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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】イスマエルの焦り(イスマエル視点)

ブックマーク、感想等、ありがとうございます。


イスマエル視点で、パーティー後からのお話です。

 アリアとは、あのパーティー以降、ゆっくり話す事が出来ていない。


 あの後、体調を崩したとかで、かなり長く実家に戻っていた様だ。誘拐や暗殺などという不穏な噂もあったので、魔法で居場所を確認しようとしたが、追跡出来なかった。気付かれて解術された様だ。


 一体誰が解術したのか。アリアナ自身に気付かれてしまったか?

 その他の人物か?思い浮かんだのはクロードだ。彼がアリアを想っている事は明らかだ。私が解術した追跡魔法も彼の魔法だったのであれば、自分の魔法が解術された事を知り、私の魔法を解術したとしても不思議ではない。

 もう一人、アリアに執心しているレオンハルトも可能性がある。だが、彼が私のところまで、彼女の居場所を聞いてきたところを見ると、彼も居場所はわかっていないのだろう。


 私は彼女の姿を見る事が出来ない事に焦り、配下の者に探らせる。

 だが、公爵家には全く彼女の気配が無い。

 焦っていたところへ、大使がアリアナの姿を王宮で見かけたと、報告して来た。

 王宮で花嫁修行と結婚式の準備をしていると噂になっているらしい。卒業と同時にクリストファーと結婚させると王妃が張り切っていて、アリアを常に側に置いているらしい。


 花嫁修行?結婚?

 冗談では無い。アリアはクリストファーとの結婚は望んでいないはず。クリストファーもアリアを疎ましく思っている。そんな二人が一緒になっても幸せになれる筈がない。


 どう手を打つかと、思案していたら、彼女がアカデミーに戻って来た。


『アリア!大丈夫か?』


『ご心配をお掛けいたしました。もう大丈夫ですわ。』


 私がアリアの腕を取ろうとしたら、レオンハルトが割り込んで来た。


「アリア、心配したぞ。」

 そう言って、彼はアリアの手を取る。


「レオンハルト様、ご心配をお掛けした事はお詫び致しますが、お手を外して下さいませ。」


「レオンハルト、アリアが嫌がっているだろう?」

 私はそう言って、レオンハルトの手を離し、アリアを背に庇う。


「お前が何故アリアに構う?」


「お前こそ、彼女が嫌がっているだろう?」


 私がレオンハルトに対峙していたら、後ろからアリアが出てきた。


「わたくしは、先生に呼ばれておりますので、お二人とゆっくり話す時間を取れません。どうぞこの場は収めてくださいませ。」


 アリアはそう言って、俺達に深く礼をして、その場を辞した。


 それから、何とか話をしようと近付くが、必ず誰かが一緒にいる。

 特に最近は西の国のルーカスが側にいる事が、多くなったと思う。

 今まで、そんな素振りはなかったのだが、一体いつ親しくなったのか?


 反対に私のところへは、他の女子生徒達が常に側に寄ってくる様になった。


 アカデミーでダメならと、商談の話で呼び出そうとしたが、代理が出て来るだけだ。


 次の手として、大使からアリアに正式な招待状を出して貰い、大使館でゆっくり会えないかと、思案していたある日、私は中庭で令嬢達から取り囲まれ、どう逃れようかと考えていた。

 近寄るなとやんわり断っても、全く効き目がない。かと言って、強く言う事も出来ない。彼女達は我が国の美容液を高く評価してくれており、口コミの宣伝に大いに役立ってくれているからだ。


 ふと離れたところからの視線を感じ、周囲を見渡す。


 2階の教室から、金色の髪の女子生徒の後姿とルーカスの姿が見えた。


 女子生徒の顔は見えなかったが、あれはアリアだ。

 私が間違うはずがない。


 何故二人きりでいる?

