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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】ルーカスとアリアナとイスマエル(ルーカス視点)

ブックマーク等ありがとうございます。

更新遅くなり、申し訳ありません。

ルーカス視点の続きです。

 足音が近付いて来る。


 俺は咄嗟にアリアナを背に庇う。

 それと同時に、扉が開かれ、イスマエルが入って来た。


 彼は俺たちを見て、信じられないという顔を一瞬見せたが、直ぐに王子の仮面を貼り付ける。


 そして、カツカツと足音をさせながら近付いて、アリアナの腕を取り、連れ出そうとした。

 俺は、彼の腕を振り払い、梨奈を背に庇った。


 イスマエルは焦りを滲ませていた。

「ルーカス殿、アリアナ嬢は私の恋人だ。離してくれ。アリア、私のところへおいで。」


 彼は手を伸ばし、アリアナに自分の元へくる様に促す。その様子が腹立たしく、気が付けば、彼の前に立ち、恋人契約の事を口にしていた。


「アリアナ嬢は、お前との恋人契約を終わらせたいと言っていたが。」


『佐伯くん!』と梨奈が止めたが、聞こえない振りをした。

 イスマエルも王子の仮面が外れた様だ。口調が荒くなっている。


「何だと!どうしてお前それを知っている?」


 俺はもっと挑発してやる。梨奈は後ろで俺の腕をツンツンと引っ張っている。止めろと言いたいのだろう。

 だが、ここでしっかり彼を諦めさせたい。


「アリアナ嬢が教えてくれたんだ。女子に囲まれているお前を見て、もう仮の恋人は要らないだろうってさ。」


「何!お前に言われる筋合いは無い。アリアナ嬢と話しをさせろ!」


「アリアナ嬢をお前と二人きりにさせる訳にはいかないな。話があるなら、今ここで話せばいい。」


「アリア、本当なのか?」


 梨奈も諦めた様に、俺の横に立ち、イスマエルに向き合った。


「ええ、イスマエル殿下、仮の恋人契約は解消させて下さいませ。もちろんお国への援助は、最初のお約束の通りに続けさせて頂きます。殿下の事を皆が注目しておりますし、もう仮の恋人は必要ないですわよね。」


 梨奈の言葉に俺も安堵する。彼女からはイスマエルに対して、特別な想いは感じられない。

 だが、イスマエルは違う様だ。

 確かにアリアナ嬢としての梨奈に、色々と構って貰うと、勘違いもするだろう。

 無自覚な梨奈は、この世界でも同じだった。


 アリアナは、はっきり言ったのだが、イスマエルは、なかなか引き下がらなかった。


「この間も言ったが、私はアリア以外は興味ない。このまま恋人でいてくれないか?」

 彼は懇願する様に言う。


「申し訳ございません。卒業までと思っておりましたが、兄に咎められたのです。これ以上恋人契約を続けると、アカデミーを辞めさせると言われてしまいました。結婚式の準備を始めるそうですわ。」


 俺もそれは聞いていない。イスマエルは更に驚いている。


「結婚式⁈」


「ええ、お休みを頂いていた間に、このままアカデミーを辞めて、王宮へ入ってはどうかと言われていたのです。王家から結婚式を早く行いたいとの打診があった様ですわ。」


 十分あり得る話だ。梨奈からの手紙でも、それらしき事が書いてあった。


「クリストファーとか?」


「ええ。わたくしは、せめてアカデミーぐらいは卒業したいのです。わたくしの我儘をお許しくださいませ。今までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。」


 アリアナは深く首を垂れる。

 イスマエルは首を横に振る。


「では、恋人契約で無ければいいのか?本当の恋人であればいいのだろう?」


 彼はアリアナの手を取ろうとするが、俺がアリアナの手を取り、後ろに隠した。


「そこまでだ。アリアナ嬢がアカデミーを辞めてもいいのか?つい先日もお前との事を咎められ、アカデミーに戻してもらえなかったそうだ。アリアナ嬢は婚約している。引き際は弁えた方かいいのではないか?」


