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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】兄とアリアナとクロード1(エリック視点)

ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます。

今日は投稿がいつもより遅くなり、すみません。

なかなか上手くまとまらず、何度も書き直していたら、この時間になりました。

番外編、続きます。今回は兄視点です。

クロードとイスマエルが遭遇した時期に遡ります。



 ここは魔法師団の副団長の執務室だ。


「ファーガソン副団長、昨日の報告書です。」

 そう言って、部下が書類を持って来た。

 俺はその報告書を眺める。


 そこには、昨日、妹アリアナに付いた護衛からの報告書と、魔法師団からの誘拐未遂事件の報告書があった。


 昨日の街での事件を思い起こす。


 最近、人攫いが出ると警戒していた。

 王都担当の騎士団だけでは、対応が難しいと、魔法師団にも協力要請が来た。

 我々も数人でグループを組み、巡回をすることになる。


 私の妹のアリアナも、人攫いと聞いて憤慨し、手が空いている時には巡回に加わった。

 正式に魔法師団に所属しているわけでは無いが、役職はアリアナを守るだろうと、少将としての地位を用意した。

 彼女の魔法力は大変強い。遠見の魔法や拘束魔法で次々と人攫い達を捕まえていく。 

 団員達には、俺の遠縁だと伝えているが、本人の実力で皆の信頼を早々に得ていた。


 そんな中、昨日の事件だ。

 たまたま居合わせたらしい、アリアナとイスマエル皇太子。

 クロードがアリアナがいると現場に向かった時は、まさかと思ったが、本当にいたので驚いた。


 魔法師団の報告書によると、団員が着いた時点で、賊は拘束魔法で捕らえられていたそうだ。

 間違いなく、アリアナが魔法を使ったのだろう。

 問題は、そこにイスマエル皇太子がいたという事だ。

 彼にアリアナの能力がバレたかもしれない。


 イスマエル皇太子はクロードを挑発していた。

 彼がアリアナの事を気に入っていると、明らかにわかる言動だった。

 彼はアリアナの魔法力を知って、近付いているのか?


 アリアナが、俺かクロード以外に親しく接するなど、今までなかった。クリストファーでさえ、一線を画し、親しく接する事はなかったのだ。

 目の前で、アリアナとイスマエルの親しげな様子を見たクロードがキレかかった。


 俺が慌てて抑えたが、一歩間違えば、クロードはイスマエルを倒して、アリアナを攫ってしまっただろう。


 アリアナとイスマエル皇太子が去った後のクロードは、荒れて大変だったのだ。

 なんとか宥めて連れて帰ったが、あの調子だと、今日もう一度昨日の件を蒸し返すだろう。


 俺はため息を一つ吐く。


 もう一件の報告書に目を通す。

 そこには昨日のアリアナの行動が書いてあった。


 イスマエル皇太子とサイード国の大使館へ出向いた事、そこから出てきたら、二人で街中を手を繋いで歩いていた事。孤児院に足を運んだ事が、詳しく書いてあった。


 サイード国の大使館で一体何をしていたのか?

 大使館内は流石に護衛が入れなかった。

 防御魔法がかかっており、外からの魔法も効かない。


 昨日の二人の様子が目に浮かぶ。

 とても似合いのカップルであった。

 アリアナはイスマエルを、信頼している様である。

 今まで、男に信頼を寄せる様な素振りは見せた事が無かったにも関わらずだ。


 二人はいつから付き合っているのか?

 イスマエルの名は、今までの報告書には、上がっていなかったが。


 アリアナは俺の大事な妹だ。

 幼い頃から大事に守って来た。

 小さな頃は、俺の後をよちよちと付いて来たんだっけ。ニコニコ笑うアリアナは天使だった。

 親父は俺には厳しかった。母は親父には逆らえない。

 だが、アリアナだけは違った。親父が悪いと思うと、果敢に向かっていく。俺が言い返せない事でも、俺の代わりに反論していた。親父も一人娘のアリアナには弱い。


 俺はアリアナが笑ってくれただけで、癒された。

 王宮へ行き、クロードの勉強相手に選ばれた時も、妹は一緒だった。いつでも側にいる、そういう存在だった。


 そんなアリアナが8歳の時にクリストファーの婚約者に決まってしまう。幼い妹には抗う術はなかった。


 勉強も一層熱心に取り組むようになり、時々大人びた事を話す。魔法力も高くなり、魔法の使い方を覚えるため、俺とクロードと共に学ぶ。


 その頃からか。

 アリアナが時々遠い目をしていたのは。


 俺には心許しているが、他の者とは一線を画す。

 表面上はニコニコしてとても良い子であったが、俺はアリアナの事を心配していた。


「何か心配事があるなら、俺に話してみろ。」

 と、尋ねても、

「何もない。」としか、答えない。

 

 幼いながらに婚約者がいる事が重くのし掛かっているのかと思う。その頃の俺には、婚約を潰す事は難しかったが、せめて、アリアナを側で一生守っていこうと誓ったのだった。


 アリアナの事を気にしていたのは、クロードも同じだった。第一王子の彼は、アリアナの事が気に入っていた。アリアナがクリストファーの婚約者に決まっても彼は諦めなかった。


 機会を作ってはアリアナと一緒に過ごし、独占欲を隠そうともしなかった。


「エリック、協力しろよ。私がアリアナを幸せにする。」

 そう言って、俺に協力を求めた。


 確かに、クロードはアリアナを大事に思ってくれている。身分的にも、優れた能力においても、これ以上の相手はないと思う。


 反対にクリストファーは、王子の身分に甘えている。能力は無く、性格も悪い。

 クリストファーとの婚約は絶対潰してやる、と俺は思っている。そう、今なら不可能ではない。


 しかし、アリアナはクロードをどう思っているのかは、まだわからない。

 アリアナはクリストファーの婚約者である事を気にしてか、クロードにも一線を画す。クロードはそれが気に入らなく、アリアナにも厳しい視線をおくる。アリアナは怖いと言って避ける。悪循環だ。


