【閑話】ミモザの日(エリス視点)
ブックマーク等ありがとうございます。
本日投稿二話目です。
先に投稿分、反映が上手く出来ず…
今はちゃんと反映されていると思います。
この回は閑話です。
もうすぐ、この国でミモザの日と呼ばれるイベントがある。男女問わず、想い人に告白したり、恋人同士や家族の愛情を深める為の日らしいの。
私の国にも、似たような風習があるのだけど、情熱的な国民性もあり、常に愛を前面に出していから、特別な日と言われても実感が湧かないのだけど、この国ではこの日は特別みたい。
初めての留学生活で、毎日がとても新鮮だったのだけど、この日に滞在できるなんてラッキーだわ。
先日は誘拐されてしまったけれど、アリアナ様の凛々しいお姿を見る事が出来て、怖いと思う暇もなかったわ。
アリアナ様はその時に怪我をされて、しばらくアカデミーをお休みされていたけれど、昨日から戻ってこられたの。
アリアナ様は同性の私から見てもとても魅力的で男前?で、凛々しいの。
ルイスなんかより、よっぽど頼りがいがあるんじゃないかしら。
レオンはアリアナ様に首ったけで、何とか振り向いてもらおうとと必死になっている。
あんなに冷めたレオンがとても情熱的に口説いている姿は、国元の令嬢にはとても見せられない。
私とレオンの婚約解消が発表された途端に、自分がレオンの次の婚約者だと吹聴している令嬢もいるけれど、アリアナ様の足元にも及ばないのに。
アリアナ様が昨日アカデミーに戻られて早々に、私のところに来てくださった。
『エリス様、わたくしのせいで、怖い思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。まだお友達でいて下さいますか?』
空色の綺麗な瞳が不安気に揺れていて、先日の凛々しいお姿とのギャップが!って、一人萌えてしまって。
どうにか気を持ち直し、アリアナ様にニッコリと微笑む事が出来た自分を褒めて欲しい。
『勿論です。わたくしの方こそ、助けて頂き、ありがとうございます。アリアナ様がお元気になられて、よかったですわ。』
『よかった。ところで、ご相談が…』
アリアナ様は私にミモザの日の風習を教えてくださったの。
そして、アカデミーでのイベントも。
アカデミー内では、アリアナ様が代表を務める国際交流部が、ミモザの花を意中の人や感謝を届けたい人に届けるというイベントを行うらしいの。
花を送りたい人が花代に送りたい人の名前とメッセージカードを添えて国際交流部に申し込むと、当日国際交流部から本人に花とカードが届けられる仕組み。
自分が直接渡す勇気のない女子生徒と一部の男子生徒の間では、人気のサービスらしいわ。
花はアリアナ様が用意され、花代として徴収したお金は、そのまま孤児院への寄付に充てられる。
『皆が幸せになれるなら、それが一番いいでしょう?』
そう微笑むアリアナ様は、同性の私からみてもとても素敵だった。
『本当はミモザケーキを一緒に添えたいのですが、作り置きができないので、クッキーを添える事にしたのです。そのクッキーを作るので、お手伝い頂けないでしょうか?』
『もちろんですわ!』
そうして、国際交流部の他の女子生徒と共にクッキー作りに励んでいる。
ちなみに男子生徒を募集すると、選抜が難しいので、毎年女子生徒の希望者になるらしい。
アリアナ様は見事な手捌きで、クッキーの生地を作っていく。
それを私達がこの型が可愛いとか、やっぱりハートよねぇとか、騒ぎながら、型を抜いていく。
抜き終わったクッキーは、アリアナ様の家の料理人の方が、焼いてくださったの。
「せっかくだから、皆で味見をしましょう!」
アリアナ様がお茶とクッキーを出して下さり、皆で恋バナが始まる。
「アリアナ様はクリストファー殿下にお輿入れが決まっていらっしゃるのでしょう?クリストファー殿下にミモザをお届けするのですか?」
「ええ、殿下にはお届けしますわ。」
アリアナ様は頬笑みを絶やさず、女子生徒達の質問に答えている。
「皆さまはどなたか意中の方がいらっしゃるのかしら?」
「私はレオンハルト殿下に送る予定ですわ。あの凛々しいお姿やお言葉、たまりません。」
レオンハルト、モテている。
見た目はとても良い。体格も良く、逞しい男性を好む女性であれば、彼に惹かれるのもわかるわ。
