【番外編】ルーカスとエリック(ルーカス視点)
ブックマーク等、ありがとうございます。
ルーカス視点の続きです。
あれからどれくらいだったのだろう?
俺の元には、アリアナからの手紙の束が出来ていた。
俺の毎日の様に出した手紙に、アリアナは律儀に返事を返してくれた。
アリアナが追っている人攫いの件を調べさせていた俺は、実行犯とその元締めのアジト、黒幕の人物を突き止めた。
黒幕は我が国の事件から、洗い出すと浮上してきたのだった。
実行犯達は現場を押さえさえすれば、捕まえる事は可能だろう。ただ黒幕は貴族の為、下手な手出しは出来ない。証拠を押さえる事が必要だ。
さて、どこまで手出しをするか。
アリアナに直接伝えても良かったが、彼女が無理をする可能性もある。
迷った末に、あの魔法具店に行く。
俺が入っていくと、店長が寄って来た。
「先日は失礼をいたしました。」
彼は俺の事を覚えていたようだ。
「ああ、お前も断れなかったのだろう。謝罪はいい。今日はアリアナ嬢の兄君に連絡を取りたい。どうせ俺がアリアナ嬢に連絡を取りたいと言えば、彼のところに連絡が行くのだろう?」
さあ、彼だけ出て来るか、クロードも出て来るのか?
「お嬢様から伺った通りのお方で。全くその通りでございます。今から急いで連絡を取って参ります。お部屋にご案内いたしますので、しばらくお待ち頂けますか。」
彼は笑みを浮かべた。多分彼はアリアナの忠実な部下なのだろう。
「ああ、店の品を見せて貰うから、しばらくはここでいい。」
俺はそう言って、魔法具を見ていく。そこで前世の監視カメラの様な道具を発見した。これは使えそうだ、後で購入しよう。
そう思いながら、店の中を見ていく。
姉が言っていた美顔器、そう言えば、簡易式の物しか買っていなかったなぁ、姉に買っていくか。と思い、手に取ってみる。
国で見たものとあまり変わらない気もするが、姉も母も気に入っていたし、何より梨奈が開発した物だ。
そんな事を思いながら、待っていると、店長が戻って来た。
「エリック様はすぐにいらっしゃるそうです。どうぞこちらでお待ち下さい。」
そう言って、彼は前回通してもらった部屋へと案内しようとした。
「ああ、その前にこの美顔器とこの記録装置を購入したいんだが。」
そう言って、俺は商品を差し出す。
「承知いたしました。お帰りになる前にご準備させて頂きます。」
「会計は?」
「弊社社長より、ルーカス様が次にいらした時には、お好きな物を選んで頂くよう、承っております。」
そう言って、彼は商品を別の店員に渡した。
社長って、誰だ?アリアナが何か手を回したのか?
前回通された部屋に入る。
用意された紅茶を飲もうかと、手を伸ばした時にノックの音がした。
入って来たのは、エリック一人だった。
「ルーカス殿下、先日は大変失礼致しました。今日はどんなご用件でいらっしゃいますか?」
彼は慇懃無礼に挨拶をしてきた。
彼の面差しは、アリアナを思い出す。
「今日はクロード殿下は一緒ではないのかい?」
そう、クロードも出て来るかと思った。
彼だけの方が話が早いだろう。
「私をお呼びと伺いましたので。」
「ああ、エリック殿だけで助かった。とりあえず、掛けてくれ。ああ人払いを頼む。」
エリックは怪訝そうな顔をしながらも、店長に人払いを命じる。
「この店は公爵家が関係しているのか?」
「まぁ、そんなところです。ところで、お話とは?」
「アリアナ嬢をアカデミーに戻して欲しい。」
彼は一瞬目を見開く。が、すぐに冷静さを取り戻す。
「それは私にはお答え出来かねます。」
当然、予想していた通りの答えだ。
「交換条件だ。ここにある情報がある。まあ、信用されないとはわかっている。一枚は貴殿に差し上げよう。私の手元には、その事件の黒幕と関わっている貴国の貴族達のリストがある。」
そう言って、俺は手元にある書類を出した。
彼は食い入るように、書類に目を通す。
「これを一体どこで…」
「それは言えない。信じるも信じないも勝手だが、アリアナ嬢が1週間後までに戻らない時は、同じリストを彼女に渡す。」
「何故、妹に渡すのです?」