 イスマエルは俺に詰め寄る。


「お前はどうなんだ?アリアナ嬢に言い寄っていたのではないのか?」


 俺は口角を上げる。


「俺はいいんだよ。」


「どういう事だ?」


 一触触発の俺たちを見兼ねたアリアナが、俺たちの間に入って来た。


「イスマエル殿下、ルーカス殿下とは、昔なじみなのです。懐かしい話しをしていたのですわ。」


「昔なじみ?その様な素振りは今までなかったではないか?」


「わたくしが忘れていたのです。あまりにも昔でしたので。」


「だからといって、アリアナ嬢と私の関係に口を挟む権利はないだろう?」


「イスマエル殿下、お怒りはわたくしに。ルーカス殿下はわたくしの事を思って、仰ってくださったのです。」


「それならば、今から二人きりで少し話がしたい。時間を貰えないか?」


 俺の隙をついて、イスマエルはアリアナの手を取った。

 俺が慌てて、外そうとしたら、彼が呪文を唱え、二人の姿が消えてしまった。


「追え!」

 俺は護衛につけていた魔法も使える側近に命令を出し、慌てて廊下に出る。周囲に二人の気配は無い。


 通信が出来る魔法具で、アリアナの店に連絡を入れる。事情を説明し、エリックに連絡を入れて貰う。


 アリアナを呼びながら探していると、レオンハルトがやって来た。

「アリアナ嬢がどうかしたのか?」


「イスマエルに攫われた。アカデミーでは無謀な事はしないと油断していた。今、配下の者に追わせている。」


 レオンハルトが声を荒げる。

「何!イスマエルが!」


「ああ。俺は魔法力が弱い。お前は強いだろう?アリアナの居場所がわかるか?」


「悪い。追跡魔法をアリアナ嬢にかけていれば、わかるだろうが、何も目印になるものが無ければ、探す事は難しい。出来るかもしれないが、時間がかかる。」


 レオンハルトは申し訳なさそうな顔をした。

 普段は独善的な彼が、アリアナの危機ともなれば、こうも変わるのか。


「そうか。俺が油断していた事が悪いんだ。配下の者が追えればいいのだが。」


 俺も申し訳無く思う。するとレオンハルトから発破をかけられてしまった。


「しっかりしろ!まずはアリアナ嬢を探すんだろう?俺の配下の者に、イスマエルが立ち寄りそうな学外を探らせよう。」


「悪い。俺は学内を探そう。見つかったら教えて欲しい。俺も教える。魔法具の通信でいいか?」


「ああ。今回は協定を受け入れよう。アリアナ嬢を見つける事が大事だ。」


「頼む。」


 俺たちはそう言って、梨奈を探した。

 俺が校舎を探していると、エリックがやって来た。


「ルーカス殿下、ご連絡をありがとうございます。詳しい事情を教えて頂けますか?」


 相変わらず慇懃無礼に挨拶をしてくる。

 彼は慌てた様子は見られない。


「エリック殿、私が側にいながら、申し訳ない。アリアナ嬢がイスマエルに転移魔法で連れ去られた。」

 俺は頭を下げる。


「殿下のせいではありません。どうぞ頭を上げてください。ところで、イスマエル殿下がアリアナを連れ去る時、アリアナは同意していましたか?」


「いや、アリアナ嬢はイスマエルとの恋人契約を終わらせると彼に伝えたら、彼は二人きりで話したいと転移魔法を使い、アリアナ嬢と消えた。」


 そう、彼女は決して同意してはいない。


「アリアナは恋人契約は解消と言っていましたか。」


「ああ。援助はそのままで、恋人契約だけ解消したいとはっきり言っていた。」


 エリックはどこか安心した面持ちになった。

 アリアナが攫われたというのに。


「そうですか。殿下、アリアナは直ぐに見つかると思います。今回はお知らせ頂きまして、ありがとうございました。」


「直ぐに見つかる?」


 俺は眉を寄せる。レオンハルトも探す事は難しいと言っていた。彼の言葉に嘘は無いと思う。

 何故、エリックは直ぐに見つかると思うのか?

 不意にレオンハルトが言っていた追跡魔法の事が頭に浮かぶ。


「ええ、本人が納得して姿を消したのであれば、厄介ですが、妹が望んでいなければ、戻ってくるでしょう。」


「それは、彼女に追跡魔法がかけてあるのか?だが、イスマエルが強硬手段に及んだらどうする?」


「彼が直接危害を加えるとは思っていませんが、確かにその心配はあります。殿下が仰る様に、アリアナには追跡魔法をかけておりますので、今追っています。」


 やはりと納得する。誰がかけているのか?

 エリックか?いや、違うだろう。彼がここに来ているという事は、別の人物だ。俺は一人の人物が頭に浮かぶ。


「アリアナ嬢が見つかったら、教えて欲しい。頼む。」


「ええ。殿下の魔法通信にご連絡差し上げます。ですので、アリアナの事はお任せください。」


「それは無理だな。俺は俺で探す。何かわかれば、また連絡する。」


 俺はそう言って、彼から離れた。





お読みいただき、ありがとうございました。


次回も2〜3日後に更新出来るよう頑張ります。

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