【閑話】レオンハルトの冬休み1(レオンハルト視点)
ブックマーク等、ありがとうございます。
更新遅くなり申し訳ありませんでした。
レオンハルト視点の閑話です。
アリアとは、あれからゆっくり話す時間が取れないまま、冬休みに入ってしまった。
俺は自国へ帰省し、久しぶりに両親と晩餐を共にした。食後のお茶を楽しんでいたら、母が口火を切った。必ず話が出るだろうと踏んでいたが、この場でどう乗り切るか。父と打ち合わせの後にして欲しかった。
「レオンハルト、貴方、本当にエリスと婚約を解消するの?」
先に手紙で簡単な経緯と解消する事を伝えていたが、母は納得していないようである。
「はい。私にも気になる女性がおりますので。その件に関しては、父上もご存知です。」
「ああ、私がレオンに許可を出した。結婚は想い合う同士でする方が上手くいくだろう?私と君のように。」
そう言って、父は母に茶目っ気のあるウィンクを送る。
母は年甲斐もなく頬を赤く染めながらも、拗ねた様に言う。
「それはそうですが、私はレオンとエリスはお似合いだと思っていたのに。」
俺も大事な事は、きちんと伝えたいと母を見る。
「母上、私はエリスの事は妹の様に思っています。彼女も同じです。彼女が今、想い合う人が出来たのであれば、それを応援したいと思う事は当然の事です。」
「でも…」
母はなかなか納得してくれなかった。幼い頃からエリスを知っているので、簡単には諦められないのだろう。
「もういいではないか。ところでレオン、かの国の件で話がある。今から私の執務室へ来なさい。」
「かしこまりました。」
父のフォローで、何とか母の追求を逃れられ、ホッとする。何を言われても、俺の気持ちは揺らがないが、堂々巡りの母の話は正直言って、今は聞く気持ちの余裕がない。
父と廊下を歩きながら、世間話をする。家族の時間である砕けた会話を楽しむ。
「父上と母上は、想いあって結婚したのですか?」
「私達は元々は政略結婚だ。親同士が決めた縁組でかなり早くからお互いの事を知っていたんだよ。」
「でも想いあって結婚したのですよね。」
子から見て、気恥ずかしいぐらい熱々の二人が、政略結婚だけで結婚したとは思えなかった。
「まぁ、物心つく頃からお互いに将来の相手だと言われていたからな。」
父のどこか遠い目をしながら、何か奥歯に物が挟まった様な言いように、俺も追求したくなる。
「男性として、他の女性に惹かれたりしませんでしたか?母上には内緒にしますから、後学のため教えてください。」
「私もお前の母以外に惹かれた女性はいたさ。」
「えっ!」
もしかしてと思っていたが、直球で答えてもらえるとは思わなかった。父はニッと口角を上げる。
「こう見えても、昔はモテたんだぞ。だが、自分から初めて欲しいと思った女性には、振り向きもされなかった。あの時は悔しかったよ。」
「ならは、どうしてその方を手に入れなかったのです?父上ほどの力があれば、容易い事ではないですか。」
一体誰だ?それらしき貴族の夫人の話は聞いた事が無い。身分に問題があったのか?だが身分など父なら何とでもするだろう。
思いがけず、父の昔の恋心の話を聞き、好奇心が湧いてくる。
「力を使い、体を手に入れる事は容易い。だが私は彼女の心も欲しかった。いや、心が無ければ彼女に惹かれなかっただろう。確かに美しい人だったが、それ以上に彼女の内面に惹かれた。だから一生懸命に口説き落とそうと努力したが、彼女は別の男に攫われてしまったんだよ。その男は悔しいぐらい何でもできる奴で、二人が想い合う様子を見れば、祝福するしかなかった。」
父は昔を懐かしむ様に、穏やかに話している。きっと青春の良き思い出なのだろう。
だが、父から想い人を奪ったという男性の事も気になる。一体誰か?
