【番外編】アリアナと事件(アリアナ視点)
ブックマークなど、ありがとうございます。
昨夜、投稿しようと見直していましたら、まさかの寝落ち。投稿遅れてしまいました。
アリアナ編です。
兄が私に声を掛ける。
「アリアナ、状況を説明してくれ。」
「ええ、今日の夕方、孤児院の女の子2人が攫われたの。一緒にいた男の子は怪我をしているわ。犯人は男が4人だったらしいわ。」
「街の警備に報告は?」
「一緒にいた子が助けを求めたらしいけど、取り合ってもらえなかったって。」
クロード殿下の瞳が鋭く光る。
周囲の団員が息を飲む。
取り合わなかった警備員は、魔法師団ではない。街の警備担当の騎士団の団員だったはず。彼らの落ち度では無いのだけど。
「アジトがどの建物かわからないのでしょう?倉庫街を私が子供達を探す振りをすれば、出てくるんじゃない?」
「それはお前を囮にしろと?」
兄が怪訝そうに言う。
「そう。それが早いわ。」
「それは絶対ダメだ。」
クロード殿下が口を出す。
やっぱり。
「だって、あの広い倉庫街を探すより、向こうから、来てくれた方が早いじゃない。わたくし一人で行く訳ではないのだから、いいでしょう?」
クロード殿下ではなく、兄に頼んでみる。
「ダメだ。」
答えたのは、クロード殿下だった。
「だって、囮になれそうなのは、わたくししか、いないじゃない。」
兄に向かって説得する。
だが、クロード殿下が応える。
「あの人攫いの集団は、裏で貴族と繋がっている可能性がある。どんな手を使ってくるか、わからない。」
「じゃあ尚更、早く見つけ出さないと。私が囮になる以外に、他に何か手があるのですか?」
「シラミつぶしに探すしか、無いだろ?」
兄が答える。
「そんな事していたら、逃げられてしまうわ。私が囮になるから。」
兄はため息を一つ吐く。
「絶対一人ではダメだ。」
じゃあ一人じゃないといいのね。
「じゃあ、誰か女装して付いて来てくれる?」
女性じゃないと警戒されてしまう。女装なんて誰が請け負ってくれるかしら?
兄は団員を見渡し、一人の団員に視線を合わせた。
「マルティン、お前女装しろ!」
「えっ!また俺ですか?」
「そうだ。お前はまだ背も高く無いし、童顔で可愛く見える。この間も似合っていたぞ。」
確かに女装似合いそうな若者だ。
「そんなぁ。」
「諦めるんだな。」
「貴方どれくらい力がある?自分の身は守れる?」
私は彼とは組んだ事が無いので、実力を知らない。
「はい!身を挺してお守り致します。」
「わたくしの事はいいの。」
「アリアナ、そいつは見た目ひ弱そうだが、かなり魔法力もあるし、体術も出来る。安心しろ。」
それは頼りになりそう。
「そう?本当に?」
「はい!」
話がまとまりそうになったところで、クロード殿下が口を出す。
「やっぱりダメだ。」
「殿下、わたくしは大丈夫ですわ。」
「アリアナを危険な目に合わせたく無い。」
気持ちはありがたいのだけど、私も黙って見ている訳にはいかない。
「クロード、こいつは言い出したら聞かないのは知っているだろう。勝手に動かれるより、監視の上で動かした方がより安全だ。それに大掛かりに捕物ができれば、一石二鳥だ。」
兄が味方になってくれた。
「お兄様、黒幕の貴族まで捕まえるので有れば、わたくしはしばらく潜入しましょうか?」
そうすれば、黒幕に辿り着くだろう。
「絶対にダメだ!」とクロード殿下が叫ぶ。
「今回はそこまでは望んでいない。黒幕は現場には出てこないだろう。証拠になりそうな物が出てくるか、犯人が口を割るか、どちらかが出来れば上々だ。だから、絶対に無理するな。」と兄が冷静に私を諭す。
確かに黒幕を突き止める事は、難しいかもしれない。
兄と打ち合わせをして、準備を始めた。
マルティンは町娘の服装に着替え、カツラを被る。
私は魔法で髪の色を漆黒に変えた。
そして、私達は倉庫街へ移動する。
「アリアナ、決して無理をするな。」
クロード殿下が私の肩に手を置いて、念を押した。
「はい。」
私も素直に返事をした。
私とマルティンは倉庫街を歩く。
ジャックが駆け込んだ時は、まだ明るかったが、今は闇に包まれていた。
申し訳程度にあるランタンが、ここが倉庫街だと教えてくれる。
女装のマルティンは可愛らしい。
「マルティン、貴方は捕まりそうになったら、逃げて。男性だとバレると大変だから。」
「そんな事をしたら、私は副団長から殺されます。バレない様に魔法で何とか誤魔化しますよ。皆の前では、ああ言いましたが、私は女装して潜入捜査をする事は時々あるので、大丈夫です。あっ、女装の時の偽名はマルティナでお願いします。」
「それでそんなに慣れているのね。私のことはリアと呼んでね。」
そう、女の子みたいに歩く事が上手だった。
私も街での名前で呼んでもらうように頼む。
「マリア、ソフィー!どこにいるの!」
こう叫んで探せば、彼らはアジトがバレたと思って、慌てるだろう。
私達、若い女二人だと、わかれば、絶対に攫うはず。
そう考えながら、二人の名を呼ぶ。
倉庫街の中心部付近を歩いていたら、突然屈強な男達に囲まれた。
