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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】囚われの身(アリアナ視点)

ブックマーク等、ありがとうございます。

『』は外国語表記です。



 彼らは、私達に猿轡をした後、大きな麻袋に入れ、担いで外に出る。

 警備の者が気付いてくれないかと思ったけれど、彼らは全く気付かないみたい。

(助けて!)と声を出したけど、出たのは唸り声だけだった。


 魔法を使い、この事態を切り抜けたいけれど、二人を危険に晒す訳にはいかないし。


 一人で二人を守る為には、魔法を使うタイミングが難しい。私が手を拱いている間に、彼らは馬車に私達を押し込み、急いで出発させる。


 警備が役に立っていない事に怒りを覚えるけれど、抱きこまれた者がいるはず。彼らの目的が私ならば、クリストファー殿下を推している派閥が背後にいるのであれば可能だわ。


 何とか巻き込まれた二人を助けないと。


 私一人なら難なく逃げられるのだけど、人質を取られているのは辛い。下手に魔法を使う事が出来ない。


 幸い命を取る気はない様だ。人買いにでも売るのだろう。だったらアジトに着いた時点で私達は一緒にされるはず。そこが狙い目だろう。

 私だけなら人買いの所まで潜り込んで一網打尽にしたいのだけど、エリス様達が一緒なので、それはできない。なるべく早く彼女達を解放してあげなければ。


 後は私に付いているはずの護衛がどこまで役に立つのか、せめて兄に知らせてくれたらいいのだけど。


 どれくらい馬車で走ったのだろうか。アジトと見られる小屋に着いた。そこの小部屋に監禁される。

 袋から出され、床に転がされる。

 二人が大丈夫かと、目をやると、エリス様は動いていたが、ミレーヌは動かない。彼女の身に何かあったのかと焦っていたら、手が少し動いたのが見えて、ホッとする。


 私がうーうー唸って、男を睨み付ける。男はニヤリと笑い、私達の猿轡は外してくれた。


「逃げるなんて考えるなよ。ああ、魔法も無しだ。もう一人カーラとかいう娘も人質にとっているからな。お前たちが逃げたり、魔法を使ったりすれば、彼女の命はないぞ。この辺りはこの家しか無いんだ。叫んでも無理だから大人しくしてな。」


 睨みながら、言い放つ男を見上げ、私はなるべく甘えるような声を出してみる。


「ねえ、逃げないから、足と手の縄を外してくださらない?手が食い込んで痛いの。傷が付いたらいけないのでしょう?私は肌が弱いから、縄の跡が醜く残ってしまうわ。」


 男は考える様子を見せる。


「外すのは無理だ。だが、緩めるぐらいはいいだろう。おい!緩めてやれ!」


 部下だろう男達が私達の縄を緩める。


 私はミレーヌの方を見て、縄を緩めている男に頼む。

「ねえ、彼女は気絶しているの。せめて縄を外してくださらない?」

 彼女の目は閉じたままだ。少しでも楽にしてあげたい。


 リーダーの男は相変わらず嫌な笑い顔を浮かべている。

「縄を外したら、逃げ出すだろう?」


 ここで負ける訳にはいかない。

 なるべく可愛らしく見えるようにお願いしてみる。


「わたくし達はか弱い娘だもの。何も出来ないわ。お願い。彼女だけでもいいの。」


 男は考え込んでいる。もう一押しかな。


「わたくし達を高く売りたいのでしょう?傷は付けない方がお金持ちは高く買ってくれると思うわ。」


 しばらく考え込んでいたが、所詮小娘だと思ったのだろう。


「それはそうだな。おい!そっちの娘だけ縄を外してやれ!」


「へい。」


 ミレーヌは縄を外された。私は彼女が拘束を解かれた事に安心する。


「いいか。大人しくしていれば、朝になれば何か食べさせてやる。わかったな。」


 そう言い放ち、男は出て行った。

 無情に鍵がガチャリと掛かる音がする。


 カーラも人質?何故一緒に監禁しないのだろう?

 そんな疑問が浮かんだけれど、まずは巻き込んでしまった二人を助けなければ。

 エリス様とミレーヌの安全を確保した後、カーラを探して、四人で逃げる。どこまでできるかな?

 ミレーヌは失神していたが、命に別状はない様でホッとする。エリス様は何とか体を起こそうと踠いていた。


『エリス様、大丈夫ですか?今ロープを切りますから。』


 両手両足を縄で縛られており、体を起こす事も一苦労だけど、どうにか体を起こし、口でガウンと夜着を捲る。太腿の内側にベルトで付けていた小刀を、体を曲げて口に咥え、足を縛られていたロープを切る。続けてエリス様の手のロープを切る為に慎重にナイフを動かす。何回も擦ると、彼女の手の拘束が外れた。一旦ナイフを床に置く。


 彼女は私の行動に目を丸くしていた。

 余りにも令嬢らしくない行動だからだと思うけれど、今はそんな事に構ってられない。


『巻き込んでしまってごめんなさい。必ず助けるから、もう少しだけ我慢してくださいね。』


『アリアナ様、私は大丈夫ですわ。反対にワクワクします。』


 そう言って、彼女は私が置いたナイフを手に取り、自分の足と私の手の拘束を解いていく。

 彼女の気丈さに助けられたけれど、こんな状況でワクワクするって…彼女に自分と同じ気質を感じてしまうわ。

 そんな事を考えていると、縄がスルリと落ちる。


『ありがとうございます。』


『アリアナ様は凄いですわ。こんな物を隠し持っているなんて。』


『護身用ですが、今回は余り役に立ってくれませんでしたけれど。』


『そんな事ありませんわ。こうして体が自由になっただけ、希望が持てますもの。』


 とりあえず、ミレーヌの側に行き、彼女が無傷である事を確認し、次にどう動くべきか考える。


 小屋に入れられ、部屋に鍵をかけられていた。窓は明かり取りの小窓しか無く、そこからの脱出は難しい。転移魔法も考えたが、カーラが別の場所で人質に取られているなら、私達だけ転移すれば、彼女を危険に晒してしまう。


 今は何時だろう?

