【番外編】レオンハルトが探していた彼女1(レオンハルト視点)
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またレオンハルト編です。今回は長くなりそうでしたので、2話に分けました。
前回と同じく外国語は『』て表記しています。
アリアナのその後や他の王子様達の番外編も順次投稿したいと思います。
アリアは急に横抱きにされて、驚いた顔をしている。
『殿下、降ろしてください。わたくしは一人で立てます。』
頬に赤みがさしていて、彼女が恥ずかしがっているのが、よくわかる。
『私は今すぐ二人きりで話がしたいんだ。少し協力してくれ。』
俺は周囲を確認しながら、小声で伝える。
周囲がザワザワしている中で、駆けつけた教師が声を張り上げた。
「周囲の安全は確保できた!防御魔法を解いてくれ。救助に入る。」
俺は抱いていたアリアに目を落とす。
アリアは相変わらず頬を染めていたが、俺と目が合うと肯く。
すると防御魔法が解かれた。
教師と救助の職員がバタバタと入ってくる。
「怪我をした者はいないか!」
俺ももう一度確認した。
驚いて床にへたり込む者はいたが、大きな怪我人はいない様だ。クリストファーもカーラもすぐ近くで爆発が起きたにも関わらず、無事だった様だ。
アリアの魔法力の高さと精密さに舌を巻く。
通常は飛び散る破片は止めれても、爆発の爆風や炎から守る事は難しい。
周囲の状況を確認した後、俺は教師に伝える。
「先生、アリアナ嬢が立ちくらみを起こした様で。部屋で休ませて来ます。」
横抱きにされているアリアは顔を俺の胸に埋め、隠している。相当恥ずかしいのだろう。可愛い。
「ああ、突然の事故で驚いたのだろう。レオンハルト君は爆発の経緯を知っているかい?後で話を聞かせてもらいたいんだが。」
俺はチラリとクリストファーの方を見る。
腰を抜かしている様だ。情けない。
「ええ。アリアナ嬢が落ち着きましたら、教務室に伺います。」
「よろしく頼むよ。」
「はい。」
教室(だった場所)を出る時に、第一王子のクロードと出会った。彼は卒業して魔法師団の団長をしているが、爆発と聞いて、駆けつけたのだろう。
彼は俺に抱かれたアリアを見て、俺を睨む。
「アリアナ嬢は怪我でもしたのか?」
挨拶も無しに聞いてくる。
アリアが腕の中で固まった。
「爆発に驚いて、立ちくらみを起こしただけです。部屋で休ませてきます。」
俺も負けじと睨み返す。
「彼女はクリストファーの婚約者だ。将来の義兄である私が運ぼう。さあ、アリアナ、私のところにおいで。」
クロードが両手を広げてアリアを受け取ろうと近付いてくる。
彼の瞳には、俺と同じ恋情の炎が見える。彼は義兄だとは思っていない。
従兄弟のルイスの話を思い出す。アリアは彼と一緒に戦ったのだ。彼も一緒に戦った相手がアリアだと知っているのだろう。
絶対に渡すものか。アリアは俺が貰う。
アリアは俺から手を離し、クロードの方へ手を伸ばそうとした。俺はワザと腕をずらし、彼女の体を不安定にする。彼女は慌てて俺の体に縋り付く。
俺はニヤリと笑い、彼女の耳元で囁く。
『しっかり掴まっていて。アリアは渡さない。』
彼女は驚いた眼差しを俺に向ける。
そしてクロードに向き合う。
「いえ、クロード殿下はこちらの検分があるのでは。弟君の不始末ですからね。まだ腰を抜かしていらっしゃいますよ。彼女の事はご心配なく。ちゃんと部屋に送り届けますから。」
そう言って、返事も待たずに歩き出した。
背後からクロードの刺すような視線を感じたが、無視して、俺の部屋へ向かった。
俺の部屋へ着き、防御と防音の魔法をかける。
侍従にお茶の用意を頼み、彼女を2人掛けのソファーにそっと下ろした。
