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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】エリックとルーカスとアリアナ(エリック視点)

ブックマーク、評価等、ありがとうございます。


投稿遅くなり申し訳ありません。

エリック視点の続きです。

 執務室では、二人がけのソファーに二人が仲良く座っていた。


 アリアナの手はルーカスの手に包まれている。

 それを見た瞬間、俺はアリアナを取られてしまう様な不安感に襲われた。嫉妬だろうか。


 俺の視線に気付いたのか、アリアナが慌てて手を外して立ち上がり、俺の方へと歩いてきた。


「お兄様!どうされたの?」


 俺はアリアナを引き寄せ、頬にキスを落とす。

 幼い頃からの家族の挨拶だ。挨拶の度に抱きしめ、恋人のキスを落としたいと思ってしまう。だけど、アリアナは妹だと、自分自身に言い聞かせ、気持ちを落ち着かせる。


「アリアナ、これはどういう事かな?俺は他国の王子達と二人きりで会うなと言ったよな。」


 アリアナは悪戯がバレた子供の様な顔をした。

「ここはアカデミーじゃないから、いいじゃない。」


「はあ?」


「わたくしはアカデミーでは二人きりにならないと、お約束しましたが、アカデミーの外で二人きりにならないとは言っていませんわ。」


 そう言えば、あの時、アカデミーって言っていたか?


「お前なあ。」

 俺は呆れたが、あの時、素直過ぎると思ったのも確かだ。最初からこのつもりだったのだ。


「アカデミーの外でもダメだ。わかったか?」

 俺は幼い子供に言い聞かせる様に、アリアナの両肩に手を置き、顔を覗き込む。


「わからないわ。わたくしだって、お付き合いがあるわ。別に疾しい事をしている訳ではないし。」


「じゃあ、なんで手を繋いでいた?」


「別に手を繋いでいた訳ではないわ。当たっていただけよ。」


 いや、それはかなり無理がある。

 ルーカスはしっかりアリアナの手を包んでいたぞ。


「お前なあ。いくら何でも、その言い訳には無理があるぞ。お前はクリストファー殿下と婚約しているのだろう?もう少し自重しろ。」

 アリアナは上目使いで、俺を見る。


「お兄様はわたくしをクリストファー殿下と結婚させたいの?」


「いやって、話を逸らすんじゃない!」

 アリアナは相変わらず、話を逸らす事が上手い。


「失礼、エリック殿、アリアナ嬢をあまり責めないで欲しい。私が東の国の話をしたいと無理を言ったんだ。」


 ルーカスが立ち上がり、私の元まで歩いて来た。

 俺は慌てて、アリアナを後ろに隠し、挨拶をする。


「ルーカス殿下、ご挨拶が遅れまして、失礼致しました。この度は貴重な情報をありがとうございます。」


「礼には及ばない。」


「ですが、ルーカス殿下、妹は嫁入り前で、婚約者がいる身です。いくら殿下と言えども、二人きりで会うことは、今後はご遠慮ください。」


 彼にも釘を刺す必要があると思い強く言うが、流石王族だけあって、全く動じていない。


「それは難しい。私はアリアナ嬢に惹かれているからな。私はいつでも責任を取る覚悟がある。今、二人きりで会った事を咎められるのであれば、私が責任を取り、彼女を娶ろう。」


 まさか、そう切り返されるとは、思ってもみなかた。

 ワザと責任を取らなければいけない状況を作り、アリアナを奪うつもりか?


