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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】救出と傷を負ったアリアナ(クロード視点)

ブックマーク、評価等、ありがとうございます。


前々話、前話のクロード視点です。

 アリアナの助けてという言葉が聞こえて来た。

 追跡魔法が彼女の危機を知らせて来た。


 私はエリックにアリアナが危険だから、追うと伝え、追跡魔法を発動させ、彼女の元へと急ぐ。


 一体何があった?

 転移魔法で彼女の痕跡の近くに転移する。


 そこは森近付くの道から少し外れたところにある一軒家だった。


 家の様子を伺っていると、体格の良い男達が出入りしている。服装こそ、その辺の村人と変わらないが、腰に剣を携え、周囲を窺う様子はどう見ても怪しい。

 アリアナはあの中か?


 そう思った所で、エリックが魔法師団の小隊を連れてやって来た。

 小声で話しかけてくる。


「突然転移するなよ。探すのが大変だろう?」


「悪い。だが、お前には俺の場所がわかるように、魔法をかけているだろう。」


「それとこれとは別だろ。で、アリアナはあの中か?」


「まだ確認出来ていないが、間違いないだろう。」


 私がそう言った直後、彼はポケットの中から、小型の機器を取り出す。

 その機器は赤く光っていた。


「アリアナからだ。間違いないな。あの中だ。」


 そうして、通信装置を使う。


「アリアナ無事か?」


 エリックが彼女と話している。

 彼女は無事だとわかり、ホッとする。

 彼女は他に囚われている者がいる為、動けない様だ。


 エリックはアリアナに無理をするなと念を押している。そう言ったとしても、彼女は無謀な事をしそうだ。早く踏み込みたい。


 部下が周囲の様子を確認し、踏み込む合図をする。

 エリックはアリアナに防御魔法を使う様、指示を出す。


 魔法師団の騎士が、外の見張りを音もなく倒したのを確認し、家に踏み込む。

 居間にいた男達をエリックが拘束魔法で押さえつける。団員達がそれぞれを拘束していく。

 一人女子生徒も男達といたが、踏み込んだ時には、拘束されるでも無く、親しそうに彼らと話していた。


「あれがクリストファーが入れ上げているカーラだ。」


 エリックが耳打ちしてくる。

 彼女も一味なのかと疑い、保護という名目で身柄を確保した。


 アリアナ達を探すが、同じ部屋にはいない。

 二階へと上がる足音が聞こえ、私も二階へと向かうとと、男がアリアナに向かってナイフを投げる所だった。

 ナイフは彼女に届く前に床に落ちていく。

 アリアナの防御魔法がナイフを防いだのだ。

 アリアナは怪我もなく、男と対峙している。


 私はアリアナにナイフを投げた男に殺意を抱く。

 アリアナは男に黒幕は誰かと聞いていたが、当然の如く男は吐かない。


「それなら教えたくなるまで付き合って貰おうか。」


 私は男の後ろから、声を出し、男に魔法をかけた。

 周囲から空気がだんだんとなくなっていくという、物質変化魔法だ。


「うー息が…」

「話す気になったか?」

「誰が!」

「ほう、まだ頑張るか?」


 男は呻き声を上げながら、倒れていった。


 アリアナが叫ぶ。

「クロード殿下!殺してないでしょうね!」


 私は冷たい笑みを浮かべる。

「アリアナ、大丈夫だよ。本当は殺したいけど、黒幕を白状させるまでは、生かしておくよ。」


「殿下、行き過ぎはいけませんわ。」


「君を攫うなんて、死に値する。」

 本当ならこの場で締め殺したい。

 だが、黒幕がいる事は明白だ。裏で糸を引いている人物を捕らえなければ意味がない。


 彼女は自分は無事だから、自重しろと言う。

 いくら無事でも、危ない目には遭わせたくはない。

 こんな事件に巻き込まれるのであれば、彼女を王宮の奥深くに隠してしまいたい。


 アリアナに怪我がないかと、確認していたら、エリックがやって来た。下の賊は捕獲したらしい。

 彼女に防御魔法を解かせると、一緒に囚われていた令嬢を保護する。

 令嬢とアリアナはベルン語を話している。レオンハルトが連れて来た令嬢か?すっかりアリアナとは打ち解けている様だ。

 レオンハルトの策略でアリアナを懐柔する為に送り込まれたのか。

 そんな事を考えながら、彼女達のやり取りを眺めていると、エリックが令嬢を下に連れて行ってくれた。


 邪魔者がいなくなったと、アリアナを抱きしめようと思ったが、彼女は私を気にする事なく、床に倒れていた女子の元へと駆け寄る。もう一人の囚われていた生徒らしい。

 女子生徒が座ったのを確認して、彼女は入り口のところに控えていた騎士に、もう一人騎士を呼んで欲しいと頼む。囚われていた女子生徒が皆無事だった事に安堵する。

 魔法師団の団長としてもだが、個人的にもアリアナが気に病む事にならなかっただけでも有り難い。

 そんな事を考えていたら、アリアナが私の前にやって来て、礼を執る。


「殿下、助けて頂き、ありがとうございました。わたくし一人では、動く事が難しかったので、助かりましたわ。」


 彼女の瞳には全く反省が見えない。


「全く、助けが遅くなったら、どうするつもりだったのか。」


 私は叱りつける様に言ったのだが、彼女には全く通じていない。それどころか、微笑みを浮かべている。