「では、母上の事は?」
「失恋の痛手を慰めてくれたのが、お前の母だ。心配するな。ちゃんと想い合って結婚し、お前を授かった。」
そんな話をしながら、執務室へと入る。
父は人払いをさせて、話を切り出した。
「フランブール国の魔法力の強い女子生徒の事はわかったのか?」
「はい。先に報告書を上げましたが、一人該当者がいました。」
「公爵家の娘か…」
父が考え込むように、顎に手を添え呟いた。
「父上、どうかなさいましたか?彼女に何か問題が?」
「いや…できれば欲しいな。お前の嫁に。お前は魔法力が強いが、魔法力が強いカップルの子は魔法力が強く出ると言われている。王家の人間は魔法力が強い方が好ましい。」
確かに魔法力は必ず持って産まれてくるとは限らない。特に魔法力が強い女性は少ないので、兄弟間で差が出たり、魔法力がほとんど無い者が生まれてくる事も多い。その様なリスクを少しでも減らしたいと思うのであれば、魔法力が少しでも高い女性を選ぶ事は当然だ。俺もアリアと会うまではそんな事を考えていた。だが、今は違う。
「父上、私は魔法力だけで、彼女が欲しい訳ではありません。彼女と会って人柄に惹かれました。魔法力が無くとも彼女と結婚したいと思っています。」
すると父は満足げに肯く。
「わかっておる。私も無理強いをするつもりはない。お前、彼女とはどこまで進んだ?」
「進んだとは?」
俺は怪訝な顔を見せたと思う。
「だから、どんな関係なんだ?お前の事だ。何らかの手を打っているのだろう?」
「どんな関係と言われましても。今のところ、ただの友人としか見られていません。告白しても取り合ってもらえないのです。お互いに婚約者がいるからと。」
そう、親しくしたいと思っていても、友人以上の付き合いは出来ていない。
「ほう?お前が相手にされないとは。なかなか手強いな。」
「ええ。なのでエリスとの婚約を早々に解消したと発表したいのです。彼女は我が国の事も良く把握しているようで、誤魔化しが効きません。」
「さすがファーガソン公爵家の娘か。」
「ご存知なのですか?」
「ああ。彼の国は彼で持っていると言っても過言では無い。彼らが娘を手放すとは思わないが…」
そう言って、暫く考え込む。
「父上?」
「まずはエリスとお前の婚約を解消すると発表しよう。お前はかの姫の心を手に入れろ!」
父は鋭い眼差しに変わる。
「姫?」
「お前にとって姫なのだろう?」
「もちろんそうです。」
「お前が見事に彼女の心を手に入れる事ができれば、後は国として動こう。」
「ありがとうございます。父上。」
父の言葉に何となく引っ掛かりを覚えたが、前面的に父のお墨付きを貰えた事は、心強かった。
父の部屋を辞し、自分の執務室へ戻る。留守にしていた間に溜まっている政務を片付けないといけないが、つい、アリアの事を考えてしまう。
アカデミーに留学している、他国の王子達はヨハネス以外は自国へ帰ると言っていたので、当座は心配ないだろう。
気掛かりは、クリストファーが言っていた、結婚式の準備という言葉だ。元々二人の婚約は政略的なものだと聞いている。アリアがそれを受け入れるのであれば、卒業後に直ぐに結婚もあり得るだろう。
アリアは本当はどう考えているのか?クリストファーの事を想っているのだろうか。クリストファーは本気でアリアをお飾りの妃にする気なのだろうか?実は愛情の裏返しという事はないよな。
それにクリストファーの兄、クロードの存在も気になる。彼もアリアに好意を持っている。クリストファーとの婚約解消になれば、真っ先に手を挙げる筈だ。
俺はため息を盛大に吐く。
考えだすと、前途多難である事は明らかだった。
いくら父からアリアの事を認めて貰ったとはいえ、彼女を俺に振り向かせるだけでも一苦労になりそうだ。
