衛が駆けてきた。


 アリアナが部屋にいないと、掃除に入ったメイドが伝えて来たそうだ。


 慌てて魔法師団のアリアナの部屋へ向かう。

 そこには、今まで着ていただろうドレスが椅子に掛けてあるだけであった。


 魔法師団の団員にアリアナを探す様命じ、私は追跡魔法で居場所を探る。

 今、王宮内にレオンハルトがいる。鉢合わせでもすれば、彼女を連れ去られてしまう。そんな焦りがあった。


 幸い、アリアナから身の危険を感じる様なシグナルは無かったし、居場所も王宮内の中庭とわかったので、急ぎ中庭に転移する。


 すると、レオンハルトに腕を取られたアリアナが見えた。


「そこまでだ!」

 私はアリアナを奪い返すべく近づく。


 レオンハルトはアリアを背に庇う。


「どういうつもりかな。レオンハルト。」


「それはこちらの台詞です。アリアナ嬢のどこが意識不明なのですか?」


 アリアナは完璧に変身していた。

 何故、レオンハルトにアリアナだとわかったのか?

 アリアナ自身が声をかけたのか?

 だが、まだアリアナではないと通せるだろう。

 彼女は、魔法師団の制服を着て、外見は完全に違う。


「彼女はリアだ。魔法師団の者だ。言い掛かりはよしてくれ。リア、かくれんぼは終わりだ。こちらにおいで。」


 私はそう言って、アリアナを取り戻すべく、手を伸ばす。

 だが私の手が届く前に、レオンハルトがアリアナを抱き抱え、転移魔法を発動させた。


 慌てて魔法解術をかける。だが、レオンハルトの防壁魔法がそれを阻んだ。


「アリアナ!」


 私が伸ばした手は届かなかった。


「エリック!追うぞ。」


「ああ、魔法師団を連れて行く。先に行ってくれ。」


 アリアナにかけた追跡魔法を追う。

 万一、彼の国に連れて行かれたら、アリアナを取り戻す事が難しくなる。


 だが二人での移動だと、無理をするとは考えられない。まずは近くに移動する筈だ。


 そう考えた事は間違いなかった。

 アリアナの気配は、王都内にある邸宅が建ち並ぶ一角にあった。

 直ぐに追いついたエリックが部下に調べさせると、持ち主はベルンブルグ国出身だという。間違いない。


「どうする?踏み込むか?」

「いや、国際問題にしたくはない。正面から行こう。」


 そう言って、正面から訪問する。

 執事らしき者にレオンハルトに会いたいと言い、制止されるのを無視して、彼の部屋へと入っていく。


 そこには、元の姿に戻ったアリアナとレオンハルトの姿があった。


「アリアナ!無事か!」


 私は駆け寄ろうとする。

 アリアナは驚いて、立ち上がっている。

 奪い返すなら、今だと手を伸ばす。

 だが、レオンハルトがアリアナの腕を取り、後ろに隠してしまった。


 レオンハルトは鷹揚に言う。

「お掛けになって下さい。ここは我が屋敷です。客人としていらしたのですよね。」


 妙に落ち着いた態度は、勘に触る。

「アリアナを返して貰おう。」


 彼は口角を上げながら、挑戦的に睨み返してきた。

「アリアナ嬢がそれを望むと?」


「当然だ。アリアナ、さあ帰ろう。」


 アリアナに近付き、こちらに引き寄せようとしたが、レオンハルトに遮られてしまう。


「アリアナ嬢を軟禁していた貴殿に、返す訳にはいかないな。」


「お前こそ、勝手に連れ去ったではないか!」


「貴殿から救い出しただけだ。アリアナ嬢には危害を加えていないし、彼女が嫌がる事はしていない。彼女が脱走していると言うから、手伝っただけだ。」


 私はアリアナに尋ねる。

「アリアナ、そうなのか?」

 アリアナが同意してレオンハルトとここにいるとは、考えられないし、考えたくもない。


 アリアナはレオンハルトの後ろから顔を出す。レオンハルトは彼女の〈脱走〉という言葉をそのままの意味に取り、彼女をここまで連れて来ただけだと。


 アリアナはレオンハルトの横に出てきた。今すぐにでも、私の腕の中に取り戻したい。だがレオンハルトが、彼女の肩をしっかりと抱いている。

 嫉妬で狂いそうだ。その腕を切り落としたくなる。

 だが、そんな私の事はお構いなしに、エリックとアリアナは言い合いを始める。


「お前、何をレオンハルト殿下に言ったんだ?」


「脱走しているから、放っておいて欲しいと。」


「やっぱりお前が原因か。」


 アリアナとエリックが次から次へと言葉の応酬を始める。もはや兄妹喧嘩の様だ。私は見慣れているとはいえ、レオンハルトはさぞかし驚いているだろう。そう思って彼に視線を移すと、目を見開いている。