「その時はその時で、わたくしにでき得る限りの手段を使い、逃げ出していますわ。」


「いい加減にしろ!」


 そう言って、私はアリアナを腕の中に抱きとめた。

 ふんわりと甘い香りが漂う。柔らかく温かい体が、アリアナが無事だと実感させてくれる。


「クロード殿下?」

 急に抱きしめた私を不審に思ったのか、アリアナが私を呼ぶ。


「心配させるな。」


「ごめんなさい。クロード殿下。」

 彼女は素直に謝った。


 このまま抱きしめていたいと思っていたら、急に彼女が私の体の向きを反転させる。

 どうしたんだと頭を上げると、先程まで、座り込んでいた女子生徒が、ナイフを持って、アリアナの後ろに立っている。ナイフからは血が滴っていた。


 アリアナは生徒に向き合うと、何故と問う。

 だが、今はそれどころではない。傷の手当てが先だ。


「アリアナ、大丈夫か!」

 私はそう言って、彼女の傷に手を当てる。

 掌に生温い感覚が広がった。


「殿下、わたくしは大丈夫ですから、彼女の事を任せてくださいませ。」


 アリアナは気丈にしているが、彼女のガウンの肩に血の染みが広がっていく。


「ミレーヌ様、その刃物を置いてくださいませ。」

「わたし…」


 アリアナは彼女との距離を詰めていく。


「アリアナ!近付くな!」

「いいえ。殿下。大丈夫です。」


 アリアナはそう言って、彼女の手からナイフを取り上げた後、床放り投げ、彼女に気を失わせる魔法をかけた。

 だが、アリアナは彼女と一緒に崩れ落ちる。


 慌てて、彼女を抱きとめる。

 肩の傷からは、出血が続いている。慌てて傷を確認し、命に関わる様な傷ではない事にホッとする。

 とりあえず、出血を止めるための治癒魔法をかけた。


 そして、騎士を呼び、女子生徒を拘束するよう命じ、アリアナを抱えて、下に降りた。


 エリックを呼び、先に王宮へ戻る事と、この後の指揮を任せる。


「アリアナはどうしたんだ!」

 彼もぐったりしているアリアナを見て焦っている。


「ナイフで刺された。今は気絶しているだけだ。出血は止めたし、傷自体は命に関わるものではない。だが上のナイフは回収はして調べさせろ。毒が仕込んであるかもしれないからな。」


「わかった。後は任せろ。アリアナを頼む。」


「もちろんだ。王宮で医師に診せるよ。」


 そう言って、私は王宮の魔法師団の部屋へと転移した。

 直ぐに医師を手配し、彼女の傷を診てもらう。

 幸い深い傷ではなく、治癒魔法で治す事ができるという、医師の言葉に安堵する。


「毒が入った可能性は?」

「今のところ、毒の兆候はありませんが、一日は様子を見る必要があるでしょう。」


「意識はいつ戻る?」

「精神的な疲れと、痛みの為に意識を失ったのでしょう。いつとは申し上げる事は出来ませんが、ゆっくり休ませてあげてください。」


「わかった。傷はどれくらいで治るか?」

「傷は治癒魔法を使っていますが、魔法も完全ではありません。痛みが無くなるには時間がかかります。痛みがある場合はこのお薬を。また多少は傷跡が残る可能性があります。若いお嬢様には酷かもしれませんが。」


「そうか。ありがとう。夜中にすまなかったな。」


「私は近くに控えていますので、何かありましたら、お呼びください。」

 医師はそう言って部屋を出て行った。


 空は白ばみ、薄らと部屋も明るくなってくる。

 もう朝か。


 侍女に寝間着を着替えさせ、アリアナと二人きりになる。彼女はまだ眠っている。


「アリアナ、無謀な事はもうやめてくれ。いくら心臓があっても持たない。」


 そう言って、彼女の手を握る。

 傷を上にして横向きになっている彼女は、無防備な寝顔を晒していた。


 そういえば、幼い頃、王宮に上がったアリアナが、隠れんぼの途中に疲れ果てて、私のベッドの中で眠ってしまった事があったな、と思い出す。

 女の子とはこんなに可愛いものかと思って、母にアリアナが欲しいと頼んだのだった。

 もちろん子供の言う事と取り合って貰えなかったが。


「アリアナ、いつになったら、私の事を一人の男として見てくれる?」

 そう言って、頬にキスを落とした。


 自分のかけた追跡魔法に綻びがないか、他の魔法がかけられていないかを確認する。

 今回はこの魔法のおかげで、アリアナのところに駆け付ける事が出来た。

 今回の事件は単純な人攫いでは済まないだろう。

 裏で貴族が糸を引いているはず。


 先日、第二王子派の貴族をかなり摘発したが、所詮トカゲの尻尾切りだったか。


 しかしあの女子生徒は何故刃物を向けたのか?

 そのような娘には見えなかったが。

 アリアナも全く警戒していなかった。

 いや、傷つけられても彼女を庇おうとしていた。


 やはり背後関係を当たらなければならないか。

 そう考えていたら、ノックの音が聞こえる。


「クロード、入っていいか?エリックだ。」

「ああ。」

 エリックが疲れた様子で入って来た。



お読みいただき、ありがとうございました。

サブタイトルがなかなか決まらず…

深夜まで悩んでいました。

更新遅くなり、申し訳ありません。


仕事もあり、毎日の更新が難しいのですが、次回も明後日か明々後日には更新できるよう頑張ります。

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