「これはこれは。俺たちのアジトがバレたかと思って出てきてみれば、お嬢ちゃん達だったぜ。」
「ハハハ」
男達が笑う。
怖がる振りをして、何人いるのかを探る。
10人ほどだろうか。
ここに10人出てきても、アジトにも残っているはず。
何とかなる人数かしらと計算する。
私は怖がりながら声を出すという、難しい演技に挑戦した。
「あなたたちなの!マリアとソフィーを攫ったのは!二人を返して!」
「それは出来ないなあ。だが大人しく付いて来るなら、会わせてやってもいいぜ。」
「あの子たちは、無事なの?」
「自分の目で確かめな。」
彼らは卑俗な笑みを浮かべる。
そんなやり取りの間に、私達は男達に囲まれた。
両手を後ろ手に取られる。
「何するのよ!」
「おっと、傷つけるなよ。大事な体だ。嬢ちゃん達も大人しくしな。」
そう言って、私達を縛る。
男達に囲まれながら、倉庫の一つに連れて行かれた。
倉庫には、私達を連れて来た男の他に10人ほどの男達がいた。
そこには、大型の檻があり、下は5歳から15歳ぐらいだろうか。女の子が十数人入れられていた。
「お前達も入れ!」
縛られた腕は解かれたが、私達も檻に入れられた。
「マリア!ソフィー!」
二人は中にいた。私を見て、キョトンとしている。
髪の色を変えているので、わからなかったのだろう。
私は彼女達を抱きしめながら、耳元で囁く。
「リアよ。髪の色は染めているの。もうすぐ助けが来るわ。だから頑張って。」
彼女達はコクコクと肯く。
周りを見渡すと、皆疲れ果てて、怯えた表情をしていたが、命に危険があるような状態の子はいなかった。
とりあえず、私はホッとした。
さて、次はどう彼女達を助けよう?
とりあえず、兄達が踏み込むのを待つしかないのかな。
マリアとソフィーの二人だけなら、マルティンと助ける事は可能だとは思うけれど。でも、全員を確実にとなると、防護魔法で守りながら、賊を退治しなければ無理だわ。
出来ない事は無いけれど、この子たちがパニックでも起こせば難しい。
男達は私達を捕まえて安心したのか、倉庫の入り口に見張りを二人残して、酒盛りを始めた。
私はマルティンに視線を合わせ、小声で囁く。
「外から踏み込んで来たら、そのドサクサに紛れて、檻を壊して防護魔法をかけるわ。貴方どこまで出来る?」
「私は檻を壊して、外からお守りします。」
マルティンは自信を持って答えてくれた。
「では、お願いね。」
私はそう言ってから、兄に魔法通信を使い、連絡を入れながら、魔法制御ブレスレットを外す。
男達は酒盛りに夢中なので、多少の小声は大丈夫だろう。
「お兄様?」
「ああ、今建物の外で待機している。いつでも踏み込めるぞ。」
「今、賊は酒盛りを始めたばかりよ。酔わせた方がいいから、少し待って。」
「すぐに踏み込むらしい。準備しておけよ。」
そう言って、切れた。
私が入り口に顔を向けると、一人の男が厳つい形相で私を睨んでいた。
「お前、今、何をしていた!」
話していた事がバレたみたいだ。
仕方がないと、防御魔法を発動させようとした時に、倉庫の扉が開く音がする。
男が扉に気を取られる。
その間に、マルティンはさっさと魔法で檻を壊してくれた。私は皆をそのまま防御魔法で守る。
数人の男が慌てて、私達の方へ走って来たが、マルティンが鮮やかに倒してくれた。
強かったんだ。見かけで判断してごめんなさい。
「みんな、助けが来たから、もう大丈夫。男達は手出し出来ないように、守っているから、あなたたちは大人しくじっとしていて!」
彼女達もわかってくれたようだ。
入って来た魔法師団に、男達は次々と捕われていく。
捕まえられた男達が集められ、兄とマルティンが確認している。
私達のところには、クロード殿下と魔法師団の団員が数人やって来た。
「アリアナ、もう大丈夫だ。」
私は防御魔法を解く。
「それぞれの身元を確認しろ。事情を聞いたら、送り届けるように。帰る場所が無い子は、いつもの孤児院へ。 」
クロード殿下は団員に指示を出した。
「この二人は孤児院の子なの。ちゃんと送り届けてくださいな。」
二人の事を頼んでいると、クロード殿下から腕を引っ張られた。
「きゃっ!」
私はバランスを崩して、クロード殿下の胸に倒れ込んだ。
「アリアナ、無事か?」
「ええ。私はなんともありませんから、離してくださいませ。」
「ダメだ。男達が手を触っただろう?マルティンとも手を繋いだだろう?」
心配性の兄と一緒だ。
「仕事ですから。いちいちそれくらいで、騒がないでくださいませ。わたくしも事後処理を手伝って参ります。」
そう言って、殿下の胸に力を入れて、体を離そうとするが、逆に両腕を取られてしまう。
「アリアナは私に報告だ。魔法師団に帰るぞ。エリック!先にアリアナと本部に戻る。後を頼む。」
そう言って、殿下は私を抱きしめたまま、転移魔法で飛んだ。
お読み頂き、ありがとうございました。
このところ仕事が入って来て、思うように執筆が進みません。更新が不定期になってしまいますが、お付き合い頂けますと幸いです。
次回は明日か明後日には投稿できるよう、頑張ります。




