【番外編】ルーカスが留学した理由(ルーカス視点)
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番外編:ルーカス視点です。
最初は名前だけのつもりで出した為、国名も決めていなかった3王子の一人です。無計画ですみませんm(_ _)m。お付き合い頂ければ幸いです。
「姉上、それはどうされたのですか!」
俺は姉が持っていた物を見て、叫んだ。
「ルーカス、廊下でお行儀が悪いわよ。貴方もカタルニア国の王子として、そろそろ公務にも出て貰わないといけないのに。お母様もお兄様も心配されていたわ。」
「経済会議には毎回出席しております。それより、そのお手の中の物は?」
「これは美顔器よ。最近隣国で販売された物をようやく手に入れたのよ。」
「美顔器ですか?」
「ええ、なかなか気持ちがいいから、お母様にも使って頂こうかと思って。」
「ちょっと見せていただいても?」
「いいけど、ルーカス、これ以上綺麗になりたいの?」
「違います!」
俺はそれを手に取る。
見覚えのある形だ。
「姉上、これは何処の国の物ですか?」
「フランベール国よ。あの国は色々魔法具があって、いいわよね。」
「これはどうやって手に入れたのですか?」
「フランベール国の大使から、いただいたのよ。」
「そうですか。ありがとうございました。」
俺は姉と別れた後、自室で先程の美顔器に思い巡らす。
俺、カタルニア国の第二王子であるルーカス-フォン-カタルニアには、前世の記憶があった。
先程の美顔器は、動力こそ魔法だが、俺が知っている物に酷似していた。
俺は前世で家電メーカーの営業をしていた。
担当は美容器具や白物家電など、生活に密着した物だった。
その中で取り扱っていた美顔器が、姉の美顔器と形状が同じだった。
信じられない。偶然の一致か?
いや、それはないだろう。あれだけ形が似ているのだ。
俺と同じ前世の記憶持ちがいるかもしれない。そう思った最初の日だった。
前世の記憶の事は誰にも話していない。
あれは8年前、俺は8歳だったか。
姉に悪戯をして、逃げる途中で階段を踏み外し、落ちてしまった。頭を強く打ったらしく、3日意識がなかったそうだ。
目が覚めた時には、どちらが現実か混乱していた。
両親も医師も、寝ている間に夢でも見たのだろうと、混乱する俺に優しく接してくれた。
俺も徐々に自分の置かれた立場を理解した。
俺の前世は、この世界と全く違う世界で、魔法もない世界だった。
魔法は無いが、科学というものが発展していて、人々の生活に深く入り込んでいた。
俺はそんな世界に生きていた。
日本と言う島国に暮らし、仕事も営業として、それなりに成績も出し、人生これからだった。
それなのに、不慮の事故で命を落としてしまったのだ。
前世の記憶を取り戻してから、俺は後悔しないように生きようと思った。
勉強も武術も、全力で取り組んだ。
勉強は前世の記憶が役に立ったし、武術は前世での剣道の記憶が役に立った。
ただこの世界にある魔法だけは力が弱く、どんなに練習しても、たいした魔法は使えなかった。
しかし、魔法はどうでもいいと思っている。魔法が使えないならば、それに代わる物や力をつければいい。
それより国を発展させる為には、経済だと思う。
西の国と呼ばれる我が国は、地理的に大陸の端にあり、色々と不利な事が多い。
俺は、前世の記憶を駆使して、不利な点を改善する様に、政策を色々と考え、提案して来た。
国の経済会議には、15歳の頃から出席している。
王位は兄が継ぐ。
俺はせっかく持っている前世の記憶を、最大限に活かして、兄を補佐し、この国を発展させる事ができれば良いと思っている。
このまま、国の経済部門に所属し、政策を立案する。
先程までは、そう思っていた。
しかし、あの美顔器。
俺と同じ転生者がいるのであれば、会ってみたいと思う。俺の孤独感を埋める事が出来るかもしれない。
だが、転生者は、記憶をどのように使っているのか?と考える。
家電に似た物を開発するだけであれば、問題ない。
しかし軍事方面の知識として使う可能性も、否定できない。そうなれば、周辺国との火種になる。
フランベール国か。
彼の国は、経済的に成功している国だった。
魔法力を上手に使い、国民の生活水準を上げていった。また、高い魔法力は防衛面でも役に立っている。高い魔法力で周辺国を牽制していた。
そのような国だからこそ、魔法の衰退を危惧して、魔法アカデミーを作った。
アカデミーは周辺国からの留学生も受け入れているはず。
魔法には興味ないが、国をじっくりと調べるには留学が一番だ。
そう考えた俺は、急いで留学の為に動く。
父王や母と兄、経済部門のトップなどを説得する。
了解を取り付けると、フランベール国に留学の打診をした。
幸い、最終学年ならと返事が来たので、新学期から留学することにする。
留学が決まった数日後、俺の執務室に姉が訪ねて来た。
「ルーカス、留学するって本当?」
「ええ。フランベール国の経済力をこの目で確かめたいので。」
目的はこれだけではないが。
「でも魔法アカデミーじゃない?ルーカスは魔法はほとんど使えないけれど、大丈夫なの?」
放っておいて欲しい。俺も自覚はしている。
「各国の王族は、特別枠で入れてくれるそうです。」
「じゃあ、フランベール国の美容器具、手に入れて送って頂戴。楽しみにしているから。」
今日の目的はそれか。
「姉上はすでに一つお持ちではないですか?」
「あれ以外もあるらしいのよ。試してみたいの。」
いくつあっても、そんなに変わらないと思うが。
「姉上、私は遊びに行くのではなく、留学に行くのですが。」