 二人はそんな彼の様子を気付かず、言葉を続ける。


 途中、レオンハルトの名やクリストファーの名が出て来るが、二人は構わず続けている。

 クリストファーの名前が出てくると、腹立たしくなる。エリックも今ここで名前を出さずとも良いものを。


 ふとレオンハルトに視線を移すと、彼からは敵意が抜け、空いている手を口元に当てている。

 笑いを堪えているのか?


 レオンハルトはすっかり毒気を抜かれてしまった様だ。


「エリック、アリアナ、それくらいにしておけ。レオンハルトが呆れている。」


「いや、呆れている訳ではないが…とにかく掛けてくれ。座って話そう。」


 彼はアリアナを隣へエスコートする。

 素直に従っているアリアナを見ると、腹立たしくなるが、今ここで敵対する事は得策ではない。

 レオンハルトの魔法力はかなり高い。

 私と同等と言っても良いだろう。

 ましてや、この屋敷はレオンハルトの隠れ家だとすると、彼の国へと通じる転移ポイントがあるに違いない。転移ポイントが設けてあれば、二人の移動でも正確に確実に移動できる。

 アリアナが彼の隣にいる間は、また攫われる可能性がある。彼女を取り戻すまでは、我慢だ。


 エリックが、謝罪と同時に、レオンハルトからアリアナへの結婚の申し込みを断る。

 だが、レオンハルトは全く動じず、諦めるつもりは無いと言う。


 あまりにも、はっきり言い切る彼に、腹立たしく感じながら、私もはっきり断る。

「諦めてくれ。アリアナは他国には出せない。」


「それは彼女の魔法力の為ですか?その為にクリストファーと結婚させると?」


 やはりレオンハルトはアリアナの魔法力を知っているのか。

 私が口を開く前に、アリアナが、自分とクリストファーの婚約は魔法力の為でなく、政治的なもので魔法力は関係ないと言い切る。


 確かに政略結婚である事は間違いない。しかし王妃はアリアナの事が気に入っている。彼女にクリストファーの手綱を握らせたいと考えている様だ。


 レオンハルトは、アリアナに向き合って、手を握る。

「政略ならば我が国の力で婚約を解消させよう。アリアも望んでいないのだろう?」


 ドサクサに紛れ、アリアナの手を握るレオンハルトにイライラする。

「手を離せ。国の力を使うとは、どういう意味だ?」


「そのままの意味ですよ。最初は外交から。それでダメなら最終手段を使うだけです。」


 レオンハルトはアリアナの手を握ったまま、私に向かい、挑発的に言う。アリアナに手出ししようとするこの男を殴り倒したい。そんな衝動を抑えながらキッパリと言った。


「我が国の問題は我が国で解決する。余計な手出しは無用だ。」


 アリアナもレオンの手を解き、レオンハルトに向かい、はっきりと告げる。


「レオンハルト殿下、どうぞご心配なく。殿下のお手を煩わせる事など、出来ません。先ほど殿下が仰っていた様に、わたくしもクリストファー殿下との関係が少しでも良くなるよう努力したいと思いますわ。殿下もお国で婚約者候補の方が待ち構えていらっしゃるのでしょう?どうぞその方々から殿下に合う方をお選びになって下さいませ。」