「責任を取ると仰られるのであれば、アリアナに二度と関わらないと、お約束下さい。今日だけは、見なかった事に致します。今後この様な状況を確認しましたら、アリアナはアカデミーを辞めさせ、実家で花嫁修行をさせる事になります。」


 そう、本当なら家に閉じ込めておきたい。

 ルーカスは冷笑を浮かべる。


「それは困るな。私はアリアナ嬢とは一生関わりたいと思っている。」


 一歩も引く気がない、ルーカスに俺も苦笑していると、アリアナが後ろから俺の腕を引く。


「お兄様、わたくしは花嫁修行なんて必要なくってよ。」


 俺はアリアナに向き合う。


「母上が刺繍を教えたいと待ち構えているぞ。」


 アリアナは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「一通り習ったわ。」


「もっと上手に出来るように教えると言っていたが。」


「あれ以上はわたくしには無理だわ。」


「まぁそう言わずに、母上にも付き合ってやりなさい。」


 そう、母はアリアナが家に寄り付かないので、寂しがっていた。幼い頃から大人びていて、王宮にもよく出入りしていた為、構う暇がないと嘆いていたのだった。


「ところで、ルーカス殿下、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 俺はアリアナ抜きで、彼と話したい事があった。


「ええ、終わったら、アリアナ嬢とまた話すことができるのであれば。」


「私を同席させて頂ければ、構いません。」


「貴殿も一緒で構わない。アリアナ嬢、また後ほど。」


「はい、殿下。」


 アリアナも自然な表情で微笑みながら挨拶をしている。全く嫌がっている様子はなく、俺とクロード以外でこんな表情をみせる事が珍しい。


 俺は、ルーカスを応接室へと案内し、ソファーを勧める。


「それで、お話とは?」


「まずはお礼を。先日頂いた情報で実行犯達は捕まえる事ができました。それと先程こちらを受け取りました。」

 店長から渡された封筒を出す。


「ああ、役に立ったのであれば、何よりだ。そちらの封筒の中身には名前しか載っていない。今証拠になるものがないかと探らせている。それとは別に、我が国の方にも照会しているので、分かり次第連絡しよう。」


 名前だけでも、十分有難い。

 俺たちも調べているが、なかなか全員を把握することが難しい。しかも彼は名前だけではなく、証拠まで集める事に協力してくれるという。

 これもアリアナの為か。


「それはありがたいです。よろしくお願いいたします。」


「貴殿が約束を守ってくれた対価だ。礼はいい。」


「殿下のお国は諜報機関が優秀ですね。アリアナとの連絡はどの様にされていたのですか?」


 そう、王宮にいたアリアナとどうやって連絡を取っていたのか。


「さあ、なんの事だか。」


 彼は惚けるが、俺は構わないで、話を続ける。


「ところで、アリアナとの事です。先程も申し上げましたが、今後二人きりで会う事はご遠慮頂けないでしょうか。」


「それは難しいな。アリアナ嬢には、彼女を理解できる者が側にいる必要がある。」


 理解?どういう意味かのか?


「アリアナは私がいます。殿下のお手を煩わせる訳には参りません。」


「エリック殿に彼女の何が理解できると。彼女が抱えている悩みも知らないだろう?」


「アリアナの悩みとは?」

 一体何の悩みだというのか。そんな素振りは見せた事はない筈だが。


「それは勝手には教えられない。」


「殿下、私はアリアナの兄です。妹が何か悩みがあるのであれば、力になりたいと思う事は当然です。」


 そう、アリアナの一番身近にいると自負している。

 ほとんどの事は、俺に話してくれていた。

 兄としてはアリアナから信頼を得ていると思う。


「では、クリストファーとの婚約の事をどう考えているんだ?」


 ここで、クリストファーとの婚約の話が出てくるとは思わなかった。アリアナがクリストファーとの婚約を内心は嫌がっている事は知っているし、クロードと協力して、潰す様手を回しているところだ。