 エリス様と色々と話をして、夜更かししていたが、日付は越えていなかったと思う。

 馬車て走った時間と森の位置、周囲に集落が無い場所。頭の中に離宮周囲の地図を思い浮かべる。


 夜中に馬車を走らせていれば、もし追手が来た場合に不審がられる。なるべく近い場所で一旦身を隠し、朝を待つのだろう。


 男達か私達を連れ出したのは、日付けが変わった夜中だと思う。見張りの交代の時間は注意が逸れるし、人が動いていても不審がられない。


 それから馬車に暫く揺られて、この場所に着いた事を考えると今は未明ぐらいかな。


 私達がいない事が発覚するのは朝だと仮定すれば、その前に馬車など目立つ物は隠したいだろうし。

 そして昼間に知らぬ顔をして、私達をまた別の場所に移すのだろう。


 朝まで誰にも気付かれないと、助けを待つ事は難しそう。最悪の状態を想定して動かないといけない。


 そう考えながら、もう一度地図を思い浮かべる。

 離宮に繋がる街道の他に、森を抜けたところにある道を思い出した。

 ここは街道と違い、人通りも少なく、民家もあまり無い。通りがかりの人に助けを求める事も難しい。

 だけど捜索隊が組まれれば、必ずこの一帯は探してくれるはず。

 今の時点で捜索隊が探してくれれば、この場所を見つける事も簡単なのに。


 どうにかこの事態を知らせたいと思うが、下手に魔法を使ったことが悟られると、エリス様達を危険に晒してしまう。


 警護の者が兄に知らせてくれていれば、朝までには、私達がいない事がわかり、捜索隊が組まれるだろう。だけど内部に協力者がいれば、その事が男達に知らされ、更に監禁場所を変えるかもしれない。


 カーラが人質になって無ければ、エリス様に防御魔法をかけて、犯人達に拘束魔法をかけて動けない様にするのに。

 カーラのいる場所も把握しないといけないし、なかなか難しい。


 魔法を使えない事が、こんなに制限があるとは思わなかった。前世は魔法なんかなかったのに、今はこんなに頼っていたなんて。

 頭の中は、考えがグルグル回って、なかなかスッキリしない。


 私が黙ってしまったせいか、エリス様が心配してくれる。


『アリアナ様、大丈夫ですか。』


 落ち着いて!と自分を叱責する。


『ええ。なんとか逃げ出す方法を考えますから。もう少し辛抱してくださいませ。』


 何か方法が無いかと考えを巡らせていると、不意に兄から貰ったペンダントとピアスを身に付けていた事を思い出す。

 最近、兄からプレゼントされ、肌身離さず身につける様に言われていた。

 ピアスは、元々イヤリングだった筈なのだけど、私がよく落としたり、付け忘れるものだから、ピアスにしろ!と強引にピアスに変えたのだ。

 ピアスもいいかな、なんて甘い考えだった私は、穴を開ける時に後悔したのだった。一瞬だったけど、痛かった…だけど、今これが役に立つなら、ピアスにして本当によかったと思う。


 ピアスにはGPSのような機能がある魔法具だ。

 小さな宝石が嵌め込まれている場所がスイッチになっている、超小型の通信装置だ。

 これなら魔法ではないから、気付かれないかも。

 何で今まで気付かなかったのだろう。人質の方に気が取られて、すっかり忘れていた。


 ペンダントはロケットになっていて、超小型虫型ドローンとカメラが付いている。


 これで、外部と連絡が取れる。そう思うと、ほんの少し、気持ちが楽になる。


 まずはピアスのスイッチを入れる。


 続けてドアの下の隙間から、虫型ドローンを外に出す。敵の人数とカーラの居場所を把握しないと。

 外の映像はロケットの蓋の内側に映るから、私はロケットを見ていた。


 廊下に見張が一人。彼は座り込んで、酒を飲んでいる。

 階段を下っていくと、リビングの様な場所に6人程の男達か酒を飲みながら騒いでいる。

 こんなに酒盛りをしているのであれば、ドアさえ突破できれば、逃げ出せるかもしれない。


 カーラはどこだろうかと向きを変えると、拘束もされず、一人の若者と話している。


 周囲の声が大きく、カーラの話す内容まではわからない。だが話している若者とは親しそうだ。彼女が手引きした?そんな疑問が頭に浮かんで来る。

 彼女にとって、私は邪魔な存在なのは間違いない。だけど、賊を引き込むような知恵は回らないはず。

 いずれにしても、カーラを連れて帰らなければ、きっとクリストファー殿下が騒ぐし。

 彼女が手引きしたかどうかは、賊を捕まえてから判断しないと。


 エリス様は私のする事を興味津々で眺めている。


『アリアナ様、それは?』


『これは小型カメラの映像ですわ。敵の人数と配置を知りたいので、さっき飛ばしたのです。』


『カメラ?』


『魔法具ですわ。助けも呼びました。朝までには何か連絡があるはずです。』


 そんな説明をしていると、魔法通信が入る。通信機器をピアスに仕込んでいたらしい。


「アリアナ、無事か?」


 それは、心配そうな兄の声だった。




お読みいただき、ありがとうございました。


次回は明後日か明々後日に投稿できればと思っています。お付き合い頂ければ幸いです。

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