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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】兄とアリアナとクロード2(エリック視点)

ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。

今日もなかなかまとまらず、この時間になってしまいました。


【番外編】エリック編の続きです。イスマエル編のデートの話との絡みが少しあります。

 親父のところへ、昨日の報告書を持って訪ねる。


「親父、アリアナを呼び出してくれ。」


「何かあったのか?」


「ああ、クロードがアリアナに会いたいだと。昨日アリアナがサイード国の皇太子と一緒にいたところに出くわしたもんだから。」


「また、何かやらかしたか?」


 親父のその言葉に、俺は例の書類を渡す。

 親父はその報告書を目で追う。


「クロードが煩いんだ。あいつはアリアナの事になると人が変わる。」


「わかった。だが、呼び出さずとも、もう暫くすると来るぞ。」


「はあ?」


 昨日は、今日は忙しいから無理だと言っていなかったか?


「何か話があるとか言っていたが?」


 そんなやり取りをしていたら、ノックの音がして、奥の部屋から、アリアナが現れた。


「ご機嫌よう。お父様、お兄様。ところで、お兄様がこちらにいらっしゃるのは何故?」


「お前なぁ、言われなくともわかるだろう。昨日の件、きちんと説明しろ。」


「何の事かしら?」


 アリアナはシラを切るらしい。


「アリアナ、昨日はイスマエル殿下と一緒だったのかい?」

 親父が援護してくれる。


「ええ。お父様。それが何か問題でも?」


 アリアナは完璧令嬢の仮面を張り付けている。 

 こんな時のアリアナは絶対に口を割らない。


「お前、イスマエル殿下と一体何をしていたんだ?返事次第では、俺にも考えがあるからな。」

 と、揺さぶってみる。


「なんででもいいじゃない。どうせどこに行ったか、何をしていたか、お兄様に報告がいっているのでしょう?」

 アリアナはスネたように言った後、目を細めて、意地が悪い笑みを浮かべる。


「ちゃんと()()()()()と書いてあった?」


 俺の頭が沸騰した。


「お前なあ!」


「お兄様が監視なんかつけるからいけないのよ。その監視はちゃんと恋人同士みたいだと報告してくれた?」


 アリアナは挑戦的な眼差しで、口角を上げて聞いてくる。


「お前、わざとか。」

 アリアナならやりかねない。俺はアリアナの取った行動がワザとだと確信した。


「さあ?」


 アリアナはこれ以上答える気はない様だ。

 ただ、手を繋いで歩いたのは、俺がつけた護衛に対しての抗議だったらしい。


 しかし、考える事が斜め上すぎる。

 護衛もわからない様に付けていたのに、しっかり気付いて、しかも監視だからと、わざわざ周りが驚く様な事を見せつける。


「お前、クロードに自分で説明しろよ。俺は知らないからな。」


 頭が痛い。

 親父は何も言わずにやり取りを見ていた。きっと呆れて口を挟まないのだろう。


「なんでクロード殿下に、説明しないといけないのよ。」


「クロードが心配している。」


「ご心配頂かなくとも、イスマエル殿下はいい方よ。恋人になってくださるって。」


「「なんだって!」」


 声が重なる。


「それはどういう事か説明してもらおうか?」

 険しい顔をして、入ってきたクロードだった。


「殿下、お呼び頂けましたら、こちらから伺いましたものを。」

 親父が慇懃無礼に挨拶をする。


「構わない。呼び出すと逃げる人がいるからな。」

 クロードはアリアナを見ながら、答える。


 クロードは2人掛けのソファーに座っていたアリアナの隣にサッと座る。

 上座を開けて、クロードに勧めようとしていた親父は苦笑していた。


 しかし、クロードはアリアナをよく発見できるものだと、関心する。昨日も近くにアリアナがいると言って動いたし、今日はまだ連絡していないのに、やって来た。


「アリアナ、昨日の説明の前に、イスマエルが恋人とは、どういう意味か?」


 クロードはアリアナの両肩に手を置き、アリアナを自分に向かせる。顔が王子スマイルでこれを見せる時は、相当機嫌が悪い。


「そのままの意味ですわ。」


 アリアナは珍しく怯えていない。

 いつもなら、逃げ出す場面であるはずだが、平然と肩にあったクロードの手を外す。


 アリアナは、正論を言う時は強い。特に自分以外の人物が関わる事は、頑として自分の言い分を曲げない。


 今回は全く悪いと思っていないのだろう。

 何か考えがあっての事だなと、当たりをつける。


「お前はクリストファー殿下の婚約者だろう?」

 と俺は聞く。


 いつも婚約の事実を盾に男共の誘いを上手に断っている。恋人など言い出した事は初めてだ。

 この婚約には納得している訳ではないが、男除けには役に立っていた。


「クリストファー殿下は、わたくしでないご令嬢を常に侍らせていらっしゃいます。わたくしにも恋人ぐらいいても構わないでしょう?」


 今まで、恋人なんて言った事はなかったのに、一体何を考えている?クロードはキレる寸前だ。


「お前の立場とクリストファー殿下の立場は違うだろう?」


「それが何か問題でも?クリストファー殿下にとって、わたくしにもパートナーがいる方が、婚約解消を働きかけやすいでしょう?」


 目的はそれか?だが、それだけであれば、アカデミー内だけで構わないはず。

 クロードは婚約解消の言葉を聞いて複雑な表情をしている。


「お前の目的はそれだけではないだろう?」

 俺は更に追求してみる。


「アカデミーでは、パートナーがいないと困る事が多いのです。今まではお兄様かクロード殿下にお願いしておりましたが、ご卒業された今、誰にお願いしようと、わたくしの自由ですわ。」


