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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】アリアナとイスマエルとパーティー(アリアナ視点)

ブックマークありがとうございます。

風邪のせいで、すっかり投稿が遅くなりました。すみません。随分良くなってきましたが、まだ頭がスッキリしません。


今回はアリアナ視点です。




 今日はインターナショナルパーティーの日だ。


 主催者の私は忙しいが、大事な計画があるので、気が抜けない。

 イスマエル殿下を恋人として、皆に印象付けなければならない。

 彼が注目されれば、彼の国の為にもなる。私の隣に立てば、注目される事は間違いない。


 私は朝の準備を整えながら、彼との出会いを思い出す。

 本当は攻略キャラの一人であるイスマエル殿下には関わらないつもりだった。


 だが、彼の国の実状と彼の働き振りを見て、放って置くわけにはいかなかった。


 元々彼の国の宰相から頼まれていたのである。

 彼の国の宰相とは、幼い頃からの知り合いであり、可愛がってくれた叔父様だった。


[イスマエル殿下はとても賢く、武術にも優れ、数々の功績を残されています。だが、それに驕らず民の事を何よりも大事にされています。今のサイード国にならない方ですが、このまま我が国にいらっしゃれば、殿下を疎ましく思う勢力から、命を狙われる事になるでしょう。殿下自身も何もできないと悩まれていらっしゃいます。どうか殿下をお願いいたします。]


 という、丁寧な手紙が届いた。


 イスマエル殿下はどんな方かと思うと、彼は授業以外は図書館に入り浸りだった。

 寝食も忘れているという。


 いい加減にして欲しいと思う。図書館で勉強する事も確かに大事だけど、もっと彼にはやるべき事がある。だけど彼の思いは理解できる。

 彼は本当に国を憂いていた。彼ほど国の民のことを考えている王子には会った事がない。


 つい、母性本能というか…前世のアラサーの私が出てきてしまい、手を差し伸べたくなった。

 彼にしたら、余計なお節介なのだろうけれど。


 普通に忠告しても耳を傾ける訳は無いと思い、私はある計画を立てた。


 そう、恋人計画だ。

 契約関係なら恋人でも問題ない。私はクリストファー殿下の婚約者だが、彼は私の事などなんとも思っていないから。


 イスマエル殿下には特定の彼女もいないようだし、対価を提示すれば、きっと乗ってくるはず。


 そして、その計画を実行した。

 彼に契約を持ちかけ、図書館から引っ張り出す事に成功した。

 彼はすごく真面目で、恋人ごっこに付き合わせるのは、罪悪感を感じてしまう。


 早速、街中を歩き、彼に現実を知ってもらう。


 彼は誠実で、私が好き勝手に歩き回っても文句ひとつ言わなかった。つい、私も調子に乗って、孤児院に連れて行ってしまったが、彼は嫌がらなかった。


 まあ、恋人ごっこはすごく楽しかった。若くて体格が良く、凛々しい男性とデートなんて、前世では考えられない。いや、今の私は若いはず…


 兄を慌てさせる事ができ、恋人ごっこの成果もまずまずだったのよね。途中、クロード殿下にバレてしまった事は計算外だったけれど。


 それから、彼の国の大使館に入り込み、交易の促進を計る。色々と案を出して、担当者と打ち合わせをする。この仕事は楽しい。


 大使館に出入りはしているが、スパイではない。断じて。だって、彼の国に利益になるように働くのだから。


 もちろん私の利益にもなるように。私の出た利益の半分をイスマエル殿下に還元できるような仕組みを作る。国に利益を取られては、彼が思うように使う事ができない。

 彼自身の資産となれば、彼が思うように使える。

 彼の国の取り分は変わらないので、文句は言われないだろう。


 彼にその話をする。


「それでは貴方の取り分が4分の1になってしまうではないですか。」


「両国の取り分が半々。貴方の国に入る分は国庫に入るのでしょう?わたくしの分は多少取り分が減っても十分な利益を得る事ができますわ。」


「だが…」


「では、このお金は殿下のお国の民の為に、新しい事業を起こす資金にしてください。施しばかりでは、民は貰う事に慣れ、労働意欲を失います。働く機会を作るための資金にされてくださいな。」


