【番外編】野外活動とアリアナ(アリアナ視点)
ブックマーク等、ありがとうございます。
久しぶりのアリアナ視点になります。
『』は外国語表記です。
湖側の離宮へ、野外活動という名目の卒業前の一泊旅行へ出発する。
去年は海賊が襲撃してくるというハプニングがあった為、今年は比較的近くにある王家所有の離宮になったのよね。
馬車での移動と言われたのだけど、万一の事があるといけないと思って、馬で移動する事にしたのだけど…まさか、王子様達まで馬とは思わなかった。
クリストファー殿下は馬車だったけれど。
王子様達とたわいも無い話を楽しみながら、現地に行く。
イスマエル殿下に町や村の事について、教えて欲しいと頼まれて、道すがら、聞かれた事に答えていた。街道沿いが賑わっている事に彼は驚いていたが、この辺は恵まれている地域で、辺境はまだまだ貧しいところもあると言うと、一瞬、曇った顔になる。故郷を思い出したのかな。
その他にも、細々した事を尋ねてきて、相変わらず勉強熱心な王子様だと、感心してしまう。
心配していた様な襲撃や事故も無く、無事に現地に着いた。
離宮に着いて、一旦部屋へと向かう。私はエリス様と同室になる。
『アリアナ様、宜しくお願いしますね。』
『こちらこそ、宜しくお願いします。』
『ベルン語がお上手なアリアナ様と同室で嬉しいですわ。』
エリス様もフラン語は話すが、お国の言葉が気楽でいいと私にはベルン語で話してくるのよね。
離宮には身の回りの簡単な事であれば、メイドが手伝ってくれるが、基本自分達でなるべく身の回りの事をする様に言われていた。
私は問題ないけれど…
男子はテントを張って、そこに泊まるそうで、それはそれで楽しそう。
荷物を簡単に片付けて、離宮の外で男子達がテントを張っている場所へと、エリス様と歩いて行った。
私達のグループは王子様達ばかりに、エリス様と私。
どう見ても偏っていない?
そう口に出してみれば、佐伯くん、いえ、ルーカス殿下が仕方がないと言う。
そんな王子様達を放っておいて、私は夕食作りに勤しむ事にした。
久々の料理で楽しみ。野外で出来る事は限られているけれど、炭火で焼く料理は楽しみ。
簡単に作れ、体が温まるポトフと炭火で焼く肉にした。
男子はガッツリ肉を食べたいだろうと思ったからだ。
串があれば、焼き鳥にしたいところだったが、串は無いし、手間暇かかるから、ぶつ切りにしてもらった肉に塩を振り掛け、豪快に焼いてもらう。
ヨハネス殿下は意外と上手で任せてしまった。
「僕は国では良く野営をしていましたから、任せてください。」
天使の様な笑顔でほほえまれると、私の心も癒されていく。可愛い。こんな事をお年頃の男子に言う事は許されないよね。
『アリアナ様、ヨハネス殿下って、天使様のようですわ。』
隣でそう囁く声がする。私の心内を言葉にしてくれたエリス様だった。やっぱり皆思う事は一緒なんだ。
肉を切るところはイスマエル殿下とレオンハルト殿下が手伝ってくれたし、ヨハネス殿下は火の番と肉を、ルーカス殿下は焚き木を集めてくれた。
ルーカス殿下は何で俺が薪拾いなんだ?と文句を言っていた事は聞こえなかった振りをする。ごめんなさい。だって側にいると、前世の事を思わせぶりに話し出すから、誤魔化すのが難しいの。
何だかんだ言いながら、無事に夕食を食べ、離宮の部屋へ移動する。
一応部屋に防御魔法をかけて、夜着に着替え、ベッドに入る。
『アリアナ様、お休みになられました?』
『いえ、まだですわ。』
『少しお話ししてもよろしいですか?』
『ええ。』
『私がレオン様と婚約していた事はご存知ですわよね。』
『そう伺っています。』
『婚約は私を助ける為、レオン様が申し出てくれたのです。私達は遠い親戚関係にあり、幼い頃から一緒にいる事が多かったのです。私に父の友人との結婚の話が上がり、親子程の歳の差がある方との結婚を私が躊躇っていたら、レオン様が2年の約束で婚約してくださったのです。』
『親子程の歳の差…』
それはないわ。私でもお断りする。きっと。
『ええ、相手の方の方が身分が高く、父も断れなかったのですわ。』
『それは大変でしたわね。』
『いえ、レオン様が助けてくださいましたから。彼はああ見えて、実はとても優しい方です。私がルイス様をお慕いしている事を承知の上で婚約してくださり、尚且つルイス様との仲を取り持ってくださったのです。』
レオンハルト殿下が言っていた通りの話だった。
私も彼が嘘を吐いているとは思っていなかったけれど。何故という疑問は残っていた。実情を聞くと、彼の取った手段に納得してしまう。
『そうでしたか。』