「彼女から話を聞いていたからだ。貴殿を呼んだのは、この情報を彼女に渡せば、無理をするだろうと考えての事だ。私も彼女が大事なので、危ない事はして欲しくはない。兄君であり、クロード殿下の側近の貴殿であれば、この情報を渡す意味をわかってもらえるかと思ったのだが?」
「確かに…妹は向こう見ずのところはありますが、ルーカス殿下がここまで我が国に協力してくださる理由がわかりません。先日は我が国を目の敵にされているように思えましたが。」
「貴国に協力している訳ではない。アリアナ嬢に協力するだけだ。彼女に直接渡してもいいが?彼女が動くのであれば、私は全力で彼女を守るだけだ。」
「いえ。これは有り難く頂きます。アリアナは近くアカデミーに帰そうと私も考えておりましたので、父と相談いたします。ですので、そちらの書類も頂けないでしょうか?」
流石にクロードの側近の事だけはある。
俺は冷ややかな笑みを浮かべる。
「クロード殿下と相談ではないのか?アリアナ嬢を隠しているのはクロード殿下だろう?これは、アリアナ嬢が戻ってきたら、この店に届けよう。」
「ルーカス殿下には、お見通しですか。確かに彼にも報告は致します。この事件も魔法師団の管轄ですので。」
彼は諦めたように、ため息を吐く。
「クロード殿下はアリアナ嬢をどうしようと考えているんだ?」
そう、クロードは一体何を考えているのか?
「それは、どの様な意味でしょう?」
エリックは惚ける。まぁ、彼の立場では、仕方がない事か。
「彼女はクリストファーの婚約者だろう?何故彼女に執着する?」
「その件に関しては、私はお答え出来かねます。殿下こそ、何故我が妹の事を?以前に接点はなかったはずですし、アカデミーでもその様な事は無かったはず。それがあのパーティーの日から突然とは。しかも昔からとは、どの様な意味でございますか?」
おそらく、彼は聞く機会を伺っていたのだろう。
語調を強め、聞いてきた。
「そうだな。生まれる前からとでも、言っておこう。彼女は私の運命の相手だ。」
俺は笑みを、浮かべながら返す。
「生まれる前?そのような戯言、誰が信じるのですか?殿下が妹の事を真剣に考えていらっしゃる事は、十分理解致しましたが、妹は婚約しております。結婚前に妙な噂が立つ事は、彼女の為になりません。どうか、諦めて頂けないでしょうか?」
そう言われるとわかっていても、腹が立つ。
「それはクリストファーと結婚させると?それともクロード殿下か?彼女の意思を無視していいのか?」
「妹も公爵家に産まれたからには、義務がある事ぐらいは理解しているでしょう。」
「ふ〜ん。妹を溺愛していて、意思を無視するのか?政略結婚なら、俺も悪くはないぞ。第二王子だから、国を出ても構わないし、嫁に来て貰えば、アリアナには余計な苦労をさせないで済むし、公爵家に色々有利になるよう便宜を図れる。」
「ご冗談を。ルーカス殿下は若いながらに、お国の為に働いていらっしゃる事は存じております。我が家に来て頂く訳にはまいりませんし、アリアナを国から出す事も考えておりません。」
「冗談ではない。アリアナ嬢と一緒になれるのであれば、何だってする。」
そう、どんな事でも。国を捨てる事も厭わない。
「だから妹を攫ってでも、一緒になると?」
彼の目が鋭くなる。
俺はニヤリとする。
「ああ、あの時も攫うとは、言っていないはずだが。だが、彼女が望まない事はしない。それだけは言っておこう。」
彼はこれ以上の論戦は諦めた様だ。
「妹は一筋縄では行かないですよ。」
「それも良くわかっている。安心して欲しい。彼女の気持ちを蔑ろにするつもりは無い。呼び立てて悪かった。なるべく早く結論を出して貰いたい。期限は1週間だ。では、失礼する。」
そう言って、私は席を立った。
さあ、彼はどう判断するだろう?
いや、彼らか。アリアナを閉じ込めているのは、間違いなくクロードだ。
アリアナ、いや、梨奈が戻って来る事を願って、俺は店を後にした。
それから、数日後、1週間の期限前に、アリアナ、いや梨奈は、アカデミーに戻ってきた。
お読みいただき、ありがとうございました。
アリアナとの絡みを入れたかったのですが、今回は断念。次回にしたいと思います。
次回も2〜3日後に投稿予定です。
お付き合い頂けますと、幸いです。