「何でイスマエル殿下なんだ?他にもいるだろう?」


 アカデミー内でのアリアナの行動は俺の息のかかった後輩に報告させている。

 大人しく無害そうな王族もいたはずだ。


「あら、レオンハルト殿下にお願いした方が良かったかしら?」

 アリアナは首を傾げる。


「あいつは絶対ダメだ。近付くな!」

 クロードが声を荒げる。


「パートナーが必要なら私がなってやる。いつでも呼べ。」

 クロードはそう言って、アリアナの手を取る。


 アリアナはその手をそっと外す。

「クロード殿下にお願いするわけにはいきませんわ。在学中ならともかく、ご卒業されたのです。わざわざいらして頂けば、よからぬ噂を立てられます。」


 確かにそうだ。まだ王太子として、どちらが立つか決まっていない。貴族の間に徐々に派閥が形成されつつある。側妃腹のクロードは、第一王子とはいえ、不利な立場である。余計な腹は探られたくない。


「そんな噂、放っておけば良い。」


「そういう訳にはいきませんわ。クロード殿下のお為になりませんわ。」


「だからと言って、イスマエルはないだろう?」


「他国の王族からエスコートされても、国際交流の一環として、認められるからです。イスマエル殿下は今いらっしゃる他国の王族の中で、一番真面目で誠実な方ですから、わたくしからお願いしましたの。」


「お前からいい出したのか?」

 俺は驚く。異性に関しては、自分から積極的に動く事は今までなかったのに、今更何故?


「ええ。イスマエル殿下は真面目な方ですから、勉強以外にご興味が無くって。パートナーがいらっしゃらなくって、助かりましたわ。」


 アリアナは微笑む。


 クロードがブリザードを発動しそうだ。


「それで、お前の本当の目的はなんだ?」


「目的?恋人になって頂きたかっただけですわ。だって楽しかったですわ。一度、あんなデートしてみたかったので。」


「嘘を吐け!いい加減に本当の事を言え。」


 俺はアリアナを睨む。クロードはアリアナを今にも捕獲しそうだ。


「アリアナ、お前は何か考えがあっての事だろう?これ以上、殿下に余計なご心配をおかけするわけにはいかない。本当の事を話してごらん。きっと今日訪ねてきた事に関係するのだろう?」


 親父が援護してくれた。

 親父も今のやり取りで、アリアナが何か企んでいる事を悟ったのだろう。


 アリアナはクロードに目を一瞬向けた後、親父に向き合う。

「今日は、イスマエル殿下のお国との交易についてのご相談に伺いました。」


「はぁ?」

「交易?」

 俺とクロードが同時に声を発する。


「お前、その為にイスマエル殿下に近付いたのか?」


「まぁ、お兄様、それでは、まるでわたくしがハニートラップを使ったみたいじゃない。人聞きの悪い事、仰らないで。」


「で、交易とは?」

 クロードは問いただす。


「これ以上、この場で話す訳にはいきませんわ。ファーガソン公爵家の持つ商社に関してですもの。クロード殿下にご迷惑をお掛けするわけにはいきませんし。」


「構わない。国相手なら、私の仕事だ。」

 クロードが先を促す。


「ご協力いただけると?」


「内容によってだが、善処しよう。」

 クロードは不満ながら応じているようだ。


「お約束ですわよ。」


「ああ、だから恋人ごっこは止めろ。デートぐらい、私が連れていく。」


 クロードはイスマエルがアリアナとデートしていた事が気に入らないのだろう。いや、あれがデートだったか怪しいが。

 しかし、クロードとアリアナが連れ立って歩く事の方が問題だ。

 

「それはまだ止めることは出来ませんわ。イスマエル殿下は、レオンハルト殿下を追い払ってくださいますので。」


「はぁ!お前、恋人ごっこの本当の目的はそれか!」


「まあ、それだけではありませんわ。だけど、アカデミーで()()()()()()()()()()()()、取り引きできる方となると、イスマエル殿下以外にいらっしゃらなかったもので。」


「お前なぁ…」

 俺は呆れながらも、アリアナが本気でイスマエルの事を好きになったのではないとわかり、ホッとした。


 クロードも険しい表情ながらも、先程の鋭い眼差しは消えていた。


 だが、イスマエルはアリアナの事は気に入っているはずだ。昨日の様子だと、アリアナに少なからず好意を抱いている。

 わかっていないのは、アリアナだけだ。

 さて、これからどう対処するべきか。目の前の二人を見ながら、頭を抱えたのであった。


 




後書き

お読みいただき、ありがとうございました。

ブックマーク、評価、感想、お待ちしております。

【番外編】なかなか終わりません。番外編が長くなり、反省していますが、お付き合い頂ければ、幸いです。

昨日も今日もなかなかまとまらず、で、苦しんでおりましたが、皆さまが読んでくださる事を励みに、なんとか投稿できました。来週は忙しくなりそうなので、週末に頑張りたいと思います。

明日もエリック編を投稿予定です。

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