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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】ルーカスとクロード(ルーカス視点)

ブックマーク等、ありがとうございます。

大変励みになります。


ルーカス視点になります。

クロードとルーカスが魔法具店で対峙した場面からの話です。

 俺は梨奈と会えると思って、あの魔法具の店に足を運んだ。


 だが、そこに梨奈、いやアリアナの姿は無かった。

 代わりに、クロードとアリアナの兄がいた。


 俺は店長に向かって、強い口調で咎める。

「私はアリアナ嬢に取り次いで欲しいと言ったのだが?」


 だが応えたのは、クロードだった。

「私がそう命じた。話がある。座ってくれ。」


 大方、アリアナに関する事だろう。

「私は貴方がたと話す事など、ありませんが?」


「アリアナの事だ。」


 アリアナに何かあったか?

「アリアナ嬢は?」


「体調が悪く、暫く療養させるつもりです。申し遅れました。アリアナの兄のエリック-ファーガソンです。」


 梨奈は軟禁されたか。この二人がここに来ているという事は、梨奈から何か聞き出したか?

 昨日の今日で具合が悪くなるとは思わない。本当に具合が悪ければ、伝言でいいはずだ。

 昨日は問題なかったと問えば、体調が変わりやすいと言う。


 その会話を遮る様に、クロードが話を振ってくる。


「昨日は何を話していた?」


 やはり、俺と梨奈の関係について、探りを入れたいようだ。彼女はどこまで話したのだろう?


「お互いが知っている遠い東の国の話を。」

 前世の話だと知っているのか?


「それだけで、何でアリアナが泣くんだ?何を言って泣かしたんだ?」


 ああ、アリアナが泣いていた事を報告されたのか。

 前世の話をした事は、知られていない様だ。


「私が泣かした訳ではありませんよ。」

 そう、昔を思い出しただけだ。そして今までの孤独感を思い出したのだろう。


「では、質問を変えよう。アリアナに求婚したな。」


 俺は内心驚く。だが平静を装い、アリアナから聞いたのかを確認する。

 何で知っている?昨日の会話は日本語だった。聞かれたとしても、内容はわからないはずだ。前世の事は知らない様だから、求婚の事だけ、アリアナから聞き出したか?彼らはアリアナの周囲に、異常なほど注意を払っている。


「アリアナは婚約している。余計な手出しは無用だ。」


 やっぱりそれが言いたかったのか。

 だが、クリストファーが言ってくるのではなく、クロードが言って来たところを見ると、やはりクロードはアリアナに、特別な感情を持っているらしい。


 俺はクリストファーの不実を詰り、彼女を昔から愛していると伝えた。そう、お前たちよりずっと前から、俺は梨奈の事が好きだ。この想いは負けない。


 そして、国としての取り引きを申し出る。

 俺の本気を示す為だ。

 彼女を手に入れる事ができるのであれば、如何なる手も使おう。


「ずっと昔?いつからなのか?」

 やはり聞き逃さないか。

 答えるつもりは無い。


「それは申し上げられません。アリアナ嬢との秘密です。」


「そうか。では、こちらも単刀直入に言わせて貰う。二度とアリアナに近付くな。アリアナを幸せにする相手は、クリストファー以外にも国内にいる。彼女を決して国外に出す事は無い。」


