表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/120

【番外編】レオンハルトとアリアナの出会い(レオンハルト視点)

ブックマーク登録、評価、ありがとうございます。


レオンハルトとアリアナの出会いです。

『』は外国語として、書いています。

 そして、俺はフランベール国の王立魔法アカデミーの最終学年に編入した。


 アリアナ嬢とは同じA組となる。


「レオンハルト君、君の案内役はクリストファー君に頼むから。」

 ここでは、王侯貴族も教師は君付けだ。


「いえ、先生、できればアリアナ嬢にお願いしたいのですが?」


「アリアナ嬢?男子同士で同じ王族だからクリストファー君がいいと思ったのだが。」


「クリストファーとは、すでに既知です。私は広く交流を持ちたいと思っています。」


「そうか。まぁ彼女も王家に入るのは決まっているから、失礼な事にはならないだろう。わかった。彼女に話しておこう。」


「お心遣いありがとうございます。」

 無事、アリアナ嬢との最初の接触を持てそうだ。


 そして現れた彼女は想像以上に美しい人だった。

 キラキラと輝く黄金色の軽くウェーブがかかった髪に、空を閉じ込めたようなアクアマリンの瞳、小さく整った鼻梁、啄みたくなるような桜色の唇、すらりとしながらもバランスの良い体型だが、華奢な雰囲気である。国の美女を見慣れている俺でも、一瞬見惚れてしまった。

 とても海賊相手に戦った人とは思えない。


『お初にお目にかかります。アリアナ-ファーガソンでございます。殿下とは同じクラスに在籍しております。以後、お見知りおきくださいませ。』


 彼女は見事なベルン語で話し、淑女の礼を取る。

 俺は慌てて、彼女の手を取り、口づけを甲に落とす。

 彼女の顔が引きつったのを見逃さない。


『ベルンブルク王国のレオンハルト-ヨハン-ベルンブルクです。どうぞレオンとお呼び下さい。』

 と微笑み、彼女に甘い顔を向ける。

 殿下と言われている奴はここには何人もいる。

 俺を意識して欲しいと思い、名前呼びを提案する。


『恐れ多い事でございます。レオンハルト殿下。』

 彼女はあくまでも王族に対する態度を崩さない。

 むしろ、警戒されている気がする。


『君の事もアリアと呼んでも構わないかな。』


『殿下のお心のままに。』

 彼女は更に警戒した様だ。


 なかなか名前を呼んでもらえない事に苦笑するしかない。王子スマイルも彼女には効かないようだ。

 これはなかなか楽しくなりそうだと思った。


 彼女からアカデミー内を案内してもらう途中にクリストファーに会った。

 彼は隣に彼女とは別の女を侍らしていた。


 俺はアリアの手を取り、エスコートしながら、クリストファーに声をかけた。

「クリストファーじゃないか?」


「ああ、レオンハルトか?そう言えば、留学するって言っていたよな。」


「そちらのご令嬢がお前の婚約者か?」

 俺はワザとクリストファーとアリアの反応を見るために問い掛けた。


「いや、こいつは…」


 奴は気まずそうな顔をして、俺とアリアナを見ている。連れの女は俺に対しても媚を売るような目を向けてくる。反吐が出そうな下品な目だ。

 どこがいいのか、こんな女。


「レオンハルト殿下、クリストファー殿下はご存知のようですね。お隣にいらっしゃるのは、」


「わたしはカーラ、宜しく!」


 アリアが紹介しようとしている最中にクリストファーの隣の令嬢が口を挟む。

 一体どんな教育をしているのか。

 隣でアリアが溜息をついたのが聞こえた。


「カーラ様、レオンハルト殿下は隣国の王太子殿下です。きちんと礼をされて下さいませ。」


 アリアがなんとかカーラの非礼を正そうと忠告するが、


「カーラは知らないんだ。そんな言い方はないだろ!」

 クリストファーがムキになる。


 こいつは馬鹿じゃないか?隣国の王太子にきちんと挨拶も出来ない生徒がいると思われるだけで、このアカデミーの評価が下がると言う事がわからないのか?