「全く…アリアには驚かされてばかりだ。どうだ?私の右腕として働かないか?」


 まさかの勧誘ですか。

 確かに断罪イベント後の行き先としては魅力だけど、後宮行きにならないとも限らないから、お断りだ。


「わたくしは今の仕事に満足しておりますわ。」


「では、私の妃になってはくれないか?」

 直球で後宮行きのオファーですか。


「まぁ、ご冗談を。わたくしには婚約者がおりますわ。殿下、お気遣いは無用です。わたくしは自分の為に働いていますの。対価は十分頂いていますわ。」

 そう、卒業時に婚約破棄されるはずだけどね。一応婚約者という人がいるの。今は。


「そうか…」


 横から、大使の生暖かい視線を感じたが、無視した。

 彼が誠実で、私に何か恩返ししたいと思っている事は十分伝わっている。契約の時に、愛のない結婚は嫌だと言った事を、気にしてくれたのだろう。


 彼自身の人柄も性格も能力も素晴らしい人だと思う。彼が攻略キャラでなければ、喜んで右腕として働いただろう。う〜ん、残念。


 イスマエル殿下を引っ張り出してから、彼は随分明るくなり、図書館にこもる事も少なくなった。


 私は取引を進めるため、彼の国の大使館に入り浸る。


 ついでに、ちょっとした悪戯を思い付く。

 彼をパーティーに引っ張り出そうと計画した。

 社交が苦手な彼にとっては、嫌がるかも…と思いながらも、大使夫妻を味方に付けて計画を進める。


 大使の奥様よりダンスを習う。

 難しいダンスだったが、楽しかった。

 彼女からは料理も習っていたし、今ではすっかり仲良しだ。そう、料理の腕も上がり、彼の国の料理は随分作れるようになった。この分だと、断罪イベント後にレストランを開業してもいいかもしれないわ。と一人ほくそ笑む。


「アリアナ様、パーティーでは、我が国の衣装をお召しになりませんか?」


「わたくし、持っておりませんわ。」

 それはとても魅力的ですが。


「ふふふ…ご用意しております。イスマエル殿下にも用意しましたの。」


「まあ、よろしいのですか?」


「アリアナ様に用意したのです。受け取っていただけますか。」


「ありがとうございます。嬉しいですわ。」


 やっぱり新しいドレスはウキウキする。

 落ち着いた深い緑色のドレスに金色の刺繍が映える素晴らしいドレスだった。

 今度、この生地を使い、ドレスをデザインしてみようかしら。これも立派に交易の対象になりそうだわ。


 そうやって忙しく毎日を過ごしていた。


 □□□□□


 そして、今日だ。

 今から、パーティーの準備だ。


 各国の大使も来賓として招待している。

 サイード国の大使夫妻も一足早く来て頂き、私達の民族衣装を着付けて貰う。


 着慣れない衣装は少し恥ずかしい。


『わたくし、変ではありませんか?』


『アリアナ様、お美しいですわ。とてもよくお似合いです。きっとイスマエル殿下がご覧になれば、驚かれますわ。』


『奥様も素敵ですわ。サイード国のドレスは動きやすいのに、優雅で素晴らしいですわ。』


 イスマエル殿下も民族衣装で、とても凛々しく、素敵だった。焦りを滲ませていた瞳は、すっかり明るくなり、未来に向けての希望で満ちていた。

 無理矢理参加された負い目もあったけれど、よかったわ。


 会場へ向かう前に、私は微笑みながら、殿下に声をかける。


『参りましょう。殿下。今日は最初のダンスが、殿下のお国のダンスです。お国をアピールするのに絶好の機会ですわ。』


『ああ、よろしく頼む。』

 

 殿下も微笑み返してくれた。

 ほんの少し、私に罪悪感が湧いたのは内緒。

 色々と振り回してごめんなさいと心の中で謝っておこう。


 そして、パーティー会場に足を踏み入れた。


 会場へと移動し、私達が入場すると、感嘆の声が上がる。

 民族衣装は効果抜群だった。

 イスマエル殿下も堂々としてカッコいい。


 きっと今日を境に、女子が放って置かないだろう。

 恋人ごっこももうすぐ終わりかもしれない。


 周囲からは、私達の関係を驚く声も聞こえる。

 恋人ごっこは大成功だ。


 二人で彼の国のダンスを踊る。

 難しいが、楽しい。

 なんだか本当の恋人同士のようだ。


 だが、彼に言っておかないといけない。


『殿下が本当に気になる方がいらっしゃるのであれば、わたくしとの恋人の契約は白紙に戻しますわ。もちろん、殿下のお国への援助等はそのままで。』


 そう、私達は契約上の恋人だ。

 長く続けるつもりはない。


 楽しいダンスの時間が終わる。

 イスマエル殿下と私はホール周囲で見守ってくれていた大使夫妻の元へと、挨拶に向かう。


 挨拶をしていたら、私達二人はそれぞれ人垣が出来てしまい、逸れてしまう。


 愛想よく来賓方に挨拶をしていたら、鬼のような形相のクロード殿下が視界に入った。

 そう言えば、恋人ごっこを止めるよう言われていたんだっけ。

 今日のパーティーに着て行くようにとドレスも送られていたのを、すっかり忘れていた。

 このまま捕まると、拉致されてしまう。

 逃げるに限る。

 そう思って、来賓方への挨拶が終わったら、中庭にこっそりと出た。


 空間魔法から黒い魔法のマントを出す。

 姿を隠してくれるマントだ。

 それを羽織り、なるべく会場から死角になる場所に歩いて行くが、レオンハルト殿下が会場を出てきたのが見えた。慌てて奥に走ると、ベンチに一人の男子生徒が座っていた。

 その後ろに滑り込む。彼が気付いたみたいなので、一瞬姿を見せる。


「お願い、匿って!」

 そう叫んで、彼の後ろで身を潜めた。


お読みいただき、ありがとうございました。

ブックマーク、評価、感想お待ちしております。

次回はアリアナ編の続き、ルーカス編の続きに繋がるように書けるといいなと思っています。

明日か明後日かには投稿できるよう、頑張ります。はい。番外編が長くなり、反省しています。

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