「いいじゃない!魔法が出来ないルーカスが、魔法アカデミーに行くなんて、誰も留学とは思わないわ。」
悪かったな。
「私は魔法が出来ないのではなく、出来る魔法が少ないだけです。」
「どっちでも一緒でしょう?」
「いえ、随分と違いますが。」
「ルーカスの魔法はどうでもいいのだけど。」
なら、言うなよ。
「どうでもいいのですか?」
「だって留学したからと言って魔法が上手になるとは思えないし。」
「それはそうかもしれません。」
「ねえ、ルーカスも綺麗なお姉さまが好きでしょう?」
他人ならね。
「実の姉でない綺麗なお姉さんは好きですが、実の姉は綺麗でなくとも、敬愛する姉上である事には変わりません。」
「全く減らず口は子供の頃より、変わらないのだから。」
「お褒めいただき、光栄です。姉上。」
「全く、世間からは麗しの王子なんて言われている貴方の本性知ったらご令嬢方はどう思うかしら?」
「ご令嬢方の情報は馬鹿にできませんので、私の本性は隠していますが、それが何か?」
「ルーカス、何人のご令嬢を誑かしているの?ちゃんと留学前に清算しなさいよ。」
「言われずとも、手配は整っております。私が悪いのではなく、彼女達が寄って来ただけです。穏便に諦めてもらいますよ。」
「全く。お母様が聞いたら、卒倒されるわ。」
「母上には御内密に。」
「じゃあ、美容器具よろしく!」
そう言って、嵐の様な姉は去っていった。
それから、留学の準備とフランベール国の情報収集などを行って、忙しい毎日を過ごしていたら、瞬く間に留学する日となった。
今日から、フランベール国に住む。
アカデミーの門を潜る。
転生者を探し出せるか不安だったが、それ以上に新しい生活に胸がワクワクした。
まずは魔法具の店で、誰が開発したか探れば、転生者に会える確率が高いだろう。
クラスは魔法力の一番低いクラスだったが、何も問題はない。言葉は出来るし、普通の武術や勉強は楽勝だった。
俺のクラスは女子が5人いた。学年の女子のほとんどだ。彼女達と交流を図れば、自ずとこの国の事が見えてくるはずだ。
そう考えた俺は、片っ端から女子生徒に声を掛けていた。
ただ、カーラだけは、俺の本能が受け付けなかった。彼女から寄って来たが、明らかに媚びた視線、言葉の端々に色々とねだっている事がわかる。
この女は用心しろ、と俺の頭が警鐘を鳴らしていた。幸い彼女はクリストファーの女だったので、近寄らない事が正解だった。
それ以外の女子生徒は、簡単であった。
他国を含めた王族は、魔法力が高く、A組に入る事が多いらしい。少なくともB組みまでには普通入る。C組は魔法力が低いクラスだった。
なので、王子の身分は大いに役立ってくれた。
皆親切に色々と教えてくれる。
「姉から、美顔器なる物を買って送る様言われているのだけど、君達、どこで手に入るか知っているかい?」
そう尋ねるだけで、何人もの女子が教えてくれる。
彼女達の話では、魔法具を扱う店で、品揃えが良く、新製品をよく発売している店があると言う。
本店は王都の中心部だが、アカデミーの近くにも支店があるらしい。
まずは、その支店から当たってみるか。
そう考え、休みの日に出かけてみた。
その店はアカデミーがある地区のちょっとした商店が集まる一画にある。
店に入ると、女性が数名、買い物を楽しんでいた。
品揃えを見ると、美容関係や調理器具などが多い。
魔法通信機なども置いてある。
いずれも我が国には売っていない。
興味深く、それぞれの商品に見入ってしまった。
「何かお探しでいらっしゃいますか?」
30歳ぐらいの上品な男性店員が話しかけて来た。
「姉が美顔器などの美容器具が欲しいと言っていたのだが、どれがいいのか、よくわからないのだが。」
「美顔器であれば、これが新製品です。」
と、姉が手にしていた物を取り出す。
「これは姉は持っているのだが。」
「では、こちらはいかがでしょう。魔法具ではありませんが、頬に当てて転がし、血行を良くするものです。お値段もお手頃になっています。」
そう彼が取り出した物は、前世で見た事がある美容器具であった。一時期女性の間で流行っていた。
俺は確信した。
転生者がいると。
「いかがでございますか?」
声をかけられて、我に返る。
そこへ、店員を呼ぶ声がした。
フッと声の方へ視線を向けると、大輪の薔薇の様な若い女性が立っていた。
「お話中、申し訳ありませんわ。少し彼をお借りしてもよろしいかしら?」
そう彼女は言った。
「ええ、私はまだ決まっていませんので、どうぞごゆっくり。」
俺は辛うじて、そう答えたが、突然現れた美しい彼女に見惚れてしまった。
彼女は店員と別の部屋へと消えていった。
上品な立ち振る舞いを見ると、いいところのご令嬢なのだろう。顧客か。
転生者と同時に、彼女の事も気になってしまう。
顧客であれば、また会えるだろうか。
いや、俺は転生者を探しているのだと邪念を払い、前世で流行っていた美顔器具を、とりあえず買い、魔法具店を後にした。
転生者の手掛かりになったかどうか、わからないが、まずあの魔法具店から調べてみよう。
これからの道筋に一筋の光が射した。そんな日になったのだった。
ブックマーク、評価、感想、頂ければ、励みになります。一つブックマークが増えるだけで、俄然やる気が。
次回もルーカス編を予定しています。
今週プライベートが忙しく、特に明日一日用事が入ってしまいました。明日の投稿が出来るかどうか、お約束はできませんが、今晩頑張ってみます。
ストックがなくなってしまったので、毎日綱渡りですが、今後ともお付き合い頂けますと、嬉しいです。




