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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】兄とアリアナとクロード3(エリック視点)

ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。

なかなか書き進めない時に眺めて、気合いを入れ直しています。はい。昨日からスランプで遅くなりました。

エリック編、前回の場面の続きです。少し硬い話になってしまいましたが、お付き合いいただけますと嬉しいです。

 アリアナは交易の話を簡単に話した。


 まず、我が国が食料を援助する。サイード国は国の名産品を、我が国に優先的に割り当て販売する。


 特に薬の原料となる薬草と美容液は、これから需要が高まる事が考えられるので、輸入は早々に始める事を説明する。


「何故、我が国が先に食料援助をしなければならない?」

 クロードが問いただす。


「彼の国の民が飢えているからですわ。」


「それはサイード国が対処すべき事だろう?」


「ええ、殿下の仰る事はご最もです。」


 二人のやり取りを聴きながら、今までの情報を整理する。

 アリアナが考えている事はなんだ?

 イスマエルから何か情報を掴んだか?


「あの国で何か起きるのか?」

 俺はそう口にしていた。


 アリアナの情報収集力と分析力は抜きん出ている。

 妹でなければ、国の諜報機関に推薦していただろう。

 そんな妹が援助を口に出したからには、何かあるに違いない。


「サイード国の皇帝陛下は戦の事しか、頭にないようです。度重なる戦と干ばつの被害で、民は苦しんでいます。」


「暴動かクーデターか内戦か?」

 クロードも理解したようだ。


「まだ、具体的な動きがあるわけではありません。が、飢えた民が増えれば、我が国にも火の粉が降りかかります。」


 ああ、アリアナが動く理由がわかった。

 妹は政治的な理由を口にするが、本音は民を助けたいのだと。口は悪くとも、内面は優しさに溢れている妹だ。他国とはいえ、放って置けないのだろう。

「難民か?」と俺は確認する。


「ええ、このままでは、多量の難民が発生し、我が国をはじめとする周辺国に流れてくるでしょう。」


「それで支援か?」

 親父も口を挟む。


「ええ、我が国が一早く支援する事で、難民の発生は抑えられるでしょう。酷くなって対処するより、その前に対処した方が費用は少なく済みます。」


「だから援助を出せと?」

 親父が確認する。


「恩を売っておく事も大事でしょう。イスマエル殿下は信用に足る方だと存じます。必ず我が国の為となりましょう。それに支援の見返りも要求しますから、援助というより、取引ですわ。」


 どこかの文官より、よほど具体的で計画的である。

 全くどこでそんな知識を身につけたのか。


 イスマエルとはどこまで話しているのか。

 いや、これは相当具体的だ。二人で詰めていったに違いない。大使館へ行ったのは、この話をする為かと腑に落ちた。


 全く人騒がせな。

 アリアナが婚約を嫌がって、亡命先を探しているのかと心配した事は、杞憂だったようだ。

 いつも斜め上の考えで動くアリアナに、俺も相当毒されていたらしい。


 クロードは険しい顔は変わらないまま、アリアナの話を聞いている。

 クロードも昨日のイスマエルを見ている。イスマエルのアリアナに対する想いに気付いているだろう。


 恋敵に塩を送る行為だ。一体どう判断するのか?


「とりあえず、アリアナの考えている事はわかった。この件は暫く預からせてくれ。」

 クロードは難しい顔をしたままだった。


「ええ、構いませんわ。国の支援は無くとも、流通の仕組みができれば、ある程度のことができます。当座の支援はわたくしの私財を使い、始める段取りを進めています。今日はお父様に我が家が保有している商会を使う許可を、貰いに来ただけですから。」