 レオンハルトは、複雑そうな顔をしている。

 彼とアリアナの間にどんな会話があったのかはわからないが、クリストファーとの関係改善を示唆されると私もクリストファーに嫉妬してしまう。


 レオンハルトは怒りを含んだ口調でアリアナに問う。

「アリアはクリストファーと結婚するというのか?」


「わたくしの意思は関係ないですわ。政略結婚ですから。」


 サバサバとしたアリアと対照的に、レオンハルトも私もエリックも眉間にシワが寄る。


「同じ政略結婚であれば、俺のところでもいいではないか?俺は側妃も愛妾も持たないし、アリアを大事にするぞ。」


 俺たちの前だというのに、堂々とアリアナを口説くレオンハルトを睨みつける。

「アリアナは他国には出さないと言っただろう。いい加減にアリアナから離れろ。」


「貴殿はアリアナ嬢が不幸な結婚をしてもいいと言うのか?」


 アリアナはクリストファーとは結婚させない。私がもらう。だが、今それを堂々と宣言出来ない事がもどかしい。


 アリアナはそんな私の気持ちも知らないで、実にあっさりと宣言した。


「レオンハルト殿下、わたくしの事はお構いなく。自分の事は自分でどうにかしますわ。」


「だが今、断れないと言ったではないか?」


「だから?わたくしにも考えがございます。どうぞご心配なく。わたくしは不幸になるつもりはございません。自分の幸せは自分で掴んでみますわ。」


 彼女のその言葉はクリストファーを自分に振り向かせると言っているように受け取れ、私は自分の眉間に更に深いシワがよるのを感じる。

 どうアリアナを説得するべきか?

 アリアナを手に入れようとするレオンハルトをはじめとした、周辺国の王子達の他に、クリストファーの事も対処しなければならないのか。


「アリアナは我が国で幸せにする。他国へは出さない。心配するな。」


 アリアナに言い聞かせる様に言ったが、アリアナは全く私の言葉を信用していない様だ。


「心配はしていませんわ。自分で何とかするつもりですから。ですから、クロード殿下、わたくしをアカデミーに戻してくださいませ。次に襲われる事があれば、上手く立ち回りますわ。」


「お前、囮になるつもりか?」

 エリックが驚いて口を挟む。


「まさか。彼らも今は動けないでしょう?お兄様方が目を光らせていますから。」

 彼女はニッコリと微笑む。


「だが、アリアナを攫った一味だけではなく、ここにいる奴の様に、隙あらばアリアナを連れ去ろうとする連中もいる。危なさすぎて戻せないな。」


 そう、もうすぐアリアナは卒業する。

 卒業までに、アリアナを手に入れようと考えている王子たちが、レオンハルト以外にもいる。

 護衛を付けていても、今回の様に急に転移魔法を使われると、守る事が難しい。


「アリアを閉じ込める貴殿には、言われたくはないな。私はアリアの意思を無視する様な事はしない。貴殿と違って。アリアがアカデミーに戻りたいと言っているのだ。戻すのが筋だろう?危険な目に遭わない様、私も守ろう。」


 レオンハルトは俺に鋭い視線を向けた後、アリアナに対し熱い視線を送る。


 だが、アリアナは全く相手にせずに、呆れた様な顔をした。

「レオンハルト殿下に守って頂くほど、弱くはありませんわ。」


「そんなにつれない事を言うな。困った時には頼って欲しい。いや、困らなくても頼って欲しいが。」


「お前に頼らずとも、私がいる。」


 アリアナがレオンハルトを特別な男と認識していないと安堵するが、レオンハルトの馴れ馴れしい態度に我慢も限界だった。


「お二人にはご迷惑をお掛けしませんから、アカデミーに戻して下さいませ。」


「お前、それだけは信じられないぞ。」

「お兄様、酷いわ。」

「だって事実だろう?大人しくする事が出来ないから、クロードが心配しているのだろう?」


「だからって、いつまでもアカデミーを休む訳にはいきませんわ。」


「そうだな。私がアリアが元気だと皆に伝えれば、良いのか。それともこのままアリアをアカデミーまで連れて行けば良いか?」


 アリアナにレオンハルトが同調する。

 全く腹立たしい。


 エリックが慌てて、レオンハルトに交渉する。

 今連れ去られる事だけは避けたい、そう判断したのだろう。


 結果、3日後にアリアナをアカデミーに戻す事になった。


 アリアナをアカデミーに戻す事には不安しか無いが、彼女を閉じ込めておくには、そろそろ限界だったのだろう。


 アリアナはレオンハルトに挨拶をした後は、大人しく私達と魔法師団に戻る。


 アリアナをどう説得して、大人しくさせるか、エリックでは無いが、頭が痛くなりそうだった。






お読みいただき、ありがとうございました。


先に話を進ませるつもりが…書き終わらず。前々話と平行して書いていたクロード視点とさせて頂きました。未熟者で反省しています。


次回は明後日か明々後日には更新できるよう、頑張りたいと思います。

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