『レオン様が女性に夢中になるのは、アリアナ様が初めてなのです。あの俺様野郎ですが、どうか曇りの無い目で見て頂けませんか?』
彼女がレオンハルト殿下の事を俺様と呼ぶ事に、二人の親しさを感じてしまう。
『俺様野郎?ふふふ…そうですね。レオン様は俺様ですわ。ですが、幾らレオン様が良い方でも、わたくしは婚約しておりますから。』
『アリアナ様はクリストファー殿下の事を愛していらっしゃいますの?』
彼女は直球で聞いてくる。クリストファー殿下の事は弟の様に思っていると言う訳にはいかず、かといってお慕いしていますとも言えず…
『家族の様な親愛の情はありますわ。』
『では、異性として、気になる方はいらっしゃいますか?今日だってレオン様だけでなく、他の王子様達もアリアナ様の気を惹こうと必死でしたよね?』
『皆様素敵な方ばかりなのは、承知しておりますが、わたくしの立場では、ご友人の末席に加えて頂けるだけで十分ですわ。』
『アリアナ様、私は本当のお気持ちが知りたいのです。私達お友達ですわ。口外はしません。レオン様でなくとも、アリアナ様を応援したいのです。』
エリス様の言葉は、私にとって、とても嬉しいと同時に、戸惑いを感じさせた。私にとって、気になる方はいるの?皆素敵な方だとは思っているけれど、恋愛対象としては考えていなかった。
『わたくし自身も良くわからないのです。幼い頃よりクリストファー殿下と結婚しなければならないと思っておりましたから。』
そして、前世の記憶が戻ってからは、それは絶対回避したいとそれだけを考えて来た。
『クリストファー殿下は、他の女性に夢中ではないですか。』
そう、今はカーラに夢中だけど、私の中では、それを喜んでいる自分がいる。もしかしたら、彼の方から婚約解消して貰えるのではないかと、期待して。
『ええ。彼もわたくしとの結婚は不本意なのでしょう。ここ数年はまともに話す事もありませんから。』
『そんな方と結婚なんて!』
彼女は自分の事の様に憤慨する。
『政略結婚ですから、仕方ありません。何とか婚約を解消しようと努力はしているのですが、なかなか難しくて。わたくしから婚約解消は出来ませんし。』
『レオン様に話して、何とかしてもらいましょう!』
『いえ、レオン様のお国を巻き込む事は出来ません。いよいよになれば、わたくしは姿を消しますわ。』
そう、市井に下り生活するだけの準備を着々と進めている。色々と考えた結果、私が姿を消す事が一番簡単だと思って。クリストファー殿下との婚約が解消されたとしても、私の駒としての価値はまだあるはず。それを放っておく様な、父や陛下ではない。
ならば、私は姿を消した様に見せて、市井に下りひっそりと生活しようと思っている。
『まぁ!姿を消すなんて。是非私を頼ってくださいませ。レオン様に知られたくないのであれば、内緒で匿うぐらいの事は出来ます。せっかくお友達になれたのです。』
『心強いですわ。』
その気持ちだけで、嬉しい。
今まで、クリストファー殿下の婚約者という事で一線を引いて接してくる令嬢しか周りにいなかったから、エリス様の言葉はとても嬉しかった。
そこへノックの音がする。
こんな深夜に一体誰が?
「アリアナ様、夜分に失礼いたします。ミレーヌです。同室のカーラ様がいらっしゃらなくなったのです。」
「カーラ様が?とりあえず入って。」
私は防御を解き、扉を開けると、数人の男達が押し入って来た。彼らは女子生徒の一人、ミレーヌの首にナイフを当てている。
「静かにしろ!動くな。動くとこの女の命はないぞ。」
私が魔法を発動しようとすると、
「おっと、魔法もダメだ。別の人質もいるからな。」
他にも捕われているの?
「わかったわ。だから彼女を放して。」
「お前がファーガソンの娘か?」
リーダーらしき男が我が家の名を出してくる。やっぱり彼らの目的は私みたいだ。
「ええ。貴方達は私が目的なの?だったら関係ない彼女達には手を出さないで!」
「貴族の娘は高く売れるんだよ。お宝は奪っていくもんだろ?」
そう言って、ニヤリと笑う。
「わたくしだけで十分でしょう?幾ら欲しいの?お金なら用意するわ。だから彼女達だけでも放して。」
「ダメだな。もう顔を見られてしまったからなあ。おい、そっちの娘を縛って連れて行くぞ。お前はこっちを縛れ。」
彼らはそう言って、私達を縛り上げた。
お読みいただき、ありがとうございました。
不定期の仕事が最近定期的なものになってしまい、なかなかまとめて書く時間が取れなくなってしまいました。2日〜3日おきには更新できるようには頑張っていきたいと思っていますので、お付き合い頂けますと嬉しいです。