「私からは何も申し上げられません。アリアナの悩みとは、婚約の事ですか?」


 婚約の事は嫌がっていたが、悩んでいるという素振りは見られなかった。


「さあ、私から答える事はない。アリアナ嬢とはこれからも会うし、彼女が望むならば、喜んで我が国に迎えるつもりだ。」


 彼は挑戦的な言葉を使うが、明らかにアリアナの気持ちを大事にしている事はわかる。

 それはそれで、複雑な気持ちになる。


「それは、殿下はアリアナが望まない事はされないと解釈させて頂きますが。」


 俺もワザと確認を取る。


「好きに取ればいい。私とアリアナ嬢の関係は変わらない。ああ、そういえば、レオンハルトとイスマエルに注意しろ。彼らの背後の動きが怪しい。」


「それはアリアナに対してですか?」


 彼らの事は、俺たちも注意している。今のところ、表だって動きがある様にはなかった筈だが。


「ああ、あの二人はアリアナ嬢を狙っているのだろう?」


「ええ。それは存じております。ですが、妹はお断りしていると申しておりますが。」


「それくらいで、諦めると思うのか?」

 彼は冷ややかに言い放つ。


「その点は私も危惧しておりますので、護衛は付けております。」


「その護衛は信頼できるのかね。」


「我が家の精鋭を付けておりますが。」


「それならいいが。ところで、その封筒内のリストにある人物、アリアナの事を邪魔に思っている様だ。まだ具体的な動きは無いが、注意してくれ。」


 俺は封筒に視線を向ける。

「この中のリストに載っている人物が、アリアナに害を為すと?」


 ルーカスは思案気に口を開く。

「どう動くかまだわからない。だが、彼らはクリストファーを支持している様だ。そこまで言えば、わかるだろう?貴国の内政問題だ。」


  全く我が国の内情は筒抜けの様だ。

 どちらが王太子になるのか、確かに派閥か出来つつある。我が家は中立派となっているが、実情はクリストファーに見切りをつけた親父が、クロードの後見となる事を、了承している。

 ただし混乱を避ける為、明言は避けているが。


「だが、アリアナ嬢に危害が加えられそうになるのであれば、彼女の意思は関係なく、我が国へお連れする。彼女の身の安全が第一だからな。その為に、我が国の護衛も彼女に張り付いている。」


 彼も護衛を付けているのか?

 我が家の精鋭からの報告には、そんな話は無かっだ筈だが。


 クリストファー支持派は、アリアナの代わりに扱いやすい令嬢を、彼に当てがい、自分達の思い通りに政を扱う事を目論んでいる。アリアナがクリストファーの妃となると、親父に実権を握られる事になり、自分達の目論みが外れると焦っており、直接手を出す可能性がある。それは、俺たちも把握している。


 そして、カーラという令嬢は、そんな中で選ばれたらしい。クリストファー好みの、何も考えず、言われた通り動く娘。身分が低くとも、養女を何回か繰り返して、身分を上げていく事は可能だ。クリストファーさえ、落とせば、後は何とでもなる。そう考えているのだろう。


「我が家の護衛は、妹を連れ去られるほど、無能ではございませんが。」

 それに妹自身の魔法力もある。


「それはどうかな?だが、我等が動く事態にならぬよう、不穏な芽を潰す事が貴殿の仕事ではないのか?」


 全く、ルーカスは味方なのか、敵なのか。

 アリアナの為に俺たちに動けと言う。

 彼は掴み所がない。年下のはずなのに、妙な威圧感のせいか、10歳は上の人物と話している気分になる。

 彼がいる西の国は侮れない。世継ぎでないからこそ、自由に動き、彼の国を発展させるのだろう。


「そうですね。せっかく頂いた情報です。有効活用させて頂きます。」


「ああ、頼むよ。話はこれだけかな。そろそろアリアナ嬢のところに戻りたいのだが。」


「ええ、お時間を頂き、ありがとうございます。アリアナをこちらに呼びましょう。」


「ああ、頼むよ。」


 あくまでも、アリアナに会いたいと言う彼を、釈然としない気持ちで見てしまう。そんな気持ちを持て余しながら、アリアナを呼ぶ為に、廊下に出た。



お読みいただき、ありがとうございました。


昨日忘年会で、帰って投稿しようと思っていたら、潰れてしまいまい、投稿遅くなってしまいました。

申し訳ありません。はい。今も二日酔いです。反省してます。


これから、プライベートの時間も忙しくなりそうなので、2〜3日おきの投稿とさせて頂きますが、お付き合いいただけますと、嬉しいです。

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