俺はその横に座る。
彼女は顔を真っ赤にしている。
可愛かったので、からかってみた。
彼女の耳元で囁く。
『男に抱かれたのは初めてか?』
彼女は顔を真っ赤に染めながら、抗議してくる。
『紛らわしい言い方をしないで下さい!』
怒っている表情も可愛い。
『さっきはどうなる事かと思いました。クロード殿下を怒らせると怖いんですから。わたくしを巻き込まないで下さい。後々大変なんです。』
彼女は少し砕けた話し方になっている。
距離が縮まった様で純粋に嬉しいが、クロードとアリアの関係が気になる。
『アリアとクロード殿下は親しいのかい?』
『クリストファー殿下と同じく幼馴染みです。幼い頃は兄も含めて一緒に過ごす事が多かったので、クロード殿下は妹の様に可愛がって下さります。兄がクロード殿下の政務官をしていますので、時々はお食事やお茶などにお誘い頂きますわ。』
『そうか。』
俺は彼女がクロードの名前にも特別な感情を表さなかった事にホッとする。だが、彼は違う様だ。弟の婚約者に構うという事は、何らかの将来を見据えた行動だと思う。
弟の婚約者を奪うつもりか?
弟が婚約破棄をする事を見越しての行動か?
侍従がお茶の用意をしてくれたので、彼女に勧め、部屋は人払いする。
『ところで。』
そう話を切り出すと、彼女の体がピクリと震える。
『さっきの爆発だが…あれはやはりクリストファーが原因か?』
『はい。可燃性で揮発性の高い薬品で爆発の危険があると説明があったにも関わらず…相変わらずクリストファー殿下は人の話に耳を傾ける事が苦手な様で。』
アリアは深い溜息をついた。
『今のは失言でしたわ。どうぞご内密に。』
と力なく微笑む。
『いや、私もクリストファーの事は人の話を聞かない奴でと思っている。』
アリアはクスッと笑った後、言葉を続けた。
『カーラ様がよく燃えるところを見てみたいとクリストファー殿下に強請ったのですわ。そしたら殿下が火魔法を使われて。わたくしがもう少し早く気付けば、爆発前に止められたのに…レオンハルト殿下にも危険が及び申し訳ございません。』
彼女は頭を下げる。
彼女はよくクリストファーを目で追っている様だった。
だからこそ、彼の行動を予測でき、今回の事故を最小限の被害で済ませる事ができたのだろう。
クリストファーの事ばかり、見ているのは気に食わない。彼女はクリストファーに愛情があるのだろうか?
聞いてみたいが、彼女は今は彼の婚約者だ。優等生の彼女は模範回答しか言わないだろう。
俺は問い詰めたい気持ちを抑える。
『アリアのせいじゃない。アリアには感謝しているよ。私こそ、早く気付いて防御魔法をかけてやるべきだった。君一人に任せてしまい、申し訳ない。』
そう、俺があと一歩先に気付けば、俺が防御魔法をかけていた。アリアを危険に晒したくはなかった。
アリアが立ち尽くしているのを見た時は肝が冷えた。
慌てて無事を確認するまで、安心できなかった。
俺は、ため息をつく。
『アリアは魔法力が高いよね。』
アリアは顔を背ける。
『特別高い訳ではありません。』
俺はアリアの両頬に手を当て、こちらを向かせる。
頬はふあふあしていて、触り心地がとてもいい。
いつまでも触っていたかったが、アリアの手が伸びてきて、外されてしまった。
『じゃあさっきの魔法は?』
『あれは皆が危ないと思って…』
彼女は困った顔をしながら、口籠る。
『魔法学のクラスは手を抜いているんだね。』
俺は確信した。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
後半(2)は明日に投稿できるように頑張ります。
お読みいただければ幸いです。