 アリアナの事だから、誰にも頼らずに出来る方法で、動き出している事は想像に難くない。

 当然国の支援は期待せず、自分で全て行うつもりだったのだろう。我が妹ながら、やる事が大胆だ。


「私財?」

 クロードが問いただす。


 アリアナは、色々な事業に手を出し、かなりの個人資産を持っている。妹が始めた事業で公爵家が更に潤っている為、本人の資産に関しては、親父も俺も口出しできない。


「ええ、わたくしの個人資産ですわ。」

 アリアナは微笑みを浮かべながら答える。


「アリアナに支援に回すほど私財があるのか?」

 クロードが目を見開く。


 普通の令嬢は資産を持たない。親の資産で生活し、嫁入り準備を整えてもらう。

 そういう意味では、アリアナの資産は規格外であった。


「アリアナは色々と新しい事を思い付くのさ。それを我が家の力で実行させて、利益を上げている。利益の一部をアリアナの資産にしているんだ。」

 俺も補足説明しておく。


「アリアナはかなりの利益を上げています。勿論、その利益の一部は、税として国庫に納めていますので、咎められるものではありません。国王陛下もご存知でございます。」

 親父も援護する。


「援助をする程度は持っておりますわ。」


「私はその話は知らない。」

 クロードは自分の把握してない事があり、怒りのオーラを発し始めている。


「お話する機会がございませんでしたから。」

 アリアナは冷静だ。やっぱり自分の事以外で対峙する時は強い。


「それは許さない。」

 クロードがキッパリと言う。


「「は?」」

 俺とアリアナの声が被る。


「アリアナの私財を使う事は許さない。援助の件は政務部と財務部、外交部と話して決めるから、それまでアリアナは何もするな。」


 クロードはアリアナ個人がサイード国に肩入れするのが面白くないのだろう。


「何故わたくしの私財だといけないのですか?」

 アリアナも負けじと聞く。


「国同士の話だからだ。」


 いや、それは嫉妬だろう。


「今のところ、わたくし個人とイスマエル殿下との個人的な話ですわ。」


 ああ、イスマエルの名を出したら、益々クロードが引けなくなる。


「では、わたくしは援助ではなく、サイード国に投資致しますわ。家でも買って移住しようかしら?」


 アリアナは突然突拍子もない事を言い出した。


「お前、それぐらいでやめとけ!」

 俺は慌てて、アリアナを止める。


 これ以上クロードを怒らせると、アリアナを監禁しかねない。


「わたくしの私財です。どう使おうと勝手でしょう?援助じゃありませんし。家を買って移住って、楽し…」


 アリアナがいい終わらない内に、クロードはアリアナを拘束してしまった。

 横にいたアリアナを自分の膝の上に抱きかかえ、腕を回して動きを封じていた。


「ああ、だから言ったろ!これ以上怒らせるなと。」


 クロードは完全に怒っている。

 このままでは、すまないだろう。


「殿下、離してください!」


「この強情なお嬢様はどうしてくれようか?」


「だから離してくださいって!」


「大人しくしているか?」


 こいつら、以前も似たような事をしていたよなと、つい、生暖かい目になってしまう。

 だが、今日のアリアナは手強い。これ以上拗らせたくはなかった。


「クロード、無理だって。こいつに大人しさを求めるのは。だいたい理不尽な事を言ったのはクロードだ。これ以上やると、アリアナは本格的に逃げるぞ。その辺でやめとけ。」

 と助け舟をだす。


 クロードは渋々ながら、アリアナを隣に降ろした。

 そして、アリアナの手を両手で包む。


「アリアナ、逃げないか?移住もダメだ。」


 とても普段冷静沈着な氷の王子とは、思えない。


「殿下、わたくしの私財を使う事をお許し頂けますか?」


 やっぱり、今日のアリアナは強い。民の為と思っているのだろう。


「アリアナが逃げないなら仕方がない。認めよう。」


「ありがとうございます。殿下。」


 アリアナはクロードの手を解きながら礼を言った。

 これで、一安心か?


「だが、イスマエルと一緒にいる事は許さない。」


 クロード、蒸し返さないでくれ。


「それは出来ません。イスマエル殿下とはこれからも打ち合わせをしなければなりませんから。」


 アリアナもこれ以上挑発するのは止めろ、と思うが、今日はアリアナの肩を持った方が得策だろう。


「クロード、アリアナはイスマエル殿下の事はなんとも思っていないんだ。仕事だと考えて、譲歩してやれ。突然いなくなるのは困るだろう?」

 これ以上、クロードの嫉妬が暴走しないよう、俺は止めに入る。


「だが…」

「これ以上、ウダウダ言っていると、アリアナは他所にいくぞ。無駄に行動力あるからな。」


 痛いところを突いてやると、クロードは諦めたようだ。


「仕方がない。だが週に一度は報告する様に。直接アリアナが来るんだぞ。」


「アリアナとお前は毎週一度は会っているだろう?」


「わかりました。報告だけですからね。」

「ああ」


 会話が一段落ついたところで、親父がクロードに声をかける。

 親父、いるならクロードの暴走を止めて欲しかった。アリアナとは別の意味で考えを読めない狸親父だ。一体何を考えていたのか。

 親父は意味深な笑みを浮かべながら、クロードを誘った。


「殿下、そろそろ会議のお時間です。参りましょう。」


「ああ、邪魔して悪かった。」


「お父様、先程の商会の件は?」

 アリアナは慌てて尋ねる。

 

「ああ、好きにしなさい。」


 親父はそう言うだろうと分かってはいたが。

 親父とクロードが出ていったので、アリアナと二人となる。


「アリアナ、今から暇か?食事にでも行こう。」


「まぁ、今日はお兄様とデート?楽しみだわ。」


「全く、昨日は忙しいって言っていた奴は誰だ?」


「あら、なんの事かしら?」


「街に出るか?王宮(ここ)だとゆっくり話せないからな。」


 そう言って、俺はアリアナと街へと向かう。

 妹には色々と聞いておきたい事がある。

 だが、それ以上に久々の二人きりの時間を楽しみにしていた。


 やっぱりアリアナは俺にとって天使だ。

 外国などには行かせない。

 誰に任せると安心できるのか…まだまだ答えが出そうになかった。






お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ、ブックマーク、評価、感想頂けますと、気力の補充になります。誤字、脱字報告も歓迎です。

次回…エリック編か新しい登場人物にするか、と悩んでいますが、なるべく明日には投稿できるように、頑張りたいと思いますので、お付き合いいただけますと幸いです。

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