 そう思って、もう一度彼らに目を向けると、ルーカスがアリアを抱きしめているのが見えた。


 私は慌てて、彼らのいる教室へと向かう。

 階段を登る時間も惜しい。

 魔法で校舎の2階まで転移し、教室を探す。


 廊下の中程に、普段使われていない部屋があった。

 そこから、今まで聞いた事がない言語が聞こえる。

 ルーカスの国の言葉なら私も少しは使うことができるが、彼の国の言葉では無い。もちろんこの国の言葉では無い。


 一体何を話しているのか?一瞬考え込んだが、まずルーカスからアリアを離さなければと思い、扉を開けた。


 そこには、ルーカスの背に庇われたアリアナがいた。


 俺はカッとなり、ルーカスの後ろからアリアを連れ出そうとする。

 ルーカスはそれを遮った。そして、アリアが恋人契約を解除すると言う。

 頭の中が一瞬真っ白になった。

 更に結婚式という言葉を聞き、とにかく二人で話をしたいと、それ以外は考えられなかった。


 私はルーカスの隙をつき、アリアの手を取り、転移魔法を発動させる。


 アリアの空色の瞳は、大きく見開かれ、驚愕の色が浮かんでいた。だが、私は構わず彼女を抱きしめて、大使館にある私の執務室に飛んだ。


『イスマエル殿下、お放しくださいませ。』


 執務室に着いた事を確認したアリアは、私の胸に手を置き、距離を取ろうとする。

 私は少しだけ腕を緩めると、彼女は顔を上げる。空色の瞳は大きく開かれていた。

 腕の中にアリアがいると思うと、安心する。


『それは無理だな。何でルーカスと一緒にいたのだ?私との恋人契約は卒業までじゃなかったのか?』


『ルーカス殿下は昔なじみというだけで、特別親しくしているつもりはありません。』


 彼女は私の目をしっかり見て、キッパリと言う。言葉には嘘は無さそうだ。


『恋人契約の件は、申し訳ありませんでした。先ほども申しましたが、殿下にパートナーをお願いしたパーティーに兄も出席していまして、これ以上恋人契約を続けるのであれば、アカデミーは辞めさせると、言われてしまったのですわ。』


 彼女は相変わらず、離れようと腕に力を入れているが、私はこれ以上腕を緩めるつもりはなかった。

 もう一つ大事な事を聞いておきたい。


『アリアはクリストファーと結婚したいのか?』


『それは…わたくしは公爵家に生を受けた者としての義務だとは存じております。』


 彼女は空色の瞳を不安気に揺らした後、俯いた。


『模範回答を聞きたい訳ではない。アリアの本心を知りたい。』

 そう、アリアが望むならば、いつでも連れ出す事は可能だ。


『これ以上はお許しくださいませ。』

 彼女の立場では、やはり素直に口に出す事は難しいか。


『では、恋人契約はなかったことにしてもいい。だから私と本当に恋人になってくれないか?私がクリストファーに交渉しよう。』


 彼女は一瞬驚いた表情を見せたが、首を横に振る。


『クリストファー殿下は、この婚約に関して決定権はございません。彼もわたくしとの婚約は不本意のはずですわ。』


 そう彼女が言ったところで、彼女が急に慌て出す。

 どうしたのかと腕を緩めると、彼女が申し訳無さそうに、理由を教えてくれた。


『殿下、お話の途中で申し訳ありませんが、兄から通信魔法が入って来ました。応えてもよろしいでしょうか?』


 早いな。さすが公爵家の嫡男だけのことはある。

 彼女を困らせたい訳ではない。自分でも一時の感情で無謀な事をしたとの自覚はあった。

 私は彼女の片腕を取り、ソファーへと促す。そして隣へと陣取った。


『ああ。だが、私にも聴かせてくれないか?』


『ええ。こちらがスピーカーになっていますわ。魔法具の一つです。』


 そう言って、彼女は小型の小さな薄い箱の様な物を出してきた。


 そして、彼女は応答する。

「お兄様、どうされたのですか?」


「アリアナ、お前無事か?」


「ええ、何も問題ありません。もしかしたら、ルーカス殿下から何かご連絡がありましたか?」


 彼女の言葉に安堵した。


「ああ、お前が連れ去られたと騒いでいる。」


「それは困りましたわ。お兄様、わたくしは無事だとお伝え頂けますか?確かにイスマエル殿下と一緒におりますが、ただお話をしているだけです。お話が終わりましたら、アカデミーに戻りますから。」