「クリストファー、アリアの言う事は最もだ。お前の言い分の方が私にはおかしく聞こえるがな?」


「アリアナはカーラを虐めているんだ。俺の婚約者と言うだけで大きな顔をするなよ!」


 そう言い捨てて、クリストファーとカーラは去っていった。


 二人を見送りながら、アリアが溜息をつく。


『失礼いたしました。彼女は最近子爵家に迎えられたので、礼儀作法を身に付けていないのです。どうぞ寛大なお心でお見逃しくださいませ。』

 彼女がベルン語で話しかけてきた。


『君はいいのかい?あんな言われ方をして。本当はクリストファーの婚約者は君だろう?』

 ワザと彼女を揺さぶってみる。


『ご存知でしたか。クリストファー殿下の婚約者は確かに今はわたくしですが、近いうちに解消される事になるでしょう。親が決めた婚約者ではありますが、クリストファー殿下はわたくしの事は疎ましく思っていらっしゃるので。』

 彼女は諦めた様に言う。


『だからってあんな言い方をするとは、クリストファー王子の人格を疑うな。』

 俺はクリストファーに久しぶりに会ったが、子供の頃から中身が成長していない事に呆れた。


『わたくしは、本当のわたくしのことを知っている方が支えて下さいますので、良いのです。余計な事を申しました。どうぞお忘れ下さいませ。』

 そう言って彼女は案内を続けた。

 彼女が一瞬悲しそうな顔を見せたのを、俺は見逃さなかった。


 憂える顔の彼女は、男の庇護欲を駆り立てる。

 本当の彼女を知って、支えている人物は男か?

 モヤモヤした気持ちになる。


『では、あんな馬鹿とは婚約破棄をして、私の国に来ないか?アリアなら大歓迎だ。』

 気がついたら、そう言っていた。


『殿下、お戯れを。お気持ちだけ、ありがたく頂戴いたしますわ。慰めて下さり、ありがとうございます。レオンハルト殿下はお優しいのですね。』

 彼女はニコリと笑う。


 まだ初日なのに、俺は何をしているのか。

 まだアリアが魔法を使った女子生徒だと判明した訳でもないのに。


 翌日から授業が始まった。


 座学では、アリアナは完璧であった。

 何故、わざわざアカデミーに在籍しているのか、不思議なぐらいだ。


 魔法学はクラスの真ん中ぐらいだろうか?

 実技のテストで彼女の放った魔法は軽いものだった。生活魔法よりは高度だが、特別に強い訳でもない。これで海賊とは戦えないだろう。


 やっぱりルイスの感は外れたか?と思う。


 一応、剣技もある。女子は希望者だけと言う事でアリアナ嬢は参加していない。

 女子の参加しない生徒は生活魔法のクラスになるそうだ。


 俺の周りには、令嬢達が積極的に寄って来る。俺は国に婚約者がいると言ってもだ。おかげで、なかなかアリアに近付けない。

 どうでも良い令嬢に王子スマイルで対応するにも限界がある。


 クリストファーの隣にいた女も媚を売ってきた。あれだけ自国の王子にベタベタしていたのに、一体何を考えているのか。話すのもバカバカしかったので、二度と近付くなと脅しておいた。