 クロードの気持ちは側にいれば、よくわかる。

 わかっていないのは、アリアナぐらいだ。


 兄としては複雑だ。

 本音を言えば、ずっと側にいて欲しい。

 妹にこんな事を言う事は間違っているのだと思うが、俺の天使は俺の側で笑っていて欲しい。

 結婚などせずとも、俺がずっと面倒を見てやる。今でもそう思っている。


 だが、クロードは俺の親友だ。

 彼なら任せられる。アリアナも幼い頃から慣れている。そう思っている。


 ただ、他にアリアナを任せられると思った人物が現れれば、俺はアリアナを応援すると決めている。


 俺はアリアナが幸せで笑って過ごす事が出来れば良い。


 アリアナは幼い頃からクリストファーの婚約者だったせいか、色恋沙汰に疎い。


 そのくせに、何事も一生懸命に取り組む事や、生来のお人好しで、人を惹きつけている。わかっていないのは、アリアナぐらいだ。。あれは天然の人たらしだ。


 本人はただの親切心でも、相手が男性になると愛情だと勘違いされる事が多々ある。

 (ことごと)く、クロードと二人で潰して来たが、それもそろそろ限界か。


 前回はレオンハルトで、今回はイスマエルか…

 どちらも厄介な人物だ。


 まだ、アリアナはレオンハルトの事を、恋愛対象と思っていない事がわかる。

 しかし、昨日のイスマエルに対しては、親愛の情が見られた。これが愛情なのか友情なのかは、わからないが。


 いずれにしても、厄介な事に変わりはない。


「全く…アリアナは何を考えているのか。」

 そう、独り呟いた。


 そこへノックの音と共に、クロードが入って来た。

 慌てて報告書を机の引き出しに入れる。


「クロード、お前、いくら王子でも部屋に入るのは返事があってからにしろよな。」


「お前のところだからいいだろう。それより、今、机の引き出しに入れた書類を見せてくれ。」


「これは公爵家の物だから、お前には関係ない。」


「アリアナの事だろう?私にも関係がある。」

 そう言って、クロードは手を出す。


「全く。アリアナの事になると見境ないんだな。だが、これは見せられない。こっちはいいが。」


 俺はそう言いながら、魔法師団の報告書の方を渡した。

 クロードはその書類をパラパラめくり、突き返して来た。

「こちらではない。」


「だから、もう一つはまだ見せられない。アリアナに確認してからだ。」


「その前に見せろよ。」

 クロードは俺の手から奪い取った。


「あーあ、お前、見ても落ち込むなよ。」

 クロードは無言でアリアナの護衛からの報告書を読む。

 周囲に冷気が漂ってくる。


「どういうことだ?」

 クロードは怒りを含んだ声だ。


「だから見せたくなかったんだ。」


「あいつとアリアナはどんな関係なんだ?」


「だから、確認して見せるって言っただろう?アリアナは何か考えがあってだと思うぞ。あいつは考える事が斜め上過ぎるから。だから、怒りのオーラを引っ込めろ!」


「どんな考えだ?」


「本人に聞かないとわからないが、クリストファーがいるのに、わざわざ誤解される様な事をする妹じゃない。」


 クリストファーの名前を思わず言ってしまい、さらにクロードの表情が厳しくなる。


「アリアナに問いただす。今から呼べ。」


「昨日の今日だ。呼び出しても来ないぞ。あいつはああ見えて、意外と頑固だ。」


「じゃあアカデミーに行くか。」


「お前が行くのはまずいだろう。アリアナはまだクリストファーの婚約者の立場だ。魔法師団も正式な所属ではない。」


 そう、アリアナが魔法力が強くなって来た時に、アリアナは陛下に可愛くお願いして、魔法師団には入らなくていいと約束と証書を取り付けている。

 我が妹ながら、先見の明がある。

 アリアナが魔法師団に協力しているのは、人攫いが許せないという正義感だけだった。


 なんとかクロードを思い止まらせないといけない。

 クロードがアリアナの所に押しかけた事が漏れれば、第2王子派に付け入る隙を与えてしまう。


 クロードは険しい顔をしている。

 昨日、イスマエルからアリアナを取られた事が応えているのだろう。

 普段何事にも冷静沈着にこなしている男とは、思えない。


「では、どうすれば、アリアナに会えるのか?」


「親父を使うから、大人しく待ってろ。」

 親父と同じ様なやり取りをしなければならない事は、想像しただけで、ゲンナリする。


「公爵が呼び出せば、アリアナは来るか?」


「多分な。俺が呼び出しても来ないから、親父に頼む。だから夜まで時間をくれ。」


「仕方がない。」


「時間がわかったら、連絡する。お前は自分の仕事をしてこい。」


「ああ。」


 俺は何とかクロードを宥める事ができた事にホッとする。

 アリアナに振り回されているのは、俺も一緒か。

 今日中に捕まればいいが。


 そんな事を思いながら、親父へ連絡を入れたのであった。




お読みいただき、ありがとうございました。

最近、プライベートが忙しくなり、話が上手くまとまらない!と焦っています。

皆様のブックマーク、評価、感想を励みに、毎日頑張っています。怠け者の私は一度休むと続ける事が難しそうなで。読んでくださる方がいると思うと、意欲が湧きます。

これからも、お付き合い頂けますと、嬉しいです。

明日はエリック視点の続きを投稿予定です。

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