「そうか。少しイスマエル殿下と話したい。側にいらっしゃるのか?」


「はい。伺ってみます。」


 アリアは私を見た。私は頷いて答えると、彼女はやはり箱型の通信装置を差し出してきた。


「構わない。話そう。」


「ありがとうございます。アリアナの兄です。この度は妹がとんでもないお願いを申しまして、申し訳ありませんでした。お詫びは致しますので、これ以上妹に関わらないで頂けないでしょうか?」


 やはりその話か。


「それは無理だな。詫びは要らない。だがこれからもアリアナ嬢には、関わらせて貰う。」


「妹は婚約しております。結婚前に余計な噂が出てくる事は困ります。」


「我が国から正式にアリアナ嬢への結婚の申し込みを、公爵家に入れればいいのか?それとも貴国の王家へ申し込めば良いのか?」


「すでに何件か他国の王家からお申し込み頂きましたが、我が王は許可を出しておりません。」


「それでは実力行使しかないな。」


「そう仰られるのであれば、我々も今すぐ実力行使に出るしかありません。今すぐ迎えに行きますが?近くに我が家の者が控えております。」


 どうやら私達のいる場所も把握している様だ。大使館の為、踏み込まないでいるのだろう。さすがアリアナの兄だ。彼女も心配そうに会話を聴いている。

 私は彼女を安心させる様に微笑み、答えた。


「それは困るな。今回はきちんと返すよ。」


「よろしくお願いします。妹に代わって頂けますか?」


「ああ。」


「お兄様?」


「殿下にきちんと謝罪しろよ。戻ったら連絡を入れる様に。後、晩餐の前には戻れよ。」


「はい。ご心配をおかけしました。」


 そう言って、彼女は魔法通信を切った。


『殿下、失礼いたしました。兄が失礼な事を申しまして。』


『いや、彼の心配は最もだ。それに、私はアリアに信用があるとわかったよ。だけど私の事をそんなに信用してもいいのかい?君の兄君に伝えた様に、私がアリアをこのまま奪うとは考えないのかい?』


 本心はこのまま我が国へと連れて帰りたい。

 だが、彼女の気持ちを無視する訳にはいかないと、理性がブレーキをかける。


『殿下はわたくしの意思を無視される様な事はされませんわ。今日の件は、わたくしにも責任があります。』


『アリアには敵わないな。そう言われてしまえば、私は手出しができない。だが、私は君に惹かれている。恋人契約を解消する事は了承しよう。だが一人の男として、これから付き合って欲しい。』


 私は彼女の両肩に手を置き、彼女の顔を覗き込む。

 彼女は戸惑っていた。空色の瞳が頼りなく宙を眺めている。


『ですが、わたくしでなくとも、殿下に相応しい方はいらっしゃると思うのです。』


 私はいい聞かせる様に、私の気持ちが伝わって欲しいと思いながら、彼女に向き合った。


『何度も言うよ。私はアリアが好きだ。君のその行動力、隠されている優しさや寂しさ、全てを引き受けるつもりでいる。どうか私との将来を考えてくれないか?』


『わたくしは殿下が仰られる様な娘では、ありませんわ。』


 頑なアリアをどう説得するかと思案しながら、彼女の片手を取り、甲にキスを落とす。


『私は私の目にした事や感じた事を信じる。まずは友人からでもいい。私との時間も作って欲しい。』


『もうすでにお友達ですわ。殿下とは。』

 彼女がクスッと笑う。

 それを見た私も、温かい気持ちになった。


『殿下ではなく、イスマエルと呼んで欲しいと言っていたが?』


『そうでしたわね。イスマエル様。皆心配しております。そろそろ戻りたいのですが。』


『ああ、済まなかった。俺が送って行こう。』


 そう言って、手を取り、立ち上がった。



お読み頂き、ありがとうございました。


年末で仕事以外に、予定外の用事が色々と入ってしまい、思うように更新出来ず申し訳ありません。

次回も2〜3日後に更新できるよう頑張りたいと思っています。お付き合い頂けますと嬉しいです。

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