 俺の護衛にも近付けさせない様に命令しておいた。


 反対にアリアからは、一切近付いて来なかった。

 俺が話しかければ、礼儀正しく応対し、質問すれば、丁寧に答えてくれた。が、プライベートの誘いは全て断られた。


 アリアナを観察していると、皆に優しく慕われているが、凛とした態度は崩さず、自分の立つ位置をよく弁えている。

 筆頭公爵令嬢なのに、身分を笠に着る事もなく、皆の良き相談相手になり、慕われているのが、よくわかる。

 体が弱いと言う事も本当のようだ。

 週に一度は起き上がれないほど、体調を崩すらしく、よく休んでいる。だからといって、テストは満点で実技もそれなりにだから、単位を落とす事はないようだが。


 こうなってくると、やっぱり海賊と戦った女子生徒は彼女ではないのではと思う。だが、彼女でなくとも、もう目が離せなくなっていた。


 他の候補者がいないか、在校生だけでなく卒業生を含めて探ってみるが、やはり該当者はいない。


 アリアを注意深く観察していると、自然とクラスどころか学校全体の中心になり、皆をよくまとめている。


 語学に堪能で、周辺国の言語を使いこなせる彼女は留学生にも親切で、積極的に世話をしている。


 その中には周辺国の王子達もおり、アリアになんとか構って貰おうと必死だ。

 ワザとフラン語がわからない振りをして、アリアに構って貰おうとする輩もいる。

 俺はその度にモヤモヤした気持ちになり、そんな奴らとアリアの間に割って入り邪魔をする。自分でも一体何をしているのかと思うが、アリアに他の男が近くのは許せないと思う。


 しかし、アリアの俺に対する態度は、他の国からの留学生に対するものと変わらない。

 もっと親しくして欲しい。

 いつの間にか、魔法力の強い女子生徒の事は忘れ、アリアの事ばかり考える様になっていた。


 一向にアリアとの距離が縮まらないまま、1ヵ月が過ぎようとしている。どうしたら親しくなれるか、次の一手を考えていたある日、魔法化学のクラスで事件が起きた。


 クリストファーとカーラのペアが教師の話を聞かず、最近見つかった発火しやすい薬品を入れた容器に、火魔法を注いでしまったのだ。


「殿下!」

 アリアの叫び声がするのと同時に、教室の窓と屋根が吹き飛ぶ。


「皆、机の下に伏せて!」


 アリアは声を張り上げる。


 俺も慌てて防御魔法をかけようとしたが、すでにクラス内には防御魔法が施されており、クリストファーをはじめ、その場にいた誰も怪我をしていなかった。

 その場に立っていたのは、俺とアリアだけだった。


「アリア!大丈夫か?」

 俺はアリアに慌てて駆け寄る。


「ええ、大丈夫ですわ。」

 アリアは怪我もなく、落ち着いていた。


 アリアの魔法力では、この速さでこれだけの範囲の防御魔法をかけるのは、無理のはず。

 俺はルイスの言葉を思い出す。

 (()()()()()()()()()()()())

 次の瞬間、ベルン語で訊いていた。


『もしかして、この防御魔法は君か?』


『さあ、何の事でしょう?』

 アリアはいつもの微笑みで答える。


『惚けなくとも良い。君が魔法をかけるところを見た。』


『しくじりましたわ。』

 彼女は悪戯のバレた子供の様な顔をしていた。


『殿下、内緒にして頂けたら嬉しいのですが。我が国では魔法力の強い女子はあまりいないので。』

 ニッコリ彼女は笑う。いつもの大人びた微笑みではなく、年相応の少女らしい笑顔だ。


 こんな風にも笑うのかとドキッとする。

 ああ、こんなに惹かれるとは。


 俺は彼女の肩に手を置き、耳元で囁いた。

『わかった。内緒にしよう。君を庇ってあげる。だから後で私とゆっくり話をする時間を作ってくれ。』


 アリアは一瞬驚いた表情をしたが、直ぐにいつもの微笑みを貼り付ける。


『わかりましたわ。今日の午後でしたら、わたくしはいつでもいいですわ。』


 小声で話していたら、やっと周囲の崩れ落ちる音が収まった。


「皆さん、無事でしたか?」

 教師が生徒の無事を確認している。

 防御魔法の外側に慌てて駆けつけた教師の姿も見えた。


 俺はアリアの耳元で、

『これは私がかけた事にする。適当に話を合わせてくれ。』


『はい。』


『何も心配せずとも、私が守る』

 そう言って、アリアの膝の裏に肩腕を入れ、横に抱き上げた。















お付き合い頂き、ありがとうございました。


アリアナのその後、いくつかのパターンから絞りきれません(汗)もう暫くお待ちください。


レオンハルト視点はもう少し続く予定です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=158316304&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