まずは俺の婚約を正式に解消し、アカデミーに戻るまでにアリアの家とフランブール国に正式に結婚を申し込もう。だが彼女の魔法力を簡単には手放さないだろう。経済的な策を取るか、軍事的な策を取るか…
アリアには、どうアプローチするか…
と、色々と考えていたが、バタバタという音に遮られた。
「レオン!帰ったのか!」
慌ただしく執務室に入って来たのは、従兄弟のルイスだった。
「相変わらず賑やかだな。エリスはどうした?」
「エリスは今は侯爵家に戻っているよ。後でお前に会いに来ると言っていたが。」
「で、エリスとは、どこまで話が進んだんだ?」
「エリスとは、お互いに想い合う仲になる事が出来た。礼を言うよ。後はお前が正式に婚約解消してくれれば、直ぐにでも侯爵家に申し込みに行くだけだ。」
「そうか。良かったな。」
二人が上手くいって嬉しいが、自分はアリアに相手にされていない事を考えると複雑な気分になる。
「お前の方こそ、どうなんだ?」
「何の事だ?」
「例の彼女だ。やっぱりアリアナ嬢だったのだろう?落としたのか?」
ルイスはニヤニヤして聞いてくる。お前のせいでこんなに苦労しているというのに。
「お前が余計な事を言いふらすから、彼女から警戒されて、それどころではない。全くどうしてくれるのだ?」
「俺が何か言ったのか?」
全く心当たりがない様で、訝しげな様子だ。
「お前が女子生徒を口説き倒していた事をアリアナ嬢は知っていたし、エリスの名前も知っていたぞ。」
「あれか…情報を得るために令嬢達に声を掛けていたんだが…だが、アリアナ嬢だけは、声を掛けても上手に躱してくれて、彼女に直接話した事はないぞ。」
「だが彼女はお前の事を良く知っていた。俺が婚約者がいる事もだ。」
アリアはルイスの事も、俺の婚約者であるエリスの事も詳しく知っていた。てっきりルイスから聞いた話だと思っていたのだが。
「おかしいなぁ。俺は接点がなかった筈だが。だが俺の学年には彼女の兄はいたな。」
益々訝しむルイスは嘘をついている様には思えない。彼女は一体何処から情報を手に入れているのか、気になったが、まずは彼女を手に入れる事が大事だと頭を切り替える。
「俺はアリアナ嬢を手に入れたい。何がいい手はないか?」
「お前が口説いて無理なら、俺に策はないよ。お前でも落とせない令嬢がいるとはなぁ。だが、アリアナ嬢なら納得だ。」
ルイスはうんうんと首を縦に振る。納得されても困る。
「そんなに悠長な事を言っている暇は無いんだ。婚約者のクリストファーが彼女をお飾りの妃にすると言い出した。」
「お飾りの妃か。それを宣言するとは大胆な。まぁクリストファーは彼女の能力を知らないのだろう。」
「だが、クロードは知っている。彼の国が簡単にアリアを手放すとは思えない。」
「結局は彼女の気持ち次第だろう?彼女がお前との将来を望めば、我が国へ来て頂く方法は幾らでもある。」
そう、彼女の気持ち次第なのだ。俺の魔法力を使えば、彼女を我が国に連れて来る事は容易い。だが彼女が望まない場合、彼女自身が魔法力を使い逃げ出す事は明らかだ。
「その彼女の気持ちを手に入れる事が難しいのだ。アカデミーで彼女を狙っている者が多すぎる。なかなか彼女を落とせない。」
「いつも自信満々なお前が泣き言を言うとは。まぁアリアナ嬢ならモテるのもわかるが。」
そんな話をしていたら、ノックの音が聞こえる。入室の許可を出すと同時に、女性が入って来た。
「レオンハルト殿下、お帰りなさいませ。」
婚約者のエリスだった。
お読みいただき、ありがとうございました。
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
帰省して心身ともに疲れ果て、昨日寝落ちしてしまい今朝の投稿になってしまいました。申し訳ありません。
次回は明後日に更新予定です。