 やはりそれが本音か。


「その相手とは、クロード殿下、貴方の事ですか?ご兄弟で女性の取り合いとは、国が乱れる原因になりませんか?」


 俺はワザとクロードを挑発する。


「何!」

 クロードは挑発に乗った。

 兄弟仲が悪いと言う事は、間違いないようだ。


 俺はアリアナを諦めないと伝え、軍を動かす事も厭わないと告げる。

 そう、俺はクロードに宣戦布告した。

 アリアナは梨奈だ。梨奈は俺が貰う。


「我が国の軍を甘く見ては困るな。」

 クロードは口角を上げて言う。


 この国は魔法師団が中心の軍だ。確かに強い。だが、ゲリラ戦など細かい戦術は、我が国の方が得意としている。


「いえ、十分実力は承知しております。が、言いましたよね。私が欲しいのはアリアナ嬢だけだと。」

 俺も口角を上げて、クロードを見据える。


「どういう意味だ?」


 私は正攻法だけでは無いと仄めかす。

 我が軍は、細かい作戦は得意とするところだ。

 梨奈一人を連れ去る事など、容易い。


「それは脅しか?」


 俺はクロード個人に対しての脅しだと暗に伝える。

 国の争いは望んでいないと。反対に国を動かさずとも、アリアナを連れて行くと宣言したも同然だった。


 俺は腰を上げながら、ほくそ笑む。


「アリアナ嬢がいらっしゃらないのでしたら、私は失礼いたします。彼女にお大事にとお伝えください。()()()()調()()()()()()()。」


 そう言って、私は部屋を出て行った。


 その後、アカデミーの寮に戻ったが、アリアナの事が気になり、落ち着かない。


 この国に潜り込ませている間諜に、アリアナの居場所を突き止める事を命じる。 

 クロードのあの態度であれば、アリアナは何処かに軟禁されているはず。心身に危害が及ぶとは思わないが、俺やその他の王子から、隔離したいのだろう。


 案の定、休み明けの授業には、アリアナはいなかった。

 教師に確認すると、体調不良で自宅に戻っているとの事だった。


 2、3日なら、以前も休む事があり、皆不思議には思っていなかった。


 その数日後、間諜は彼女は公爵家やその所縁の場所には、いないと報告してきた。

 となると、考えられるのは、王宮か。

 クロードが執着している事を考えると、間違い無いだろう。

 間諜に王宮を探る様、命じる。


 1週間過ぎた頃から、皆が不思議がり、2週間経つと騒ぎ出した。男女共に人気がある彼女の存在は大きく、かなり酷い病気なのかと心配の声が上がる。


 俺もクラスメイトの女子に聞いてみる。

「アリアナ嬢が何で休んでいるか、知っているかい?」


「ルーカス様、わたくし達には体調が優れないとしか、伺っておりませんわ。」


「誰かお見舞いに行った事はあるのかい?」


「それが、誰も行かれていないと思います。安静が必要とかで、公爵家がお断りされているそうです。」


「そう。ありがとう。」


 留学している王子たちは、それぞれの部下(間諜)を使い、探りを入れている。

 かなり必死の様子だ。


 そう、彼女を手に入れたいと考えている者は多い。


 特にレオンハルトは必死だ。彼自身が探している様で、アカデミーを時々休んでいる。


 あの日、あのまま彼女を連れ去れば良かった。

 混乱している気持ちが落ち着くまでと思った事は、間違いだったか。


 そう考えていたら、間諜からの報告で彼女は王宮に居る事がわかった。王宮内であれば、自由に動けるらしい。


 前世の事をアリアナがクロードに話したのか?

 王宮に居るという事は、クロードが糸を引いているに違いない。


 俺は間諜に彼女への手紙を託す。


 日本語で書いてあるので、万一アリアナ以外に渡っても内容はわからない。

 手紙には、元気かどうかの確認と、軟禁されているようであれば助け出すという事、そしてその後、我が国で暮らさないかと誘う。最後にとにかく連絡が欲しいと付け加える。連絡手段として、魔法具店で手に入れた小型の通信装置を用意した。


 彼女が望むなら、今すぐにでも、連れ出して国に戻ろう。

 だが、彼女が望まなければ…

 俺は諦める事ができるのか?この前世からの想いを、思い出として整理できるのか?


 俺は首を振る。それは無理だ。


 それから数日後、梨奈からの手紙と文箱らしき物を間諜が持って来た。


 [佐伯くんへ


 お手紙ありがとう。

 先日は約束が守れなくて、ごめんなさい。

 前世の事は兄達には話していませんが、私の様子が普段と違い、お約束の日に外に出して貰えませんでした。 


 兄達が病気療養とアカデミーには連絡していますが、私は元気にしています。心配しないでください。


 王宮の中は、会話が盗聴される可能性があるので、魔法通信は使えません。お手紙を持って来てくださった方にも、危険が及ぶかもしれないので、王宮に寄越すのは、もう止めてください。


 代わりに魔法を施した紙を用意しました。

 何か連絡ありましたら、この紙に書いて、鶴でも紙飛行機にでも折って、外に飛ばして下さい。鳥になって、直接私の所まで届けてくれます。


 佐伯くんが私の事を心配して下さる事は、感謝しております。ですが、兄達も過保護ではありますが、私の事を心配してくれています。軟禁では無く、こちらでの仕事があり、戻れないのです。

 私自身も前世の事に関して、まだ気持ちの整理が出来ません。こんな私の事を思って下さり、とても有り難いのですが、今はこの国を出る事は考えておりません。

 佐伯くんにも、過去の梨奈に囚われず、ルーカス殿下としての人生を生きて欲しいと思っています。


 くれぐれも無理な事をされないでください。

 クロード殿下は能力のある方です。私の事になると過保護になるので、佐伯くんや西の国にとって、不利な事をしないとも限りません。

 私もなるべく早く、アカデミーに戻るように努力します。


 また、アカデミーでお会いできる事を楽しみにしています。       

                   梨奈]


 俺は梨奈が無事である事に、まずは安心した。

 だが、彼女は俺が助け出す事をやんわりと断った。

 次の手をどうするかと考える。


 手紙とはいえ、連絡手段が手に入った事で、ひとまず安心する。


 鶴でも紙飛行機でもって、梨奈らしく笑ってしまった。前世を思い出す。

 家族連れを対象とした販促イベントで、親と一緒に来店した子供達が退屈しないよう、折り紙を折ってあげると言うイベントがあった。折り方を忘れていた俺は、梨奈に折り方を習いにいったなぁ。あの時は梨奈の気を惹きたくて、わざわざ開発部に足を運んだ。

 結局上手に折れなかった俺を心配して、梨奈もイベントを手伝ってくれた。休みを潰してまで来てくれた梨奈に悪いと謝ると、(直接お客様の要望を聞ける事は、勉強になるから、気にしないで。)と言いながら、子供達と折り紙を折る事の方に夢中になっていたな。


 まずは、アリアナとして生きている梨奈の信頼を得る事から始めないといけないのか。

 前世と一緒だな。だが、梨奈は俺を拒絶したわけでは無い。


 卒業まで、後数ヶ月。それまでに、梨奈の信頼を勝ち取り、国に連れて帰ろう。


 さあ、梨奈への手紙でも書いてみるか、と俺は机に向かった。




お読みいただき、ありがとうございました。


なんとか今日は間に合いました。

明日以降、不定期投稿とさせて頂きますが、2日〜3日に1回は投稿できるよう、頑張りたいと思います。お付き合い頂けますと、幸いです。



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