「私はイスマエル様に。あの異国情緒溢れる雰囲気がたまりません。」
「私はルーカス様に。何と言ってもお優しいのです。あの甘い表情、たまりませんわ。」
「私はヨハネス様に。守ってあげたくなる可愛さですもの。」
「皆様、王子様ばかりなのですね?」
私がそう尋ねれば、
「だって、この機会を逃すと、もうお会いできない雲の上のお方ですから。私達もただの憧れですが、一日ぐらい夢を見ないと!エリス様はどなた推しですか?同じお国だからレオンハルト殿下かしら?」
「えっと…私は婚約者がいまして、その方にミモザを送ろうかと。」
「まぁ!素敵。」
「アリアナ様はクリストファー殿下以外には送られないのですか?」
「そうですわね。売り上げに貢献するためには送った方が良いのでしょうけれど。」
「そうですわよ。是非送ってください。クリストファー殿下には送らなくともいいですから。」
「そうですわ。不誠実なクリストファー殿下は放っておいて、一日だけでも楽しみましょう!」
アリアナ様のご友人達はクリストファー殿下の仕打ちに怒っている。
アリアナ様は何も言わずに微笑んでいるだけ。
私はアリアナ様からミモザを貰うレオンを想像してしまう。勝手に自分のいい様に捉えて、またアリアナ様に迷惑かけなければいいのだけど。
そう言えば、野外活動の時の恋バナが途中だったかも。アリアナ様は本当はどなたの事が気になるのかしら。
そんな事を考えながら、女子会とも言えるお茶会を楽しんだ。
ミモザの日の当日、多量のミモザにクッキーを添えて、国際交流部の皆が配達をしている。
アリアナ様も配達を手伝っているというので、私も手伝おうとアリアナ様に声をかけた。
『どなたかにお届けしますか?』
『わたくしは仕分けをしていますの。そこにレオンハルト殿下の分があるので、届けて頂けますか?荷物が重いので、一人お手伝いさせます。』
アリアナ様か指した先には、多量のミモザが。
レオンの見た目に騙されている!
そう思いながら、レオンのところへと運ぶ。
『レオンの浮気者!』
そう言いながら、ミモザを渡した。
『何だ?これは?』
訝し気にミモザを見たレオンだったので、ミモザの日を説明すると、メッセージカードを漁り始める。
『何しているの?』
『アリアからのが無いかと思って。』
『アリアナ様はお忙しいようだったから、ないんじゃない?』
ちょっと意地悪を言ってみる。
実はアリアナ様は同じ学年の皆に男女問わずに送っている。
レオン宛てのカードは私の手元に隠している。
『やっぱり無いか…』
『期待していたの?いいじゃない。女子から沢山ミモザ貰えて嬉しいでしょう?ちなみに、アリアナ様も沢山男子から頂いたそうよ。レオンはちゃんと送った?』
『何で早く教えてくれないんだ!』
『これだけ皆そわそわしていたのに、知らないレオンが悪い!じゃあ私戻るから、これ置いていくね。』
そう言って、ミモザの中にカードを埋めて、部屋を出た。
あのレオンが焦る様子、本当にアリアナ様に夢中なんだと思う。レオンの初恋は実って欲しいけれど、アリアナ様にも幸せになって欲しい。
そう、みんな幸せになれるといいなぁ。
配達が終わり、アリアナ様の待つ部室に戻ると、お茶会の準備が整っていて、黄色いケーキが用意してあった。そのケーキはまるでミモザの花の様でとても綺麗。
「皆さま、今日はお疲れ様でした。ミモザケーキがありますから、ゆっくり召し上がってくださいませ。もちろん恋人の元へ行かれる方は、そちらを優先されてくださいな。ケーキはお持ち帰りを用意しますわ。」
皆から歓声が上がる。
私もルイスと約束はしていたけれど、待ち合わせまで時間があったので、アリアナ様とお茶を楽しんだ。
『アリアナ様、結局本命の方はどなたですの?』
アリアナ様は首を傾げ、
『内緒ですわ。』
そう微笑んだ。それは少し悲しみも入っている様に感じる。
アリアナ様には幸せになって欲しい。
レオンじゃなくてもいい。アリアナ様が笑って過ごせる相手が見つかります様に。
そうミモザに願いを込め、アリアナ様に手渡した。
お読みいただき、ありがとうございました。
ヨーロッパでミモザの日は三月らしいのですが、このお話ではバレンタインディとさせて頂きました。
仕事終わってから、何とか書き終わり…
予定が無くて良かった⁈




